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1-1 きっかけは飛ばし記事

ご覧いただきありがとうございます。


本作品は以前カクヨムで投稿していました「調教師すみれと、無垢なココロが見る夢」の改稿版となります(現在は非公開)。少しづつ変わっているところがあるので、以前お読みいただいていた方にも読んでいただけると嬉しいです。


初めての方、ありがとうございます。本作品は約10万文字の完結作です。

ごゆっくりと読んでいただけると嬉しいです。


それでは、よろしくおねがいします。

 ここは本当に、同じお台場なのか。


 何なんだろう? この妙ちくりんな逆三角形の建物は。そして周りの人たち。

 みーんなスーツ。スーツ。またスーツ!

 スーツのオジサンたちが妙ちくりんな建物の根っこにどんどん吸い込まれていく。


 ヴィーナスフォートには何度か来たことはある。アウトレットモールに友人ときて、いろんなクルマを試乗して遊んだ。けれどここは初めて。ゆりかもめでたった一駅先だよ? なんでこうも違うの?


 そして改めて自分の格好を見おろす。

 フラミンゴみたいな色を気に入って買ったワンピースにインディゴのデニムジャケット、パイソンのローファーに切りっぱなしのレザートートという出で立ちの私。場違い感半端ないんだけれど。ジャケットをつまむと、思わず苦笑いがこぼれた。


『AI・機械学習ソリューション展示会』


 大きな看板に鮮やかに描かれた文字を見上げ、ため息をつく。

 ここに書いている文字の意味すら分からない私に、社長は一体何を期待しているの……。



 ――昨日のお昼すぎ、私は社長に呼びだされた。

 部屋に入ると一際立派な椅子に腰掛けた社長と、さっそく目が合った。


「おお、来たな。……働き方改革。君も言葉くらいは知っとるだろう。わが社も取り組まねばならん。現在頭打ちになっている売上向上と残業時間の低減。これを何としても実現したい」


 社長はくるりと椅子をまわす。キュイッと椅子が鳴いた。


「ワシはこの課題は、AIで解決可能だと考えている。AI、知っとるか?」

「え、ええ。言葉だけは」


 ふん、と興味なさそうに社長は鼻を鳴らした。ふと机を見れば今日の新聞が置かれている。大見出しは『大手鉄鋼、AIを活用した働き方改革を実現』――なるほど、筋が読めた。


「というわけで野路(のじ)君。明日は東京ビッグサイトの展示会に行ってきてくれ。で、いいAIを一つ、買ってきてくれ」


 そんな、スーパーの総菜を買うみたいに気軽に。


「そ、そんな簡単に」

「なに、そんなに高いものでもないだろう。せいぜい、そうだな。十万くらいか? で、君のパソコンにインストロール(・・・・・・・)すればいいんだろ?」


 インストールです、社長。

 そんな心の声をしってか知らずか、話は終わったとばかりにタバコに火をつけた。


「しゃ、社長。確か先月、社内は全面禁煙にされたんじゃ」

「あ? ……この部屋は別なんだよ。じゃ、頼んだよ。報告は月曜日の朝でいいから」


 ちなみに今日は木曜日だ。報告書は土日に書けということか。心の中でため息をつく。


「あ、あと、君、有給残ってるだろ。有給とって()()()()()から、それで行ってくれ。最近取得させろって、お役所がうるさいからな」

「……失礼します」


 タバコをくわえながら下手くそなウインクを寄越す社長を尻目に、部屋を後にする。

 それからの仕事はエクセルのマクロを作る傍ら、AIとはなんぞや? というウェブページを巡回することとなった。


 有給申請を上司に回したら、露骨にいやそうな顔をされて少しへこんだ。



 そして翌日。そういう理由で私はビッグサイトに来た。

 そんな私にいきなり試練は訪れるのだ。

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