始まりは全滅から
初投稿です。
長いお話になりそうですがよろしくお願いします。
私は高堂永久、もうすぐ22歳。
都内の個人病院に勤務する准看護師。
今日はこれから夜勤だ。
ヤバイ!あのクソゲーのせいで遅れそう。
彼氏もいない一人暮らしの私は、久々に据え置き型ゲーム機のレトロRPGにハマっていたんだけど、ラスボスの魔王が、あと一歩で倒せるってところでHP全回復しやがって…。
回復アイテムを使い切り、回復役の賢者のMPもなくなって回復できなくなった勇者パーティは魔王にタコ殴りにされて全滅…。
「このクッソゲーが!」
私はコントローラーを放りだした。
「なんじゃこりゃああ!私の1時間、返せー!」
悪態をつきながらも着替えをして家を出たのだった。
よし、近道して行こう。
工事現場のすぐ脇に、細い路地があって、抜け道になっている。
私がその路地を抜けようとした時だった。
「おーい!危ないぞ!」
空から叫び声がした。
見上げると、空から鉄骨が降ってくるのが見えた。
悲鳴を上げる間もなく、視界はブラックアウトした。
ああ…これは死んだな。
ゲームでも現実世界でも死ぬなんて、ついてない。
…。
……。
…即死だったのかな?
全然痛くない。
ていうか、ここ、どこ?
真っ暗なんだけど。
上も下もわからない。もしや宇宙空間?
『うえぇぇん・・・』
誰かが泣いてる。
小さな女の子の泣き声っぽい。
でも真っ暗で姿は見えない。声だけが聞こえる。
「どうしたの?」
私は声のする方向に話しかけてみた。
「大切な人を助けられなかったの」
少女の声は答えた。
「それで泣いているの?」
「そう。何もできないから、泣くしかないの」
「何もできないって、どうして決めつけちゃうの?」
「だって私には力がないもの」
何もない空間に、少女の姿がぼんやりと現れた。
ぼんやりすぎて顔形はよくわからないけど、全体的に白っぽいというか銀色っぽい。
「力もないのに何ができるの?」
少女はこちらへ向かってくる。
「泣くこと以外になにができるの?ねえ?」
うっ、声がなんだか怖い…。
もしかして幽霊とかそっち系?
やっぱ私、知らないうちに死んじゃってたのか?
「何でもいいから、自分にできることを探すのよ」
「自分のできること…?」
「そう。私も、最初はなーんにもできなくて怒られてばかりだったよ。悔しくて毎日泣いてた。それでも、次こそは頑張ろうって思ったの。今はできなくても、頑張って続ければいつかできるようになるよ」
「私にも、何かできることあるかな…」
「あるよ」
すると、小さな女の子は急に成長し、美しい女性になった。
「これまで何人も素通りしていったけど、私と向き合ってくれたのはあなたが初めてよ」
「…あなたは、誰?」
その女性はにっこりと笑って名乗ったけど、よく聞こえなかった。
「あなたをずっと待っていたわ」
彼女はそう云って、私の手を取った。
待っていたってどういうこと…?
「あなたなら、きっと運命を変えられる」
私の意識はその手に吸い込まれ、解けていった。