142.歓迎されない生存者(1)
報せを受けて、俺は急いで望楼から地下牢に向かった。
途中で護衛のイーリンさんとメイユイも合流する。
槍兵の外征は2日目も大成功で、南側の備蓄庫に到達。クゥアイは出来ないことをやると言う娘ではないことを、また証明した。
備蓄庫から大量の木材を運び出すことに成功。
ただ、その際、備蓄庫の地下にある牢から、衰弱した囚人が救出されたというのだ。
帰ってきた外征隊が騒がしかったのは望楼から見えてたけど、そこまでは見えてなかった。
救出された囚人は3人。
今は宮城の地下牢で別々に繋いでいるという。
――俺の召喚と同時に第2城壁が陥落してから、24日。その間の食事は? 水は?
状況が呑み込めず、俺はとにかく地下牢に急いだ。
一番身なりが良く、頭目と見られるという囚人の地下牢に着くと、そこには……。
下着姿で鎖を巻かれた女子!
しかも、褐色!
ここにきての、褐色巨乳!
……ダ、ダークエルフさんとかですか?
耳は尖ってない。
シアユンさんが冷ややかな声を放った。
「北の蛮族でございます」
えっ? これが……?
銀髪に褐色肌の美人さんですけど。
シアユンさんも、イーリンさんもメイユイも、あからさまな嫌悪感を見せている。
衰弱してる褐色巨乳女子は、虚な瞳でこっちを見ている。
「な、なんで下着……?」
と、俺が聞くと、イーリンさんが警戒した声で応えた。
「凶悪な者どもです。何を武器にするか分かりません」
んー。
脱がせたのか。
そこに、ツイファさんが姿を見せた。
「クゥアイが『マレビト様なら救出をお命じになるはず!』と言って、連れ帰ったようです」
「そうだね……」
と、衰弱してる褐色巨乳女子と、嫌悪感に満ちたシアユンさんたちを見比べた。
「救けよう」
シアユンさんは少し眉を寄せたけど「はっ」と、応えてくれた。
太保として正式に宮城衛士団を部下にしたシアユンさんが、テキパキと衛士のメイユイに指示を出していく。
「ホンファを呼んで。それからシュエンも。あと、服を着せてあげて」
と、俺からもお願いして、一旦、地下牢から離れた。
救出された囚人の残りの2人も褐色女子――、つまり、北の蛮族だった。
駆け付けてくれたホンファには治療を、シュエンには食事の準備をお願いした。
2人とも少し戸惑ってたけど、素直に従ってくれた。
望楼に戻ると、既に日は落ち戦闘が始まっていた。
今晩はクゥアイも城壁上で闘っている。外征を終えてそのまま前線に出てるはずなのに、動きにキレがある。
昨日のオフの効果だと思いたい。お祖母さんと楽しく過ごせたかな?
「500年、戦い続けておりますから」
と、シアユンさんは言った。
北の蛮族は約500年前の大侵攻で、ダーシャン王国を滅亡寸前にまで追い詰めた。2代マレビトを召喚することで、かろうじて退けたと聞いている。
このジーウォ城も北の蛮族への備えに建てられている。
シアユンさんが淡々と語ってくれる、戦いの歴史を黙って聞く。
「理由が分からないのです。ただ、殺戮しに来るとしか思えないのです」
と、最後にシアユンさんが言った。
でもなぁ……。皆んなが皆んな仲良く出来るなんて思わないけど、あんなに弱った女子を放っておけないよ……。
この異世界の君主としては甘いのかもしれないけど、現代日本人の高校生としての感覚の方が優ってしまう。
と、そこにホンファとシュエンが報告に姿を見せた……。
って、ビキニ。ホンファは上、ビキニ。下はズボンだけど、上はビキニ。
シュエンはビキニでこそないけど、なんか胸の谷間が、どーんって出てるし。
……お、お色気大作戦って、続行中なんですか?




