13-3
「須貝さん!? いつから聞いていたんですか?」
突然の須貝の声に驚いて尋ねる。
「え? 確かすみれさんがモテるとかなんとかの辺りからです」
「ほぼ最初からじゃん……」
フジコがぼそっと漏らす。
「も、もうっ! いるなら言ってくださいよ!」
「今回の話、代表にも聞いておいてもらったほうがイイと思って、わたしが勝手に呼び出してた……気に障ったらゴメンね」
チサトが気を利かせて須貝を呼び出していたという。ありがたいと言うべきなんだろう。でも聞かれたらちょっと恥ずかしい内容だったような?
「い、いや別にいいんだけれどその、ちょっと恥ずかしいこととか、あったじゃない?」
「え? かくれ巨乳とか枕とか?」
「ちょ、言わなくていいから!!」
チサトはこういうところ、デリカシーがない。というか、わざと言ってるんじゃないか疑惑すらある。
「はははっ! 心配ないですよ、そんな事しているとは思っていませんし、それに胸はこの間見た……あ」
「ちちちちちょっと須貝さん!」
やっぱりあの時じっくり見てたんじゃない! もうサイアク恥ずかしい!!
「は? なにそれすみれ、その辺詳しく」
真顔でフジコが続ける。いやいや、そんな真剣にするような話かこれ?
「や、なにも無いんだよ、ホント」
「いいから、そこに正座」
「え、今その話、始める?」
「アタシにとってアンタの会社がどうしたってのより、アンタの男っ気の方がよほど関心高いからね」
えー、そこの心配はしてくれなくてもいい……。
「……なんだよ、じゃあホントに何もなかったんだ。とんだヘタレカップルだこりゃ」
「ちょ、カップルって……私たち、別につきあってるわけじゃ」
「ふ――――ん!?」
そしてフジコはじっと私を睨みつける。
「な……なに?」
「……ま、いいけど」
そういってフジコはフイっと視線をはずした。
「ところでさー、須貝さん、だっけ。前どっかで会ったことない?」
スマホの画面に写る須貝をしげしげと見ながら顎をさするフジコ。
「えっ?」
須貝が面喰ったように声を出す。そりゃそうだ、いきなり会ったことなかったかといわれたらね。
「そうなの、フジコ?」
「いやわかんないんだけれど、なーんかあった気がするんだよね」
目をほそめつつ、スマホに顔を近づける。対して須貝はカメラから離れていっているようだ。アップで映るフジコの圧に耐えきれないのだろう。
「フジコ。それってナンパの常套句」
「バッカ、んなわけないでしょ! ……うーん、気のせいかなぁ」
といいつつフジコは頭をかきつつスマホから離れ身を起こす。
「ま、ともかく僕のほうから全社提案をチサトに掛けさせてはどうでしょう? みたいな粉をかけたら割とうまくいくんじゃないかなと」
「よっし、ならその方向で決まりだね! アタシは何も出来ないけれど、いつでもすみれの味方だからね、応援してる!」
「ありがとう、フジコ……だいすき!」
「うああ、だから抱きつくなって!」
フジコに抱きつくのが癖になりそうだ。