第四話
気に入ってくれる人が一人でもいると嬉しいな♪
ちなみにYouTube上で公開されている声劇の方では、実際にオルゴールの音が流れます。僕が作ったオリジナルの曲です。
英語でオルゴールはミュージックボックスって言うらしいんだけど、カタカナのこの「オルゴール」って言葉の響きの方がなんとなく好きなのは自分だけではないはず(´・∀・`)
「ちょっ! え? えぇ〜?! 穂乃花ちゃんて柳一二六先生の曽孫さんだったの?」
「え? そ、そうだけど」
「あたしも知らなかったわ」
「マジか……」
なんだかみんなして驚いてるんだけど……
「あれ? ひいおじいちゃんって……もしかして有名人だった?」
「有名も何もっ! なんで曽孫の穂乃花ちゃんが知らないの? この町が……和花町が誇る昭和の大作曲家じゃないか! 僕、あの人の曲は全部弾けるからね? っていうか何曲かは教科書にも載ってるからね? 心之介ですら知ってるはずだからね?」
おおう……こんなに興奮してる千里ちゃん、初めて見たよ……。
「つか、おい! ちょっと待て! 俺ですら、ってなんだ!?『ですら』って!?」
「あ、あの、これ、もしかしてオルゴール……ですか?」
流れ弾でダメージを受けているのっけちゃんを放っておいてくらげちゃんが話を戻す。
「ああ、柳一二六監修の、まあたぶん……世界にひとつだけのオルゴールだ。マニア垂涎の逸品、って奴だな。ただなぁ……千里くん、だっけ?」
急に話の矛先を向けられてキョトンとする千里ちゃんに叔父さんが続けて訊ねる。
「俺も一二六さんの曲は結構知っていたつもりだったんだが、このオルゴールに使われている曲のタイトルが分かんねーんだわ。修理の確認も含めて今から音出しするから、なんていう曲か、もし知っていたら教えてくれないか?」
「えっ? あ、はい! 分かりました」
「穂乃花ちゃん? 良いかな?」
「うん。ずっと壊れてたから、穂乃花も実は初めて聴くんだ。林檎ちゃんがいないのは残念だけど、でもこうやって合唱部のみんなで一緒に聴けるのすっごく嬉しい!」
「修理した甲斐があったってもんだな。それじゃあ、鳴らすぞ」
私の目を見て、叔父さんが優しく笑ってオルゴールを渡してくれた。発条は巻かれていて、あとはロック解除のスイッチを切り替えるだけだ。そっと蓋を開けてカチリと演奏をスタートさせる。
……tin.rin,rin
凛と透き通った、懐かしさと憂いを帯びた、郷愁にも似た美しい音色が響き渡る。何かを祈るような、切なくも優しい旋律は何度目かの繰り返しの後、辺りをセピア色に染めて、少しずつリタルダント(徐々にゆっくり)をして消えた。最後の余韻を残しながら唐突にその演奏の終わりを迎える瞬間、オルゴールの演奏の中で桜の花の最後の花弁が舞い落ちるようなこの終わり方が、この瞬間が一番素敵なんだと思った。
「なに? これ? なみ……だ? わたし、泣いて……る??」
私はいつの間にか涙を流していた。
「なぁ? 姉ちゃん、この曲……知ってる?」
「知らない……。ねぇ、千里、これなんていう曲??」
「穂乃花ちゃん!」
千里ちゃんの呼びかけでふと現実に戻る。
「ふぇっ? あ、は、はい?!」
「ひいおばあちゃんはまだご健在? あと、このオルゴールについて何か聞いてない?」
「え? あ、穂乃花はなにも聞いてないけど、あ、でも、もしかしたらお母さんなら何か知ってるかも」
矢継ぎ早の質問にしどろもどろになりながら答える私に、千里ちゃんが爆弾を落としてきた。
「今から穂乃花ちゃんちに行こう! たぶん、たぶんこれ! 未発表曲だよ! しかもこのコード進行! これ絶対! 絶対、前後にも旋律があるはずだ!」
四月の華企画
https://youtube.com/playlist?list=PLVSUz-V5BkITM3senuDz0Qv2WAncCDZxy
こちらで同作品の声劇を公開しています。専門学校の学生さんが一生懸命演じてくれていて、演者には二人ほどプロも参加して下さっています。
作者も泣かされた素敵な演技を見に来てやって下さい(*⁰▿⁰*)
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