表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翔ぶが如く!  作者: 凡栄
6/10

翔ぶが如く! 6

翔ぶが如く! 6




さて、鼻はまだ痛いけれど、こちらもいよいよメインに取り掛かろう。


まだ生玉子のみずみずしさが残る主役の「具」


端の方から具を少し持ち上げると、玉子汁がご飯に染みているのが確認できた。


左手で丼を持ち一気に口へ頬張ると、牛丼本来の味と香りが広がって、それを玉子の香りが柔らかく包んでいる。


「うんめぇ〜⋯」


思わず声が出る


「だろう!だろう!玉子で正解だったろ〜」


眉毛をピョコピョコ動かしながらツッチーが聞いてきた。


「うん!大正解だね〜」


2人してニヤケ顔。


肉と玉ねぎ、紅ショウガと七味、そして汁の染みたご飯が渾然一体となり、口の中から鼻を抜けて、頭の天辺にある「満足ボタン」を連打する。


箸の動きが止まらない。


ワシワシワシワシと食べ進んで、米粒を集めて流し込み完食。


「ぷぁ〜美味しかった!」


少し早く食べ終わっていたツッチーは水を飲みながら


「シシシシッ、美味かったな!」


と、カウンターに両肘を乗せながら笑った。


少しお腹は足りなさがあったけど大満足である。


ふぅ〜っと息をして天井を眺めていたら、チョンチョンとツッチーが肩をつついてきた。


「んっ?なに?」


と聞くと


「これこれ!」


そう言いながら、右手の人差し指と中指を立てながら口の前で投げキッスのように動かしている。


「え〜もう?」


「おぉ!これこれ!」


「ちょっと待ってよ〜、余韻に浸ろうよ〜」


「いやいや!ほれっ!ほれっ!」


投げキッスの動きが早くなる。

ニヤケ顔の眉毛もまん丸になっている。


「ちょっと〜、食休みって言葉があるじゃない。もう少し待ちなよ〜」


そう言うと、さらに投げキッスが激しくなった。


「ん〜待てない!」


眉毛のピョコピョコも激しくなってるし。


「じゃあお勘定言うよ」


「おぉ!ほれっ!ほれっ!」


「ツッチー⋯⋯猿みたいだよ⋯」


怒るのかと思ったら、ツッチーはウキャキャキャキャ⋯と笑い出した。

本当に猿みたいだ(笑)


「すみません、お会計お願いします」


店員さんに伝えると笑顔でこちらへやって来る。


「はい、じゃあちょうど千円ね」


そう言われてツッチーを見ると、店員さんを見ながらニヤニヤしている。


⋯嫌な予感⋯

まさかね⋯逃げる気じゃないよな⋯


腰から下にグッと力を込めた、その時


「千円?千円だよね?」


そう言うと右手を胸ポッケに入れて千円札を取り出した。


「はい〜!ピッタンコ千円!」


シワを伸ばすような仕草でカウンターに擦り付けた。


店員さんは笑顔のままで


「はい、ありがとうございます。悪いね〜貴重な千円もらっちゃって」


と、若者2人の懐事情を心配してくれた。


「いゃ〜、この千円は牛丼食べるための千円だったから!OKっス!」


(ものは言いようだな)と思いつつも笑いながら頭をうんっうんっと縦に振った。


「じゃあ、ごちそうさまでした!」


そう言って、サッシの扉を開ける。


「どうも!ごっそさんでしたー!」


後ろのツッチーも手をあげながら言った。


扉を閉めながら店員さんの


「ありがとうございました」


の声で送られた。


「エースケ!こっち!こっち!」


ツッチーが牛丼屋の裏側、東京クラブとの間にある路地を指差しながら歩いていった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ