表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

弾かれましたの

 男装の麗人、麗しき白百合。

 お姉たまの称号です。

 群がる生徒が一気に増殖し、お姉たまの周囲を常に取り囲んでいますの。


「お、お姉、た、ま」


 押し退けて傍に行こうにも人垣が。

 邪魔ですの。マジで。私のお姉たまが見知らぬ人に囲まれ、このままでは隣に居ることすらできません。


「お姉、た、ま」


 ふんぬー! どいて欲しいのです。近付くこともできません。

 登下校時は毎回こんな調子で、人気者過ぎるお姉たまが、遥か彼方へと去っていくのです。

 お昼もご一緒できない緊急事態なのです。この変態どもを何とかしないと。


「マジ邪魔」


 私と同じく、弾き出されたのは腐れビッチですの。ですが、こいつはどうでも良いのです。元より不要な腐れなのですから。問題は私も一緒に弾かれていることで。

 なんとかお姉たまの隣を。


「無理ですの」

「これ、収まるまでは無理かも」


 腐れが何か言ってますね。確かに少し冷静になるまでは、お姉たまに近寄れません。今は強い印象を受けて舞い上がってる状態なのでしょう。

 今さら魅力に気付く程度の存在が、一等最初に惚れた私を差し置いて、なんてことは許せませんの。

 どうにかしてお傍に。


 しかし、奮闘するも無理でした。

 悲しいのです。お姉たまの隣が私のポジション、だったはずですのに。

 路上に立ち尽くし、指を咥えて見ているしかありません。


「お姉たま……悲しいのです」


 それでも部活ではご一緒できます。


「お姉たま」

「なに?」

「群がる女子ですが」

「あれねえ。ちょっと遠慮して欲しい」


 お姉たまの隣で踊りながらの会話。そして見学しながらも、黄色い歓声を上げる女子。とても煩いのです。先輩が注意しても去りませんし。静かにするよう言われて、一時的に静かになっても、すぐに騒がしくなってますの。

 ダンス部員にも迷惑になって、手に負えない状態なのですね。


「円華様の隣に張り付くチンチクリン! 近過ぎだから離れて」

「そうだそうだ! 邪魔だ、そこのチンチクリン」

「円華様はみんなのもの。あんたが張り付く権利はない」

「写真に写り込むから離れろぉ」


 むっかー! なんて言い草。


「誰がチンチクリンですの!」

「あんただ」

「佐瀬。あんたのことだってば」

「邪魔だから離れてよ」


 酷すぎますの。私は入学した瞬間から、お姉たまの虜でしたのに。俄か如きが罵倒するなど許せませんの。

 心無い言葉を投げつける品の無い方々は、お姉たまに相応しくありません。


「じゃ――」

「いい加減にしてくれる? 見学させないよ。中傷までして」


 お姉、たま?

 もしかして、私を庇ってくださるのでしょうか。

 お姉たまの言葉に三年の先輩方が、やっと本腰入れて動き出しましたの。


「はーい。全員出てって。汚い言葉で罵る人は、横内に相応しく無いから」


 体育館内に居る女子を追い出す先輩方です。次々その場から立ち退かされてますの。

 やっと平穏を取り戻せそうです。


「なんか巻き添え食らったみたいで」

「いいんですの。お姉たまの傍に居るリスクですから」

「だからって、チンチクリンは無いよ」

「お姉たま。庇って頂きありがとうございます、ですの」


 お姉たま。私に気遣いを。感動ですの。

 体育館の外では先輩方の説教が始まったようですね。少しは反省して欲しいものです。

 暫くすると三年の先輩方が戻ってきて「見学は静かにすること、罵声や中傷は一切禁止。守れない場合は見学させない」と、注意したそうです。


「大人しく見てる分にはいいけど、いくら佐瀬が変態でも、あれは無いからね」


 変態と言う認識は変わらないのですね。違うのですが。

 部活が終わると着替えるのです。

 お姉たま。相変わらず素敵ですの。その控えめなチェスト、くびれが見事なウェスト、そして張りのあるヒップ。

 いたっ!


「じろじろ見ない」

「お姉たま。今さらですの」

「恥ずかしいっての」


 お姉たまの脳天チョップを食らいました。恥ずかしがり屋ですの。


「お姉たま」

「なに?」

「たまにはシャワーを浴びませんの?」

「あんたが居るから使わない」


 私を警戒して使わないと。ですが、いくら私でも不意打ちはしませんの。宣言してから頂きますの。


「と言うことですの」

「家で浴びるからいい」

「匂いますの」

「ちょっとの我慢だって」


 お姉たまは頑なですの。ですが、いずれ頂くのです。

 想像するだけで堪りません。


 下校時ですが、今日はさすがに群れる存在は居ませんでした。先輩方が事前に排除してくださったようで。それと完全下校時刻なので、校舎内に残っている生徒もほぼ居ませんし。

 やっとお姉たまのお隣を。


「なに?」

「あ、いえ」


 私の手を取ってくれましたの。


「暫く寂しそうだったから、仕方なくだからね」


 お姉たま。照れてますの。とても可愛らしいです。

 変態とか言ってはいますが、お姉たまは優しさに溢れてます。私の愛情、多少でも受け止めて頂けていると。

 ああ、早くお姉たまと至極の時間を過ごしたいのです。その際には隅々までお姉たまを頂くのです!


「鼻息荒い」

「あ、これは」

「変態だからなあ」


 仕方ない、と言ってますね。


「妙な想像してる?」

「いえ」

「嘘吐くなら手を離すけど」

「あ、実は」


 当然ですが、妄想全開の内容を話すわけにはいきません。ですので適当に取り繕って説明を。


「お姉たまと素敵なティータイムとか、もう少し親密な関係とかですの」

「額面通りに受け取る気は無いから」

「いえいえ。お姉たまに嘘は吐きませんの」

「まあ、言わずとも理解してるけどね」


 でしたら、私の想いに応えて欲しいのです。


「手は繋いでもいいけど、体の関係は無いから」

「お、お姉たま。それでは、私は何を楽しみに」

「やっぱそうなんじゃん」

「あ」


 してやられました。ですが、お姉たまは気付いているのですね。でしたらあとは押して押して、ちょっとだけ引いて、そして押しまくれば、きっと。

 ああ、鼻血が噴き出しそうですの。


「ほんと、変態なんだから」


 呆れ気味ですが、それでもお姉たまの優しさを感じ取れます。


 そして数日後。

 体育祭での活躍目覚ましいお姉たま。大応援団を率いるのは、私ではなく上級生でした。腐れビッチすらも排除されてましたの。いい気味です。ですが、私の立案でしたのに、発案者が蚊帳の外とは。


「納得いきませんの」

「だよね」


 私に乗っからないで欲しいのです。腐れは。

 やはり一年だと力関係の都合が。


「佐瀬」

「なんですの?」

「円華先輩だけど」


 見てて分かったことがあるとか言ってますの。


「それって何がですの?」

「言いたくないけど」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ