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第6話 幼馴染とデート

 大学に登校するため部屋を出ると美也が待っていてくれた。


「まーくん、今日は初めての一緒の登校だね」


 正月が明けてすぐなんだけど、今日から大学の授業が再開だ。

 美也も短大の授業が今日から始まるらしい。

 例の流行病のせいで春先から夏前に掛けてずっとオンライン授業だったせいか、足りない授業枠を取り返すためにこんな早い時期からの授業再開だ。

 確か去年は1月の末になっての授業再開だったのでずいぶんと早い。


 僕らは手をつないで登校し始める。

 美也の手が暖かくて心が和む。


「こうやってまーくんと手をつなぐのって久しぶりだよね」


 僕の記憶に間違いがなければ小学校2年の3月の終業式以来だ。

 あの頃の美也の手は小さくてかわいらしかったけど、今も十分小さい。


「私、もうこの手を離さないよ」

「いやいやいや、短大の場所が違うし!」

「そういう意味じゃないって。もうまーくんと絶対に別れないから」


 そう言って手に力を籠める美也。

 力を入れても女の子の手なので弱々しくてかわいらしい。

 結局、僕の下車駅までずっと手を握ったままだった。

 美也は名残惜しそうに僕の手を離した。


「授業終わったら、駅で待ち合わせてデートしようね」


 その「デート」という言葉に僕の身体が火照る。

 あー、なんだろ、この癒される感じ。

 僕を好いてくれる女の子がいるだけで、ここまで気分が軽くなるのか。

 僕は授業を終え、美也と再び会うことを一日中待ちわびた。


 *


 メッセで話し合った通り、地元の駅の改札で美也が待っていた。


「待たせた?」

「ううん、今来たところ」


 手を繋ぐと美也の手は冷たかったのでかなり待っていたみたいだ。

 初デートということなので二人でショッピングモールの映画館にでも行こうと思ったんだけど、美也は嫌がった。


「映画館じゃまーくんと話せないから嫌だよ」

「じゃあ、ファミレスにでも行く?」

「もっと落ち着いて話せるいい穴場があるよ」


 ということでやって来たのは駅前の裏通りにあるコンビニのイートインコーナーだった。

 最近のコンビニは淹れたてのコーヒーやちょっとしたファーストフードも売っているので十分ファミレスの代わりにもなる。

 イートインを利用する客は殆どいないので話すには良さそうだ。

 色々と話をしていると、成人式の話が出たんだけど、美也はどうやら乗り気じゃないらしい。


「私、成人式は行きたくないな」

「どうして? 一生に一度のイベントだからお父さんの言うように参加した方がいいと思うよ」

「まあ、そうなんだけど……」


 なにか気掛かりがあるみたいだ。

 僕は美也が話すのをじっと待った。


「だって、成人式に行ったら昔のクラスメイトと会うでしょ?」


 まあ、成人式なんてそんなもんだよな。

 同じ歳の人間が集まるんでそうなる確率は高い。


「成人式を機会にまーくんに告白する女の子が絶対いるよ」


 そんなことを心配してたのかよ。

 そんな女の子が居たらもうとっくに付き合ってたから。


「いるわけないだろ。今までずっと彼女なんていなかったんだし」

「でも……まーくんみたいな素晴らしい男の子を放っておくはずないよ」

「それって、美也のこと?」

「えっ?」


 また鳩が豆鉄砲を食らった。

 キョトンとする美也。

 僕は追い打ちをかける。


「美也に告白されて僕は嬉しかった。僕は美也とずっと一緒に居たいと思う」

「まーくん……」


 感極まった美也はテーブルを乗り越えて僕に抱き着こうとしてコーヒーをひっくり返す。

 あまあまな雰囲気はぶち壊しだ。


「てへへ、またやっちゃったよ」


 舌をペロッと出す美也は子供の頃と変わらず僕が抱きしめたくなるほどかわいかった。


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