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14-3

「それではAIの()()()()によって検討された、『リバイバルプラン』を発表します!」


 橋野(腰巾着)が得意げに宣言し、会はスタートした。

 会場には全社員と役員が居並び、社長は腹心の活躍に満面の笑みを見せていた。さぞやうれしいのだろう。裏でいろいろ画策されていることも知らずに、のんきなものだ。


 その笑顔が凍りつく瞬間が楽しみだ。……などと考え出すとは、私も相当連中に毒されてしまったのだろうか。


「それではプランの概要を説明していきましょう」


 橋野が大仰な振りを交えながらパワーポイントを表示する。


「なかなか堂に入ってるじゃないですか」


 須貝がニコニコしながら橋野のプレゼンを聞いている。今日はチサトの動作確認などを理由に、今回の会に参加している。大事な会なので、なにか問題が起こってはマズイとの判断で呼び出されたらしい。


「――以上のことから、今回のプランを完遂することで販管費の50%を削減。売上は前年度比150%を達成することができます。つまりこれは、利益を倍以上に増加させる夢のプランなのです!!」


 場内が一段どよめいた。経営陣も一様に満足気な表情だ。これは先に根回しが終わっているとみた。こういう事前調整はピカイチだ。トップに立とうとせず、2番め3番目をキープしておくのが本人のためだとチサトとも話していたのだけれど。


 欲をかいて背伸びしてしまった結果なのだろうか。だとするならばやはり、そういった先が見通せない者に経営を任せるわけにはいかない。


 そうこうしているうちにスライドは具体的な実施事項に差し掛かってきた。


「実施事項は主に2つ。1つ目は営業機能改革、もう一つは時間の有効活用施策です。営業機能改革! 目玉は営業職のバーチャルオフィス化、つまり会社への出社を義務としないということです!」


 おおおー! と盛り上がっているのはおそらく営業が集まっている一角だろう。


 後は営業をサポートするITを増やす、時間有効活用に関しては会議の短縮、及び廃止や全職域における在宅勤務の推進――などがうたわれている。


 ――これだけじゃ、販管費50%は落ちないだろう。カンのいい人は気づくかもしれない。すでに社員の中には眉をひそめるものも現れている。今そういう表情ができる人こそ、上級職に上げるべきかなと思う。



 ここまで橋野が説明し、しめようかとまさに口を開いたその瞬間、いつものキャピキャピした女の子の声が、ホール全体に響き渡る。


「はいはーい、ここからは直接美少女アイドルAIのチサトが説明しちゃいますねー!」


 突然画面上にも美少女アイドルちゃんが出てきたもんだから、ザワッ! とまた会場がざわめいた。


「はじめましての人が多かったですね。私が噂の超銀河系アイドル、誰もが振り向くウルトラ美少女アイドルの多機能AI、チサトちゃんだよー! みんなー、元気ー!?」


 会場は水を打ったような静けさに包まれた。


「お、おー……?」


 何人かが呆然としつつ返事した。あっけにとられているのだ。


「んー? 元気が無いなぁ。会場のみんなー! 元気ー!? ……ノリ悪いなぁ、もう」


 置いていかれた従業員たちは、ある意味チサトに釘付けだ。……そうか、これが狙いか!


「んじゃもーノリ悪いからさっさと行くね? とここでいきなりみんなに質問! さっき橋野さんが説明した内容だけではぶっちゃけ目標達成なんて無理じゃね? って思った人、はい挙手!」


 パラパラと何人か手が挙がる。


「んー、結構少ないなぁ……はい、確認しました。先程手を上げてくれました11名には5TP差し上げます。TPとは『チサトちゃんポイント』といいまして、100TP溜まった人は翌年度の昇格候補になります」

 えー! まじかよーなど声が上がる。


「ということでお察しのとおり『リバイバルプラン』にはまだ続きがあります。これらも合わせて実行することで目標を達成することができます」


「おいチサト! そんなこと、私は聞いてないぞ」


 橋野が口を挟んできた。段取り外のことで慌ててる様だ。面白くなってきた。まぁ、この段取りは知っていたけれど……。


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