表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/262

123.呪力の発現(3)


「シーシの……?」


「はい」


と、シアユンさんは優しく微笑(ほほえ)んだ。


「私たちは(みな)、シーシ殿の言葉に深く納得(なっとく)しております」


「……純潔(じゅんけつ)純情(じゅんじょう)失恋(しつれん)少年(しょうねん)


「そちらではございません」


あ……、すみません。インパクト強すぎて。純潔(どうてい)純情(うぶ)失恋(フラれた)少年(ガキ)


祖霊(それい)がマレビト様をマレビトに選んでお(つか)わしになったのには意味がある。……という言葉です」


「私も、そう思っております」


と、ツイファさんが言った。


「私も思ってます! だってスゴイじゃん!」


という、メイユイを(みんな)が見た。


「だって、マレビト様が召喚されて、まだ20日(はつか)そこそこでしょ? 20日(はつか)前には、夢にも思わなかったよ、こんなの! 剣士以外の人が剣士と一緒に闘ってるでしょ? 平民(へいみん)に家を建ててくれたし、ご飯も美味(おい)しくなった! 服もキレイなの着てる! すごい武器(ぶき)も作ってくれた! なにより、なんか人獣(じんじゅう)に勝てそうな雰囲気になってきてるのがスゴイよね!」


「私も同じ思いでおります」


と、イーリンさんが言った。


「剣士は(ひと)りで闘います。それが、人の命を(うば)儀礼(ぎれい)であると教わって(まい)りました。ですが、(みな)で闘う。(みな)で力を合わせる。この楽しさ、この強さをマレビト様に教えていただきました」


「私はね……」


と、ユエが小さな声で言った。


「私のおっぱい見てドギマギしてるマレビト様を見てるの楽しい」


おっと。なにぶっ込んでるんです?


「お兄ちゃんにも馬鹿(ばか)にされてて、邪魔(じゃま)だなぁってずっと思ってた自分のおっぱいが、好きになったよ!」


ユーフォンさんが、()り向いてユエの頭を()でた。


「ユエは(えら)いね」


「そう?」


「自分の好きなところを見付(みつ)けられる子は偉いんだよ?」


「そっか……。ふふっ」


「またひとつ、自分の好きになれるところを、マレビト様から教えてもらったね」


「ほんとだぁ!」


そ、その論理(ろんり)展開(てんかい)は少し複雑(ふくざつ)な気持ちになりますが……。好きになれたんなら、いいことなんですよね……?


「マレビト様」


と、ユーフォンさんが俺に()(なお)った。


(こい)はタイミングです! マレビト様の『今じゃない』って気持ちもよく分かります! 私にも、そんな時がありました。でも、そんなタイミングのマレビト様を祖霊(それい)が選ばれたのには、きっと意味があるんだって思うんです」


意味……、か。


「確かに今のマレビト様には呪力(じゅりょく)発現(はつげん)することは出来ないかもしれません。でも、出来ることは何でもされようする。シキタリだからって(あきら)めたりしません。私たちも諦めずに出来ることを頑張りたいんです」


この()たちが俺に、里佳(りか)のことを忘れさせようとしてるって考えたら、なんだか迷惑(めいわく)のようにも感じるタイミングだ。


だけど、フラれた傷を(いや)そうとしてくれてるって考えたら、なんだかとても胸に(あたた)かいものを感じてしまう。


「それが全部じゃないかもしれないけど、祖霊(それい)が私たちにマレビト様を()()わせくださったのは、私たちに(あきら)めないことを教えるためだったんじゃないかな? って思うんです」


ユーフォンさんが、みんなが、よく分からない呪力(チート)なんかじゃなくて、俺の行動、俺の人格(じんかく)を認めてくれて、俺のことを大切に思ってくれてる。


だから、大切な人が傷付(きずつ)いてるから……、(いや)してあげたいんだって気持ちが伝わってくる。


シアユンさんが正座(せいざ)している(ひざ)の前に、静かに手を()いた。


「かつて、(みな)の前で申し上げました(おも)いに、今も変わりはありません。いえ、むしろ想いはより強くなっております」


……想い?


「我ら純潔(じゅんけつ)乙女(おとめ)一同(いちどう)。どこまでもマレビト様のお気持ちに()()い、マレビト様の()されることを心の底からお(ささ)えいたします。どうか、末永(すえなが)くお(つか)えさせてくださいませ」


と、シアユンさんは俺に向かって深く頭を下げた。(みんな)も同じように続いた。


……。


もう!


(みんな)、ビキニ姿だし!


シアユンさん、そんなに深く頭下げたら、お(しり)見えてるし!


プリッとキレイなお尻ですね!


まんまと【お色気大作戦】に、やられておりますですよ?


……いつか、純潔(じゅんけつ)乙女(おとめ)の誰かと、()()()()()()になるかもしれません。


耳にはメイファンとミンユーが「子種(こだね)がほしいです」って(ささや)いてくれた声も(よみがえ)ります。


でも今は、(たよ)りない俺ですけど、呪力(じゅりょく)にアテのない俺ですけど、出来る限りの知力(ちりょく)()(しぼ)って、(みんな)と一緒に人獣(じんじゅう)()()かわせてください。


それで……、いつか、そういうことになるとしても。


いつか、里佳(りか)への(おも)いに整理(せいり)がついて、(みな)さんと(むす)ばれるとしても。


その時は、平和を(むか)えてからがいいな。


平和な時に平和な呪力(じゅりょく)発現(はつげん)するのがいいな。


うん。


「ありがとうございます」


と、俺も深々(ふかぶか)と頭を下げた。


「ふつつかなマレビトですが、どうか、よろしくお願いいたします」


そして、(みな)で頭を上げて、ププーッて笑い合った。


それから、面積(めんせき)の小さな橙色(だいだいいろ)のビキニ姿のユーフォンさんが立ち上がり、(たか)らかに宣言(せんげん)した。


「それでは【お色気大作戦】、本格(ほんかく)始動(しどう)です!」


ええっ?


そうなる?


そうなるのかー。


ま、頑張(がんば)ってるんなら、応援(おうえん)するしかないよね。


ドギマギしながら、応援するよ。


……。


……でも、チラ見はやめよう。


出来るだけ。


出来るかな?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ