翔ぶが如く! 9
翔ぶが如く! 9
は⋯腹が⋯
腹が破裂する⋯
「ちょ⋯ツッチー⋯待って⋯走れねー⋯」
ツッチーを見ると、ツッチーも顎が上がって苦しそう。
「な⋯何だ⋯うるせーよ!⋯走れ!オラッ!」
絞り出すように言った。
「いや⋯無理!」
こっちはもう限界。
足を止めてゼーハーゼーハー息を吸う。
食べてすぐだから胃の中身がシェイクされた気分。
横っ腹も痛い。
ツッチーも少し先で止まり、空に向かってゼーハーゼーハー息をしてる。
「ツッチー⋯隠れよう⋯」
「だな⋯」
即決
路上駐車している車と建物の壁の間に滑り込んで、2人してドスンと腰を下ろす。
ゼーハーゼーハー
追ってくる気配は⋯しない。
上手いことやり過ごせたかな。
問題はここからどうやって帰るかだ。
2人とも帰る方向は同じで、ここからだと警察との遭遇率が高い場所なのだ。
でも、遠回りして帰ってもそんなに変わらないしな⋯
などなど考えていた。
息が収まった途端だった⋯
「エースケ!テメェさっき殴りやがったな!」
「はぁ?」
いきなり振りかぶって殴ってきた。
が、振りかぶってくれたのでかろうじてよける。
「バッ!バカ!オメー状況わかってんのか?」
「はぁん?しらねぇなぁ!」
今度は振りかぶらずに、胸元に引いた拳が一直線で飛んできた。
スパァン!
鼻から頬骨にかけて見事に入った。
ただ、座っていて手打ちなのでそれほどは効かない。
幼稚園、小学校と一緒に育ってきて、大体の性格は知ってるつもりだったけど、今わかった。
こいつ本物のバカだ!
「オラァ!」
3発目が飛んでくる。
合わせてこちらも手を出した。
相打ち。
お互い上半身が後ろに弾かれてのけぞる。
目を合わせて、ヨーイドンみたいにポカスカポカスカポカスカポカスカはじまった。
何発目かでツッチーがまたも大きく振りかぶって殴ってきたので、それをよけてこちらの体を覆いかぶせて動きを止めた。
「オメーは大バカだな!」
「あぁん!コラっテメー!離せよ!」
「離すか!このバカ!」
「離せ!手ぇどけろ!」
「離さねえよ!さっきなぁ、腹叩いたのは逃げる合図だったんだよ!」
「あぁん!」
「よく聞けよ!さっきオメーはポリに気付いてなかったから逃げようって合図しただけなんだよ!」
「んっ?」
「それを勘違いしやがって飛びかかってきてよー!」
「んっ?」
「お前⋯本当にバカだな⋯」
ここで力を抜いて体を離した。