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11.最終城壁での戦闘(1)


()(しず)む前にシアユンさんが(むか)えに来てくれて、宮城(きゅうじょう)()ん中に建つ望楼(ぼうろう)に案内してくれた。城内が見渡せる。


お風呂から上がってベッドに横になったのは、俺の体感時間(たいかんじかん)である日本時間で、たぶん14時を過ぎた頃。やっぱり寝付けるもんじゃない。


その上、ひとりになって目を(つむ)ると、浮かんでくるのは――、涙目にさせた里佳の姿、ごめんなさいという声、最初に遭遇(そうぐう)した虎の人獣(じんじゅう)獰猛(どうもう)な顔、大きな(きば)、鋭い(つめ)(うな)り声、眠るリーファ姫の下着姿の豊かな胸、スレンダーなシアユンさんの一糸まとわぬ姿……。


代わる代わるに脳裏(のうり)に浮かんでは、目を見開(みひら)いてしまう。ほんの短い間に刺激(しげき)の強い場面に遭遇(そうぐう)し過ぎだ。


そして、(ひと)りになって静かな場所で思い返すと、虎の人獣がかなり怖い。


女性の全裸(ぜんら)肉眼(にくがん)で見たのは初めて。下着姿も。しかも、胸の大きさが違いすぎて、別々に新しい体験(たいけん)をしたみたいになってる。


それでも、里佳(りか)のことが思い浮かぶと、申し訳なくて、恥ずかしくて、消えたくなる。


と、悶々(もんもん)と過ごしたけど、俺の体感時間で夜12時半頃にあたる、異世界の時間で17時頃には、身体(からだ)神経(しんけい)も疲れ果て、()けるように眠りに落ちてた。


望楼からは最後に残った、最終城壁(さいしゅうじょうへき)が良く見渡せる。というか、最終城壁の高さが低い。平家(ひらや)建ての家より、ちょっと高いくらい。


結局、1時間くらいしか寝れてないので、徹夜(てつや)明けとほぼ変わらない状態で、少しフワフワして、夕陽(ゆうひ)が目に(まぶ)しい。


目線を上げると、第3城壁、第2城壁の方が高くて視界(しかい)(さえぎ)ってる。一番高い第3城壁で、ちょっとした雑居(ざっきょ)ビルくらいの高さかな? タワーマンションよりは断然(だんぜん)低いけど、俺のいる望楼よりは高い。


城壁の高さが外に行くほど高くなってる理由が、いまいち分からなくて、(そば)に付いてくれてるシアユンさんに(たず)ねた。


「元々、ジーウォ城は北の蛮族(ばんぞく)侵攻(しんこう)(そな)えるために造られた、小さな(とりで)でした。北の蛮族は騎馬(きば)民族(みんぞく)で、それに対抗(たいこう)する馬防柵(ばぼうさく)を強化したのが最終城壁です。その後、城主(じょうしゅ)が王族の時代や貴族の時代に追加されて拡張(かくちょう)したのが今の(かま)えであると、お聞きしております」


「つまり、王族や貴族が見栄(みえ)()った結果ってことですか?」


「私からは何とも申し上げられませんが、(おおむ)ねそのような経緯(けいい)かと……」


俺は戦国武将(せんごくぶしょう)でもないし、城壁の高さが守りの(かた)さにどこまで影響(えいきょう)してるかなんて分からないけど、本陣(ほんじん)の望楼からの見晴(みは)らしが悪いっていうのはどうなんだろう?


とか考えてると、城壁の上に昨晩(ゆうべ)も目にした(よろい)のマッチョたちが登り始めた。


「あれが『剣士団』ですか?」


左様(さよう)でございます」


「少なくないですか……?」


「……既に、人獣(じんじゅう)たちとの戦闘で320名ほどになっております」


最初1,000人で守ってたって聞いてたから……、もう、680人も亡くなってるのか!


か、かなり絶望的(ぜつぼうてき)なんじゃ……。


最終城壁上に等間隔(とうかんかく)()かれてた篝火(かがりび)点火(てんか)されて、薄暗(うすぐら)くなってきた城を照らし始めた。


そうか。夜間の戦闘で照明(しょうめい)が問題になるのか。あれ(たお)されたら面倒(めんどう)だろうな。火事も(こわ)いし。


やがて、完全に陽が落ちると(けもの)(うな)り声が低く(ひび)き始めた。城壁上の剣士たちが剣を抜き、緊張感(きんちょうかん)が高まっていく。


いよいよ、戦闘が始まる――。


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