第3話 両親への交際報告
僕らが帰宅すると、父さんと母さんが戻ってきていた。
予定だと2日の昼に戻ってくるはずだったんだけど、ずいぶんと早いな。
「ただいま。父さん、今年は帰ってくるの早かったね」
「実家に帰省したんだけど親父に『こんな風邪の流行っている大変な時期に都会もんが帰省するな』と追い返されたぜ」
例の流行病のせいか。
だから今年は行くなってあれほど言ったのに。
俺が言っても笑い飛ばして聞く耳を持ってくれなかった親父たちを止めてくれた甲府のじいちゃんありがとう。
「ちゃっかり達也君のお年玉だけ取られたんだけどね」
「お年玉から感染するぞって脅しても、それとこれは別だと返してくれなかったな」
「お父さんの実家に戻ったけど車から降りて10歩ぐらい歩いただけで帰って来たわ」
「何の為に帰省したんだろうな」
「あはは」
自分たちは何も悪くないといった感じで笑い飛ばす両親。
じいちゃんの方が正しいんだからもうちょい反省しろよ。
行くだけ行って追い返される骨折り損だったみたいだけど、元気なとこを見せられたからそれで充分だろ。
父さんが僕の後ろに立っている美也に気が付いた。
「ところで、後ろにいるのは?」
「あれ、みーちゃんじゃないの? 久しぶりね」
母さんが目を丸くして驚いている。
美也は僕の前に出ると、母さんに元気な大きな声で挨拶をする。
「まーくんとよりを戻しました、幼馴染で彼女の美也です。近いうちに結婚する予定なのでよろしくお願いします」
それを聞いて豆鉄砲を食らったようにキョトンとする父さんと母さん。
二人は顔を見合わせる。
「母さん、聞いたか?」
「聞きましたよ、お父さん!」
「ついに息子も嫁さんをもらう年になったのか。美也さん息子をよろしくお願いします」
「これで息子の代で家系が断絶することもなくなりましたね」
家系断絶って、どんだけ僕はモテない設定なんだよ。
まあ、今までの人生で彼女なんていたことないけど。
「今年は年始めからいいことがあってめでたいな」
「そうですね。お父さん」
美也が半分冗談めいた感じで嫁宣言したのに、ここまであっさり受け入れられるとは僕も正直思ってなかった。
軽いのか馬鹿なのか、どう言っていいのかわからない僕の両親である。
でも両親が美也との交際を祝ってくれて本当にうれしかった。
「まーくん、うれしい」
美也もうれしいみたいで、僕の後ろで小声で呟きながら指を突き合わせてモニモニしている。