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怪獣

作者: きょうかちゃん

メリンボ総合病院の仮眠室でそっと目を覚ます医師のピコ、とても疲れた様子で目には大きなクマができている。窓の外では世界大戦での爆撃音と銃撃音そして人々の悲鳴が鳴り響いている。病院内でも医師や看護師の走る音、ストレッチャーの音が聞こえる。それを聞きたくないように耳を塞ぎ布団にくるまるピコ、しかしすぐに看護師のライアがピコのいる仮眠室に入って来た。


「先生、急患です。」


辛そうにベッドから体を起こしてピコをライアの方を向く


「またか、疲れているんだ。少し寝させてくれ、他の奴に頼んでくれよ」


「だめです。患者の状態から鑑みて治療が可能なのは先生だけです。お願いします。」


軽くため息をつくピコ


「わかったよ、やる」


ベッドから出ると白衣に着替え仮眠室を出るピコ。軽く顔を叩いて目を覚ます。手術室に向かいながらライアに患者の容態を聞く。


「えーと患者の容体は」


「年齢27歳男性兵士、戦闘中に右肩と背中に被弾、右肩の銃弾は貫通、背中に受けた銃弾ですが肺を貫通してあばら骨で止まっている状況で大変危険な状態です。」


「わかった。ありがとう」


手術室では多くの看護師と医師が手術の準備をしている。ピコが手術室に入ると手術室に軽い緊張感が走る。


「よしやるよ、みんなよろしく」


手術台の前に立つピコ、他の看護師と医師も手術の準備が終わり手術台につく、手術室ではより一層緊張感が高まる。ピコは手術を始めるピコは周りが見えないくらいに集中している。ピコは神業ともいえる手術技術どんどん手術を進めていく。


「メス、―――――早く!」


「はっはい」


ピコの手術技術と手術のスピードに助手の看護師と医師はついていくのがやっとである。あっという間に手術は終了した。ピコは安堵と疲れが顔に出ていた。


「あとよろしく」


ピコはかたずけを頼むと手術室を後にした。




メリンボ総合病院屋上で煙草を吸いながら景色を眺めるピコ、目の前に広がる街、建物の多くは戦争によって破壊されており、あちこちに火災による煙が立ち込めている。また上空では戦闘機が飛んで行った。ピコはその街を見てため息がこぼれる。




メリンボ総合病院病棟を歩くピコ、ピコは多くの患者に目をやるが多くの患者は戦争の死傷者でピコはまた、ため息がこぼれた。




一か月前にピコが手術した男性患者がベッドの上で休んでいる。新聞を読んでいてだいぶ回復したようである。男性患者のもとにピコが回診に訪れる。男性患者に笑顔で語り掛けるピコ


「経過はどうですか、だいぶ痛みも引いてきたとは思いますが」


男性患者はピコを見ると笑顔になった。


「先生、手術はどうもありがとうございました。」


ピコにも笑みがこぼれる


「いえいえ医師としての役割を果たしただけですよ」


「先生のおかげでこんなに元気になりましたよ。あんなに痛かった傷もだいぶ癒えました。後ちょっとで戦地に復帰できます」


ピコの顔が曇る


「ああっそれはよかった。うんまぁ元気になってくれ、うんじゃあまたくるよ」


ピコはたどたどしく病室を出ていく。




戦地では兵士が銃撃戦をしている。どんどん倒れていく兵士、蠅のたかっている兵士の遺体が多く落ちている




ピコが手術した男性患者が療養を終了して戦地に向かうため病院を後にしようとしていた。


「先生どうもお世話になりました。先生のおかげでまた戦地に行けます」


ピコは心配そうな表情で


「ああ頑張ってこい、だけどな、死ぬんじゃないぞ、いいか死ぬなよ、私はお前を戦地で戦わせるために治療したんじゃない、お前を生かすために治療したんだ」


ピコは男性患者を笑顔で見送った。




ピコは自室で男性患者からの手紙を読んでいた。


「先生、お元気ですか、私は今戦地の最前線で戦っています。先生のおかげで今日は十人も敵兵を殺すことができました。少しでも早く戦争に勝てるように頑張ります」


ピコは男性患者が元気であることはうれしかったがどうしても男性患者を救ったせいで十人の命を奪ってしまったのではないかと素直に喜べなかった。




メリンボ近海から巨大な怪獣が現れた。怪獣は様々の街を襲っていった戦争中だった世界各国は一時休戦して、世界連合軍を設立し協力して怪獣に対処していった。世界連合軍は怪獣を撃退することに成功した。世界各国は怪獣による被害が修復されるまで休戦することになった。世界各国は怪獣の被害を受けたものの死傷者数では戦争時に比べてかなり少なくなった。




メリンボ総合病院では戦争による死傷者がいなくなっても怪獣による死傷者の多くが運びこまれて病院は大忙しであった。




ライアが仮眠室で寝ているピコを呼びに来た。


「先生急患です」


「わかった今行く」


ピコはさっとベッドから出て白衣を着ると仮眠室を出て手術室に向かう。やる気に満ちている様子である。




手術室では医師と看護師が手術の準備をしている。ピコが手術室に入ると緊張感が走るが、シンプルに人の命を救いたいというやる気に満ち溢れた緊張感であった。手術はピコの神業ともいえる手術技術であっという間に手術は成功し颯爽と手術室を後にした。




メリンボ総合病院の屋上でコーヒーを飲みながら屋上から見えるメリンボの街を眺めるピコ、メリンボの街では復興に向けて人々が働いていた。大変な作業ではあるが人々には笑顔があった。ピコもそんな様子を見て笑顔になった。そんなときであった遠くに見えるメリンボの海上にはまた怪獣が現れた。巨大な怪獣が海を割くように歩き、メリンボの街を目指して歩いている。メリンボの街では人々が逃げまどっている。人々の避難が完了しないまま怪獣はメリンボの街に到達した。怪獣はメリンボの街を破壊し始めた。そのときであった。世界連合軍は怪獣に攻撃を始めた。




メリンボ総合病院屋上の柵から身を乗り出すような勢いでピコは世界連合軍と怪獣が戦う様子を見ていた。


「ああっすごい」




メリンボの街では怪獣との戦闘が激化していた。しかし今回も世界連合軍の活躍によって怪獣を倒すことができた。




怪獣との戦いは十年が過ぎた。テレビのニュースでは怪獣が出現するようになってから十年ということもあって十年間に出現した怪獣を整理して説明しているが結論としてわからないことが多すぎるとのことであった。




壁にはピコが働いていた病院での写真、ライアとの結婚写真、二人の子供と思われる赤ん坊のライの写真、そして研究所と思われる建物と研究員と思われる人々が移った写真があった。ピコはテレビを消した。


「あなたそろそろ時間よ」


十歳年を取ったライアが子供のライを抱えながらピコの方を見ている。ピコはライアの方を見る


「ああわかった。今行く」


ピコはそっと鞄を持ち立ち上がる。




家玄関でピコはライアにキスをしてライの頭を撫でた。


「行ってきます」


笑顔で手を振るライアとライ


「行ってらっしゃい」


玄関を出て出勤するピコ




メリンボ対怪獣対策生物研究所では研究員がせわしなく研究を行っている。その中をピコは白衣を着ながら颯爽と研究所を歩いている。その中一人の研究員のシンがピコに話しかけた。


「おはようございます。所長」


「ああおはよう」


笑顔でピコに右手を見せる研究員


「見てくださいよこの右手いいでしょ、先週来た怪獣ですよ、さっそくタトゥー入れましたよ。いやーこれ以上怪獣が来ちゃったら入れる場所がなくなっちゃうな」


ピコは顔をしかめて


「私はね、君のそういうところが嫌いだよ、怪獣は敵であって、我々が絶滅させなければいけない対象なんだよ、わかっているのか」


研究員は軽くあしらうように書類をピコに渡した。


「わかっていますよ、それよりこれ、頼まれていた怪獣に取り付けるタイプのカメラとセンサーを積んだ飛行可能な小型ロボットの設計図です」


歩きながら書類に目を通すピコ、




ピコのオフィスにシンがスマホのニュースを見ながら部屋に入ってくる。


「見てくださいよ、怪獣神教のデモ行進と警察の機動隊の武力衝突ですって、いかれた奴もいたもんですね」


シンはスマホ画面をピコに向ける。ニュース画面には怪獣の格好をした暴徒と警察が武力衝突をしている様子のニュースが流れている。ピコはシンの方を見て


「怪獣神教ってなんだっけ」


「あれっすよ、ほら怪獣は神だって言っている連中っすよ。ほら戦争時に比べて人が死ぬ数が減ったから怪獣は人類を救うために来た怪獣だからって、怪獣は敵なのにおかしな奴らですよ、まあ確かに怪獣が来たおかげで戦争は休戦になりましたけど、だけど怪獣のせいで犠牲者も出ているんですから」


ピコは歯切れが悪く口を開き


「ああ、そうだね、それよりあれだ設計図ありがとう、あれで制作してくれ」


「わっかりました」




メリンボの海上ではシンが制作したロボットが怪獣の巣を探して飛び回っている。一機のロボットが怪獣を見つけて怪獣にくっ付いた。




怪獣に付いたロボットのカメラには海面から深海に怪獣が進んでいく様子が写されている。深海には隕石と思われる石に怪獣の卵の集合体があった。そして卵の中で怪獣が胎動していた。一人で映像を見ていたピコは怪獣の卵の存在と怪獣の真実を知った。




自室でピコは自分が知った真実を公表するか考えていた。最近歩けるようにライがおぼつかない足取りでピコのもとにやって来た。ピコはライを抱きかかえる。ライは笑顔を見せた。その時ピコの口角も上がった。ピコはそっと書類をゴミ箱に捨てた。




対怪獣対策生物研究所ピコのオフィスでデスクワークをするピコ、どこか集中できなかった。




海から怪獣が現れた。海を割くように歩いている。メリンボの街に怪獣が到達した。メリンボの街では人々が怪獣から逃げている。研究所にいたピコも怪獣から逃げ始めた。ピコはシェルターに逃げることができた。怪獣はしばらくして世界連合軍に倒された




家族のことが心配でならなかったピコは急いで家に帰った。しかしピコの家は無残につぶされていて、がれきの下に無残にも殺されたピコの家族の遺体が発見された。ピコは立ち尽くした。


「あーーあーーあーーあーあーあーー私だ、私が、私が、私のせいで、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、あーーー」




アナウンサーがニュースを読んでいる。


「次のニュースです。私たちの生活を脅かしている怪獣の実態が記された貴重な映像が撮影されました。世界連合軍は怪獣に対して特別部隊を編成し、怪獣のせん滅を行う予定です。」




世界連合軍基地では多くの兵士が集められ、潜水艦に乗り込み潜水艦は港を出港した。惑星連合軍の潜水艦が怪獣の卵に到着した。




潜水艦内では怪獣の卵に向けて核弾頭を発射する準備を進めていた。


「核弾頭発射準備完了!発射許可求めます」


「核弾頭の発射を許可します。」


「了解、三、二、一、発射」


海中では潜水艦から核弾頭が発射された。核弾頭は怪獣の卵に当たり爆発した。怪獣の卵は破壊された、怪獣の赤ん坊は目を見開いた。




アナウンサーがニュースを読んでいる


「本日、怪獣の殲滅が完了したとのニュースが入りました。世界各国では怪獣の殲滅が完了したとのことで歓喜の声に包まれています。




十年後の惑星ガイウスでは炎に包まれ、戦争は激化して三十%の人類が死亡しました。



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