第8話 成人式の日の過ち
振袖を着た美也はかわいい。
マジ天使。
いつも明るい美也がさらに輝いて見える。
「まーくんどう? 似合ってる」
「すごいよ、まるでお姫様だな」
「まーくん……まーくんならそう言ってくれると思ったよ」
美也はいきなり涙目になって、号泣し始めた。
慌てて美也のお母さんが涙を拭い、化粧をし直す。
背広姿の僕と美也を見て美也のお父さんの雅也さんがポツリと言った。
「まるで、結婚式だな。生きているうちに娘の晴れ舞台を見れてよかった」
「お父さん、結婚式はまだだけど、もうすぐ見せられるから安心して」
「美也ー!」
それを聞いた雅也さん、鼻水を流すほどの激泣きだ。
「それじゃ、美也をよろしくお願いします」
「お任せください」
まるで何かの晴れ舞台にでも送り出すよな感じで大げさに手を振る美也のお母さんに送り出された。
*
成人式の会場となる駅前のホール迄は近かったので、美也の希望で手を繋いで歩いてくることになったんだけどその判断は間違えていた。
どうやら履きなれない草履が良くなかったのか、足を引き摺っている。
「痛いか?」
「うん、ちょっと」
「振袖を着てるから、おんぶするわけにもいかないしな。肩を貸すから駅までがんばれ」
「ごめんね」
「か、彼女が困っているなら、助けるのは当たり前だし」
「まーくん!」
人通りのある道路で思いっきり抱き着かれてちょっと恥ずかしい。
美也は人目を気にせずに感情を出し過ぎる。
なんとか会場の駅前ホールにやって来たら、岡山が僕を見つけてやって来た。
「おう、来てくれたか。ありがとう」
「ところで話って?」
「ちょっと、真守に話をしたい人がいるんだけどいいかな?」
話をしたいのは学歴自慢じゃなかった。
でも、僕に話をしたい人って誰なんだろう?
「ところで、後ろに居るのは誰?」
「僕の彼女の美也」
「彼女がいるのか……。ちょうどいいから一緒に聞いて欲しい」
そう言って岡山が連れてきたのは……。
千葉詩織。
僕が小学校3年生から4年生に掛けて仲良くしていた女の子であり、美也が僕の彼女と勘違いしていた女の子だった。