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146.真っ赤に薬房(1)


昨日の大浴場でミンリンさんと約束した時間に、宮城(きゅうじょう)の中を司空府(しくうふ)に向かった。


大浴場では今朝(けさ)と昨日と、続けてクゥアイに背中を()()()もらって、大いに()れてしまった。ぷにっというクゥアイの感触(かんしょく)をつい背中に再現(さいげん)してしまう。


メイファンやシーシのように、あけっぴろげに来られるのも照れてしまうけど、クゥアイやミンリンさんのように、向こうから照れられるのも、気恥(きは)ずかしい。


と、少し前を歩くシアユンさんの細い腰が目に入る。


――シアユンさんは、別格(べっかく)です。


あれだけ全身()()にされると、()くというか心配になってしまう。


普段の氷の女王が……、と思うと可愛らしくもあるんだけど。


シアユンさんが立ち止まって、()り向いた。


――大浴場(ハーレム風呂)のこと思い出してたのがバレたかな?


と、思って(あせ)ったけど、シアユンさんはいつも通り冷静で優しく口を開いた。


「リンシン殿の薬房(やくぼう)が今日から開いているはずですが、お()()りになりますか?」


「そうか! そうでしたね。行ってみましょう」


司空府(しくうふ)造作(ぞうさく)担当のシーシと並ぶ、医療(いりょう)担当の責任者に抜擢(ばってき)した薬師(くすし)のリンシンさんには『薬房』を開いてもらうことで話を進めていた。


簡単な治療(ちりょう)も出来るようだけどお医者さんではないし、俺の感覚では『病院』と言うとちょっと違うような気がしたし、『薬局』でもないし、『薬房(やくぼう)』という名前を付けてもらった。


(よう)は治療を受けたい人の方が来れる施設(しせつ)だ。


2人しかいない薬師(くすし)(ほう)()け回るのでは効率(こうりつ)が悪いし、()れも出かねない。


突発的(とっぱつてき)重傷者(じゅうしょうしゃ)重病人(じゅうびょうにん)には往診(おうしん)してもらうとしても、まずは自分から行ける場所をつくった。


ミンリンさんに用意してもらった司空府(しくうふ)の1階を改修(かいしゅう)したスペースは、(すで)に多くの人で(にぎ)わっていた。


病院的な施設に『(にぎ)わい』っていうのもおかしな表現だけど、(みんな)()てもらえることが(うれ)しいようだ。安心した表情を浮かべている人もいる。


俺が召喚されてからでも25日、人獣(じんじゅう)が現われてから35日。極限状態(きょくげんじょうたい)での生活が長い間続いている。みんな、身体(からだ)のどこかしらに不調(ふちょう)(かか)えていてもおかしくない。


リンシンさんの(むすめ)薬師(くすし)のホンファも薬房(やくぼう)の中を駆け回っている。


薬の知識(ちしき)()われて手伝ってるユエは、熱心に患者さんの話を聞いている。


……っていうか、ユエ、仕上(しあ)がり過ぎでしょ。


ユーフォンさんが「(みが)けば光る」と言ったユエは、髪色と同じ水色をしたチャイナ風味のロングドレスを自然に着こなしていて、すっかり大人な雰囲気だ。


スリットから見える(あし)も美しいし、作業しやすようにお団子にまとめた髪から()れる横髪が色っぽい。


出会った頃とは別人のような淑女(しゅくじょ)になっている。


今もユーフォンさんの部屋で一緒に生活してるユエが、この先もまだまだ綺麗(きれい)になっていくような気がして、ちょっと(ふる)えた。


「わざわざ、お(はこ)びいただいてありがとうございます」


と、リンシンさんが挨拶(あいさつ)に来てくれた。


相変(あいか)わらず白いロングドレスのスリットから見える脚が(なま)めかしい。聞けば37歳で俺の母親よりだいぶ若かったけど、それにしても、そんな歳には見えない。


奥の執務室(しつむしつ)で待つように言われて、通された部屋は立派なつくりで、(たな)にはたくさんの薬が並んでいた。


ユエの持ってた薬をスイランさんに買い上げてもらったんだけど、親父(おやじ)さんにどれだけ持たされてたのかと。それで助かってるけど、苦労が(しの)ばれるなぁ。


今は薬房(やくぼう)での仕事に()り切ってくれてるようだし、このまま元気に頑張ってくれるといいな。


シアユンさんと一緒に腰を()ろして待っていると、診療(しんりょう)をひと段落させたリンシンさんが現われた。


……ん?


さっきまで、そんな胸の谷間が、ぽよーんって出てるような服でしたっけ?


ま、まさか……、お色気大作戦の()()()が、こんなところにまで……?



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