表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

107/262

107.温もりの大浴場(1)


「ボクに話ってなに?」


と、シーシが耳元で(ささや)いた。


――くにっ(右)。


今朝(けさ)大浴場(ハーレム風呂)で背中を()()()もらうのにシーシを、こっそり指名(しめい)した。(みんな)には指名したことがバレないように、ツイファさんが段取(だんど)りを付けてくれた。


――くにっ(左)。


シーシの(やわ)らかな肌が全身で密着(みっちゃく)して、(おど)るように小刻(こきざ)みに左右に(すべ)る。


あの後、(ぞく)遺体(いたい)を剣士さん達が(ひそ)かに運び出し、フェイロンさんとフーチャオさんも、リーファ姫の寝室を出た。


シアユンさんとツイファさんと3人になると、ぶるっと身震(みぶる)いが来た。


シアユンさんが(やさ)しげな微笑(ほほえ)みを浮かべて話しかけてくる。


「お気持ちはお(さっ)しするに(あま)りありますが、どうぞ、動揺(どうよう)(みな)にお伝えになりませんように」


確かにそうだ。


住民たちも(した)うリーファ姫を(ねら)った(ぞく)が、自分たちに(まぎ)れ込んでいたなんて知れたら、どんな(さわ)ぎになるか分からない。


ただ、俺も激しく動揺しているのは確かだ。


まず、命を(ねら)われて、刃物(はもの)を投げ付けられたのなんか初めてだ。日本にいれば、そんな経験しないまま生涯(しょうがい)を終える人の方が圧倒的(あっとうてき)に多い。


それから、ツイファさんと賊の殺し合いを、この目で見た。人間同士の殺し合いだ。


ただ、不思議とツイファさんのことを(こわ)いとは感じてない。


あの闘う姿を美しいと感じたし、なにより、カッコ良かった! (ちゅう)()暗殺者(あんさつしゃ)(むか)()つビキニ姿の美女だなんて、これ以上、男子の心をくすぐられることがあるだろうか!?


それに、あの優しいツイファさんが、俺たちの命を守ってくれた。それだけで充分だった。


けれど、人間の死体を見たのも初めてだ。(さいわ)いなことに、これまでお葬式(そうしき)にも出たことがなかったのが、いきなり賊の死体が3つも並んでいるのを見た。


そして、フェイロンさんをフッた幼馴染が、フーチャオさんの奥さんのミオンさんで、3人がそれなりに仲良くしてるって話も、結構(けっこう)、動揺した。


この先、会えるかどうかも分からない里佳(りか)のことを強く思い出して、これが、結構、(こた)えた。


トドメは朝陽(あさひ)で明るくなった寝室だった。


久しぶりに目にした(あざ)やかな青髪(あおがみ)のリーファ姫が、やっぱり里佳に()()()()だった。


召喚直後は里佳にフラれた直後でもあって、そのショックで誰を見ても里佳に見えるのか? と、思ったものだった。


けど、明るい部屋で眠り続けるリーファ姫の寝顔は、里佳そのものと言ってもいいくらい、よく似ていた。違うのは髪の毛の色くらいなものか。


綿(わた)(ひた)した水で、お口は(うるお)しているのですが……」


と、シアユンさんは(せつ)なそうな表情でリーファ姫を見た。


俺を召喚してから12日。リーファ姫の容貌(ようぼう)(おとろ)えは感じず、肌にはツヤさえ見られ、静かに眠っていた。


(おそ)らく私どもでは(はか)り知れぬ、呪力(じゅりょく)(はたら)き……、祖霊(それい)(まも)りがあるのでございましょう……」


ただ、俺は、リーファ姫が()()()()()()いること以上に、里佳にそっくりな顔立ちに激しく動揺していた――。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ