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7-2

 チサトが現状の分析結果を画面上に出しつつ、口頭で補足していく。それに私が意見する、みたいな感じ。はたから見たら、パソコンと話す少しかわいそうな子に見えなくもないという事に気付いてしまった。


「あ! そうだよ、ボイチャしてるんだよ私!」

「……突然なんの話? すみれさん」


 またロクでもないこと考えてるんだろ、くらいの視線を投げてくるチサト。しまった、声にだしてしまった。


「あ、あはは。ごめんごめん、ひとりごと」


「やたらに元気いっぱいのひとりごとだったけれど。まさかすみれさん。他人にパソコン相手にぶつくさ呟いている危ない人認定されてるんじゃないだろうかー、って密かに悩んでいたけどぉ、チャットをしているって言えばいいんじゃね? って思ってついついテンション上がっちゃったー! ……ってわけじゃないよね?」


 ……勘の鋭い子は嫌いだよ。


「ソンナコト、アルワケナイジャナイデスカー」

「かなり棒だけれど、いいよ。わかってるから」

「くうう」

「あまりAIを、舐めないでいただきたい!」


 ドヤ顔で追い打ちを掛けられた。くそ。AIにバカにされた。人に言われるのは慣れてるけれど、これは地味に堪える。くく。


「それで話、続けてもいいかな? すみれさん」

「はい……お願いします」


「この会社は基本的に問題だらけなんだけれど、単純に残業時間を減らそうと思ったら割とやりやすい対策がいくつかあることが見えてきたよ」


「え、もう? まだ一日も掛かってないじゃない、すごい!」


 基本的に問題だらけ、という言葉が少し気になるけど、今は残業時間を減らすことが先決だ。


「あ、ごめん。これまだ仮説段階だから。これから私達の中でシミュレーションして検証していくよ」


 手のひらをこちらに向けひらひらさせながら、慌てたように付け加えた。


「検証?」

「うん。……ね、AI(わたしたち)が出した結果が正しいかって、どうやって判断できると思う?」

「えっと……どうすんだろうね?」


「あはっ。実際の業務担当者にやってもらうのが一番だよね。だって実際のお仕事やってるんだから」


「あっ。そうだね」

 思わず頭を抱えそうになった。


「わたしたちには結果が正しいかなんて、本当のところはわからないんだよ。だってその仕事やってないんだから」


 ヤバい、それは完全に盲点だった。でも実際の担当者に見てもらわないと、私にだって設計のイロハなんてわかんないよ。


「じゃあ担当者に協力してもらわないといけないんだね。会議でも……いや、そんな時間ないし……なら1人づつヒアリングを……ああだめだ。どのみちそれぞれの時間が取られてしまうし」


 場合によっては結果の報告どころか、結果の確からしさも無い状態になりそうな予感に、どんどん気が焦ってきた。


「大丈夫だよ、すみれさん」

 ハッとして画面を見ると、チサトが人差し指を立ててちちち、とやった。


普通は(・・・)そのお仕事をやっている人が、本当にその結果が合っているかどうかを検証するフェーズが絶対入るんだけれどぉ……」


 そしてチサトはこちらをチラチラと見てくる。これはアレか、ツッコミ待ちか。


「え、じゃあチサトはその手順をやらないって言ってる? でも、どうやるの?」


「むふふ。その言葉を待っていたよ、すみれさん! 実は答えは簡単、演じれば良いんだよ!」


 チサトは腰に手をあて、満面の笑みで言い放った。


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