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約束のオルゴール  作者: mutsu!
6/6

第六話

ちゃんと小説として成立しているといいけど(/ω\)



「……さて、アホの子の登場シーンも無事終わったことだし『あほの子は酷いです!』本題に入ろうかと思うんだけど『ほれぼれするほどのスルー!?』部長はまた私でいいのかしら?」


 やれやれといった風情で椅子を一つ追加して、折り畳みのパイプ椅子に全員が座ったところでくらげちゃんが話題を戻した。林檎ちゃんがスルーされまくってるけど気にしちゃいけない。今日からクラブ活動開始なのだ。こういうまとめ役はくらげちゃんが一番向いていると思う。

 この部室を確保して来てくれたのもくらげちゃんだしね。


「「「異議なーし( です)」」」


 みんなの声が揃うのもいつものことだ。


「そ。じゃあ、私たち歌部の活動方針について」


「「「ウタブ!?」」」


 ……みんなの声が揃うのもいつものことだ。


「ん? いや、合唱部も軽音部もゴスペル部も高等部には既にあったからさ。名前が被るとややこしいから変えて欲しいって、この部室を申請する時に先生に……」

「くらげぇ……、ネーミングセンス……」


 そう……、くらげちゃんは顔もスタイルも良いのにネーミングセンスが壊滅しているのだ……。


「秘孔を突っつかれたモヒカンの人みたいです……」


 林檎ちゃん、それはヒデブだね……。のっけちゃんが「センス……母さん譲りか……」とかぼそーりしてると、「あぁ、そういえば昔先輩の家にいた猫、猫なのに名前『よしお』だったですね……。あと、何回も長靴に入って抜けられなくなってたです……」と林檎ちゃんが遠い目をしている。


「う、うるさいなもう! 歌部ならゴスペルでもポップスでもなんでも歌えるじゃない! それでよし! ほら、穂乃花、一二六さんの遺した資料は忘れずに持ってきた? 七夕祭(たなばたさい)で発表するんでしょ? もう三か月もないし、昨日はほとんど資料を探すだけで終わったんだから」


 赤くなったくらげちゃんが半ばヤケクソになりながら話を進めていく。例のオルゴールの曲がもし歌のある作品だったら七夕祭、他校祭に当たるイベントで発表しようってことになったのだ。千里ちゃん曰く、可能性は高いのだそう。


「もちろんだよ! みんなが帰った後に見つけたやつも全部持って来たよ。ほら、この鞄の中に……あれ?」

「おい……」


 慌ててる時のドラ〇もんの気持ちが少しわかった気がする。鞄の中をまさぐりながらジト目になってるのっけちゃんを横目にわちゃわちゃと資料を探す。


「え、えーと、あ、これだ!」


  ドサドサドサ!


 鞄の中から40冊くらい取り出した瞬間、のっけちゃんが「ぶっ!」とか吹いて、


「……ね、ねぇ? 心之介? あの鞄にこの量……物理法則、無視してない?」


 とか千里ちゃんが驚愕の表情で呟いていたり、


「……千里、気にしたら負けだ……」


 なんてのっけちゃんが遠い目をしてるけど、うん。気にしたら負けだ。


「……ふむ、けっこうあるわね」

「さすがくらげお姉ちゃん、安定のスルーです……」

「んー、どうしよう? あれ? これは……書いた順番? ノートに番号が振ってあるけど……? うん。まずは日記から、かな? あのオルゴールがいつ頃創られた物なのか、から調べよっか」


 机の上に取り出したノートやら資料を適当に手に取って整頓しながらつらつらと表紙に目を通したくらげちゃんが方針を決めた。いつも通り私たちに否やはない。


「だね。お母さんも知らなかったもんね」

「歌詞とかも見つかるといいですね!」


 うん。もしかしたら歌がない曲なのかもはしれないけど、あると嬉しいなって思う。千里ちゃんの近代音楽史的に大切な資料かもしれないから気を付ける様にって注意の後、まずは日記を時間の節約の為に私が読み上げることになった。


「それじゃあ……読んでいくね。ごほん」

―― 十月六日、タイトル『わしの名は』 ――


「「「 ぶーっ!!」」」


 全員吹いた。


「い、いきなりぶっこんで来たわ……」

「パクリじゃねーか!」

「でっかい隕石がすっごい勢いで突っ込みを入れそうです!」

「……え、えーっと、これ、穂乃花ちゃんの日記じゃないよね?」


 千里ちゃんがなんか失礼なこと言ってる。


「違うよ! ……って、次めくってもいいよね? ……よっと」

―― 前々前日に曾孫が生まれた ――


 一瞬の空白。このが居たたまれない!


「爺さんノリノリだな!」

「い、一二六先生?!」


 漫画的表現でいうところのアゴが外れたまんま、顔には縦の効果線だらけな千里ちゃんの声が裏返っていらっしゃるね。


「まさか、この一文のために日記を遅らせ……いや、いやいや! まさか、まさかだよな?」


 さっきの鋭いツッコミの後、はっと気づいた感じでのっけちゃんがさらに続ける。うん、たぶんそのまさかだと思うよ? 曾おじいちゃん、ちょっとファンキー過ぎないかい?


「……曾孫(ひまご)っていうとこれ……たぶん穂乃花のことよね? 一二六さんの名前とどうつながるんだろう?」


 確かに。まあ続きを読んで見たら分かるの……かな? ごほん。


―― 可愛い女の子じゃった。わし小躍り。十月三日生まれじゃから十と三で『トミ』でどうかと言ったんじゃが……婆さんに数字だけの名前とかないわー、っちゅうて反対された。子供らも孫も白目剥いとったし……なにげにわしの名前全否定……酷くね? ――


 ……。


「おばあちゃんグッジョブだよっ! 穂乃花の名前、危うく21世紀におトミさんになるとこだったとか!」


 流石におトミさんはしわしわネームにも程があるよ! 渋すぎるよっ!


「……っていうか、チャラいです! なんか全体的にチャラいですぅっ!」

「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ! この現実から逃げちゃだめだ……」


 林檎ちゃんと千里ちゃんのテンションのコントラストが対称的だ。


「なんつーか、さすが穂乃花の曾じいさんっつーか、祖先っつーか……うん、逆に続きが気になるわ!」

「どういう意味だ!?」

「それで、続きはどんな感じなの?」

「うーん……」


―― 十月七日、今日は布団から起きれなんだ。昨日やった小躍りが腰に来た模様。マイケルダンスはそろそろ封印かの……年は取りたくないもんじゃ…… ――


 マイケルの「フー!」が一瞬聴こえた気がしたよ。


「小躍りってほんとに踊ったのかよ爺さん! しかもマイケル!?」

「……あ、千里先輩が真っ白ですぅ」

「そんなに大したことは書いてないみたいだね」

「絵面が大変なことになってるわ!」

「あ、あはは……。一二六さんって……」

「あ、これ、途中で日記書くのに飽きたっぽい。半年くらいで終わってる……」


「「「……えー……」」」


「一二六さん、なんだか色々ダメダメな感じです……」

「……穂乃花、ノートの方、見よっか……」


 ……うん。もう誰がどのセリフをしゃべってたのかはご想像におまかせしようかな。













長靴に入った猫

https://youtu.be/BIyAXwvKo7c


四月の華企画

https://youtube.com/playlist?list=PLVSUz-V5BkITM3senuDz0Qv2WAncCDZxy


こちらで同作品の声劇を公開しています。専門学校の学生さんが一生懸命演じてくれていて、演者には二人ほどプロも参加して下さっています。

作者も泣かされた素敵な演技を見に来てやって下さい(*⁰▿⁰*)

チャンネル登録とイイネ♪ もよろしくお願いします。

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