5-2
「美少女とAIは嘘つかないよ」
自信たっぷりにうなずくチサト。ウソつけ、アナタさっきついたばかりじゃないの、嘘。対する川下は答えられないだろうと思っていた質問に答えられるというチサトからの回答に、俄然興味をそそられたようだった。
「そんなの、どうやってしらべるのよ、馬鹿らしい」
表面上はそんなもの、全く興味ありませんよと言わんばかりだけれど、その実すごく興味がありそう。これは行動分析掛けるまでもない。わかりやすいなぁ。
「面食いな川下さんの好みを考慮して、社内の女性社員の行動分析の結果から偏差値65以上のいわゆるイケメンを抽出。また川下さんの行動等から、体格がよく、年齢が40歳未満に設定。結果5名該当したよ」
パラパラっと画面上に男性社員の顔写真が出てくる。何気に失礼なワードを差し込んでくるチサトのベースは誰が作ったんだろうと考えてから、秒で須貝の顔が思い浮かんだ。何をか言わんや。
けれどよく考えてみれば、こうやってこの人と同じ画面を並んで見るなんて初めての経験。まずありえない組み合わせだ。
「川下さん、意外と年上イケるタイプなんですね」
「……よけいなお世話よ」
横目でチラリと彼女をみても、画面から目を外さず素直な返事を返してきた。
……あれ、これって意外と真剣に見てる?
そうこうしているうちに、彼女の理想に近しい男性が絞り込まれてきた。ついには。
「それぞれの男性の行動等から、このうち特定のパートナーの女性が居ない人物は以下の二名。accuracyは82.2。まあまあ当たってると思うよ」
「えっ、上西くん、彼女いなかったっけ?」
上西とは設計部のイケメン四天王のナンバー2だ。ちなみに1位は人事の女王様にゲットされた。年上のやり手課長様と結婚した彼は、意外と計算高いのかもしれない。女性陣も結婚を知ったときには相手が相手なのでただ指をくわえて黙るほかなかったとか。興味ないから詳しいことは知らないけど。
「本人発信のメール本文に関係解消をにおわせる内容が2週間前から、また3日前からは社内SNSなんかで20代独身女性社員とのコミュニケーションが有意に増えてるよ」
「そういや一昨日辺りから会話が増えてるわね……」
顎に手をやり何事か思索にふける川下。
「よーし、じゃ上西くんでいってみようか」
勢いよく身体を起こすと腕を組んでニヤリと笑った。これはもう、獲物を狩る肉食獣の表情。しかしその直後チサトが冷水を浴びせる。
「でも残念ながら川下さんは、彼らの恋愛対象とはなりえないとおもうな」