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141. 建国最初の大浴場(3)


好事魔多(こうじまおお)し、とも言う。


今日は上手(うま)くいったけど、いきなり距離(きょり)のある備蓄庫(びちくこ)まで外征(がいせい)して大丈夫か?


――ぷにっ(下)。


それに、備蓄庫は人獣(じんじゅう)の多い南側にある。


北の蛮族(ばんぞく)(そな)える城として、おかしなことではないけど、今はハードルが高い。


――ぷにっ(上)。


「ダメ、ですか……?」


と、クゥアイが少しトーンを落として聞いてきた。


女子たちの視線も、俺に集まる。


「いや。行こう!」


「はいっ!」


と、クゥアイは(うれ)しそうに声を上げた。


「「「おぉーっ」」」


――ぷぷぷにっ(上)。


今は士気(しき)(いきお)いも大切だ。水を()すのは良くない。


けど、(くぎ)()しておく。


「だけど、無理は禁物(きんもつ)だ。少しでも(あぶ)ないと思ったら、すぐに()(かえ)すんだよ」


「はいっ! 分かりました!」


――ぷにっ(下)。


実は昨夜(ゆうべ)、少しだけクゥアイを(しか)った。


最初のオフのハズなのに、深夜(しんや)にチラチラと戦闘を()に出て来ていたからだ。


シアユンさんに(たの)んで、望楼(ぼうろう)()んだ。


「今、クゥアイに(たお)れられたり、限界が来て動きが悪くなったりすると、(みんな)(こま)るんだ」


「はい……」


「気持ちはとってもよく分かる。けど、もう一つの闘いだと思って、今晩は体を休めてほしい」


「もう一つの闘い……」


「そう。身体(からだ)を休めることも闘いだと思って、(つか)れを()いてほしい」


「よく分かりました!」


「そう、よかっ……」


「あの! 質問です。質問というか、相談です」


「うん。なに?」


「私、農家(のうか)で。毎日働いてて、休んだことがないんです」


……うーん、機械化(きかいか)されてない農業(のうぎょう)め。


「休みって、何してたらいいんですか?」


それから、シアユンさんも交えて『休む』とは何かについて、まあまあ話し合った。


疲れが出て眠くなってるなら、うたた寝するのもいいけど、そうでないなら生活リズムを(くず)すだけだし……。


そもそもが昼夜逆転(ちゅうやぎゃくてん)の生活なので、リズムが崩れると(もど)すのが意外と大変なんだよな。


あーでもない、こーでもないと話していると、突然、クゥアイが手を打った。


「私、分かっちゃいました!」


「はい、どうぞ。クゥアイさん」


「今、とても楽しいです! お(しゃべ)りしてるのが、すごく楽しいです! なんか、気持ちが休まってるなぁ、って感じがします!」


クゥアイは「最近あまりお喋り出来てなかったお祖母(ばあ)さんとお喋りしますっ!」と言って、帰って行った。


リフレッシュ方法は人それぞれ。お祖母さんも喜んでくれると思うよ。


と、(たの)もしい背中を見送った。


――ぷにっ。


ひとしきり外征(がいせい)の話を()えたクゥアイは、背中から離れ左腕に……、抱き着いた。


やっぱ、やりますかぁ……。


昨日、スイランさんがやってるの見て、目を(かがや)かせてましたもんねぇ。


泡だらけの全身を上に下に(すべ)らせ始める。


ほっぺたも腕に当たるし、太ももにも指先が当たる。手の甲はあのキレイなお(なか)(すべ)る。


さすがに外征の興奮(こうふん)より()れの方が上回ったのか、クゥアイも顔を赤くして無口(むくち)になる。


(かこ)んでる女子たちも、クゥアイにつられたのか、(みんな)、少し(ほほ)が赤くなる。


次第(しだい)に俺たちから離れて洗い場に広がっていく。


いや、なんか、その離れ方……。『あとは若いお二人で』みたいな……。


すごく気恥(きは)ずかしくさせられるんですけど……。


――きゅむっ。


えっ? と思わずクゥアイの顔を見た。


――きゅむきゅむっ。


ふ……、太ももに手の平が(はさ)まれてる。挟んで、きゅむきゅむしてる。


腕は抱き着かれたままで、がっちりホールドされてる。


顔を赤くしたクゥアイが、下から見上げて上目遣(うわめづか)いに口を開いた。


「お、おイヤですか……?」


「イ……、イヤではないです……」


と、だけ(こた)えるのが精一杯(せいいっぱい)で、目を()らしてしまった。


洗い場の(みんな)は、いつも通りキャッキャしてる。


たぶん、俺の手の平までは見えてないはず……。


はさまれてて(かく)れてるし……。


――きゅむっ。きゅむっ。


な、()れてきてる……。


要領(ようりょう)つかむの早いですね。さすが、クゥアイさん。


――きゅむっ。


こういう初心(うぶ)()に突然大胆(だいたん)な行動に出られて、どうしていいか分からなくなるくらいには、俺も初心(うぶ)です。


て……、手の平で女子の肌の感触(かんしょく)を知るのは初めてで、……やっぱ(ちが)うですよ。


こう……、(さわ)ってるなぁ、って感じが……。


と、そこにミンリンさんが来て、俺の前で両膝(りょうひざ)()いて、胸を()らした。


たぷんっ。


い、今はやめてほしい……。


――きゅむっ。


「マレビト様……。あ、新しい設計(せっけい)を……、考えました……」


「そ……、そうですか……」


と、照れて顔を赤くした3人がコソコソヒソヒソやってるのを、シーシがニタニタ見てる。


もう! ツルペタ姉さんは、こういうの見逃(みのが)してくれないなっ!


「あ、明日の昼にでも、お時間あれば……、司空府(しくうふ)にお()りいただけませんでしょうか……」


「明日の、ひ、昼ですね……?」


「はい……」


とまあ、建国(けんこく)して最初の大浴場(ハーレム風呂)は、いつにも()して感情の起伏(きふく)が大きかった……。


――きゅむっ。


たぷんっ。


う、うん……。みんな、気持ちが高揚(こうよう)してるんですよね……。


――きゅきゅむっむっ。


まだ、やります?



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