第4話 幼馴染との添い寝
美也は家に鍵が掛かっていて寝る場所がないので僕の部屋で寝ることになった。
両親が戻ってきているので同じベッドで寝るわけにもいかなくて、美也がベッドで僕が床に引いた布団で寝ることになった。
さすがに幼馴染といえど、女の子がすぐ横に寝ていると思うと気が高ぶって寝れない。
美也も同じだったみたいで、部屋の電気を消して30分ぐらいたった頃に僕に声を掛けてきた。
「まーくん、まだ起きてる?」
「うん」
「寝れないからそっちの布団に入っていい?」
僕が答える間もなく美也が僕の布団に潜り込んできた。
まじか?
柔らかなとこがいろいろとあたってヤバいんですけど。
どこがヤバいとは言えない。
美也はそんな僕の気も知らず、昔話を始めた。
「こうして一緒の布団で寝てると、子どもの頃を思い出すね」
美也とは互いの家でお泊りをよくしてたりした。
横に美也が寝ていると昔を思い出す。
あの頃は恋愛感情なんてこれっぽっちもなかったので嫌な思い出が蘇る。
寝相の悪い美也の踵落としを食らって、夜中に目覚めた悪夢を。
「夜中に蹴られて何度も起こされたよな」
「もー、ムードないなー」
二人して笑った。
「またこうして一緒の枕で寝れて私は幸せだよ」
とろんとした目で僕を見つめる美也。
「あのさ、私がまーくんのお父さんとお母さんに結婚したいといったの、本当はすごく勇気が要ったんだよ」
そうだったのか?
いつもの軽い冗談と思ってたのに。
「ほら、まーくんて私よりもずっといい大学行ってるじゃない?」
趣味もないし、彼女もいないから勉強する時間だけはたっぷりあったからな。
高校もそれなりのとこに行ったし、大学もそれなりのとこに入れた。
「私なんてさ……3月で卒業なのに未だに就職先が決まってないんだよ。ポンコツ過ぎるよね」
今年はな……。
例の流行病でどこの業界も苦しんでるので、新入社員を採っている会社は少ない。
運が悪かったとしか言いようがない。
「高校も短大も普通の私がまーくんと付き合うのはちょっと釣り合わないかと思ってたんだけど、お父さんとお母さんに喜んでもらえてうれしかったんだ」
「美也なら性格が明るいからうちの家族も大歓迎だよ」
「えへへへ。ありがとう。なんか言いたいこと言ったらホッとしたよ」
「僕こそ、美也にずっと思ってもらっててうれしかった」
「まーくん」
「美也は僕のお嫁さんになってくれるんだよね?」
「うん!」
「それなら無理して就職せずに、僕の奥さんとして永久就職しない? 僕はまだ収入無いけど、美也ぐらい親父が食べさせてくれるはず。もちろん僕が就職したら美也を養うし」
「まーくん、ありがとう。就職先はまーくんに決めるよ。まーくんならそう言ってくれると思ったよ」
どさくさに紛れた感じだけど、プロポーズをしてしまった。
美也もその気があったみたいで雇用契約?は無事成立した。
僕らはしっかりと互いを抱きしめあう。
もう、二度と手放さない。
そんな二人の気持ちが二人を包み込む力に表れていた。




