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嫁が勇者に寝取られたので魔王軍と相対します

前回のあらすじ


深夜、街の住民を狩り始めたアイン。

寝ている者、逃げ惑う者、泣き喚く者、視界に入った者の命を容赦なく奪っていく。

止めに入ったリューガ達だったが、アインの圧倒的な力の前に為す術はなかった。

崩壊した街を眺める。


すでに廃墟と化したこの街に、生きている人間は俺しかいない。


街の住民を大量に殺し尽くした事で、俺の身体能力はかなり上がった。


両親の魂を喰った時程ではないが、数が数だ。


数百人の魂を喰らったから、当然と言えば当然か。


そして、嬉しい誤算が一つ。


俺は積み重なる瓦礫に向かって手をかざす。


「〈崩壊の波動(コラープスウェイブ)〉」


俺が魔力を放つと同時に、積み重なった大きな瓦礫が消し飛び、ただの更地になった。


魔法の修得。


少人数ならともかく、大人数を一人一人殺して回るのは手間がかかる。


逃げられる可能性も高い。


だが、魔法を修得出来た事で、その可能性もかなり減る事になる。


他にもいくつかの魔法を修得出来たが、効率良く使える様に練習しておく必要があるな。


『おーおー、またえげつない魔法を覚えたもんだねぇ。どんどん俺様好みに育っていくぜ。お前を見てると飽きねぇよ、ホント』


こんな事を言っているが、魔法を教えてくれたのはウルゴス自身だ。


大量の魂を喰った事で身体能力だけでなく、魔力の方も大きく上がったようで、ウルゴスに言われるがままに魔法を唱えたら修得出来ていた。


『くっくっくっ、普通は教えられても一発で出来ねぇよ。覚えた魔法が崩壊やら無差別な魔法(もの)ばかりだから、お前の憎悪や復讐心が影響しているのは間違いねぇな』


そんな物なのか。


田舎で暮らしていた俺には縁のなかった事だから、よくわからん。


『まぁ、お前が強くなる事は良い事だ。今後は俺様の手伝いは必要ないかもな?』


今回のサポートは本当に助かった。


能力を貸してくれた事といい、ウルゴスには感謝している。


『はんっ、感謝なんてされても嬉しくないね。そんな事するくらいなら、もっと俺を楽しませてくれよ? アイン』


別にウルゴスを楽しませる為にやってる訳じゃないんだがな。


俺の復讐が楽しみになるって事なら、手を緩める気はないから安心しろ。


『くっくっくっ、いいねいいねぇ。そうこなくちゃ』


嬉しそうに笑うウルゴスの声。


次は、王都を目指す。


待っていろよ、勇者(クソ野郎)






* * * * * * * * * * * * * * *






「何だ、この有り様は・・・? おい貴様! 何故人間の街がこのような事になっている!」


旅に使えそうな物資をまとめていると、唐突に声をかけられた。


声のした方を振り向くと、青色の肌をした男が立っていた。


額からは角が、背中からは翼が生えており、普通の人間でない事は明らかだ。


「魔族、か?」


「質問に答えろ! 一体ここで何があった!?」


何を興奮してるかはわからないが、随分と余裕がないな。


『人間達と争っている魔族がここに来る理由なんざ侵攻以外に考えられねぇな。さしずめ、こいつは街の戦力を偵察にきた斥候役といった所か?』


つまり近くに魔族の軍隊が来てるって事か。


勇者(クソ野郎)の居場所がわかった以上、すぐにでも向かって血祭りにしてやりたいが・・・、まだ奴と渡り合うには力が足りないかもしれない。


せっかく(エサ)が向こうから来てくれたんだ。


ありがたく喰わせてもらおうか。


「さっさと答えんか貴様! 魔王軍六魔将ヴァルネロ様の配下たるこの俺が聞いているのだぞ!」


へぇ、魔王軍の(幹部)、ねぇ。


勇者(クソ野郎)との実力差を計るのには丁度良いな。


「見ての通りだが? お前はこの状況を理解出来ない程、頭が悪いのか?」


「なんっ!? き、貴様! この俺を愚弄するか!」


少し挑発してやるだけでこれか。


魔王軍の程度が知れるな。


「事実だろう? それに六魔将だの配下だの言ってるが、要は魔王の使いっ走りの、そのまた使いっ走りじゃないか」


「・・・いいだろう。貴様の四肢を切り取り、ヴァルネロ様の御前に引き摺って行ってやる! 情報を吐いたとしても簡単に死ねると思うなよっ!!」











「ひゅ、ひゅみまひぇん(すみません)ゆるひ(ゆるし)ゆるひてくらひゃい(ゆるしてください)・・・」


俺の前でヴァルネロとかいう奴の配下が、芋虫の様に地面に這いつくばって許しを乞うている。


俺の四肢を切り取るだ何だと言っていたので、そっくりそのまま返し、ついでに翼も引き千切ってやった。


ほぼ全部の歯を折ったのは失敗だったな。


話が聞き取り難くて仕様がない。


「おい」


「ひゃ、ひゃい(はい)ほろひゃないひぇ(ころさないで)ふらはい(ください)なんれもひまふはら(なんでもしますから)!」


どうやら完全に心が折れてるようだな。


先程までの横柄な態度が嘘のように卑屈になっている。


「なら、そのヴァルネロって奴の所まで案内しろ。嫌ならこの場で殺す」


「も、もひろんえふ(もちろんです)あんないはへへ(あんないさせて)いははひまふ(いただきます)!」


翼も四肢も失った魔族の髪を掴み、引き摺って連れて行く。


さて、ヴァルネロ(勇者)ってのはどれくらい強いのかねぇ?






* * * * * * * * * * * * * * *






「なるほど、これが魔王軍か」


眼前に見えるのは、数千はいようかという魔物の群れ。


街からそう遠くない距離にいた訳だが、どうやら認識阻害の魔法を使っているらしく、遠目では確認出来なかった。


魔王軍の場所がわかった時点で、案内させていた魔族は殺した。


何か喚いていたようだが、俺の知った事ではない。


どうやら魔王軍(あちら)も俺に気付いたらしく、数匹の魔物を連れた魔族が近寄ってきた。


「何だ、お前は? どうやってこの場所まで来た?」


「ヴァルネロという奴に会いに来た。この場所は街を偵察していた魔族に聞いたよ」


俺が淀みなく返答すると、その魔族は不思議そうに首を傾げる。


「ヴァルネロ様に・・・? 全く、あやつは一体何を考えているのだ」


「さぁね。俺はこの場所に行って街の情報を話すようにとしか聞いてないからな」


「軍に関係ない者に伝令を頼むなど・・・あの横着者め。いいだろう、協力者としてヴァルネロ様の所まで案内する。どうやらただの人間ではないようだしな」


どうやら上手く騙せたようだな。


『まぁ、普通は軍に単身で乗り込もうとする奴なんていないからな。お前が暴れた所でどうにでもなると思ってんだろ』


先行して歩き出した魔族の後ろに付いていく。


それなりの地位にいる奴らしく、魔物達は自ら引いて道を開ける。


少し歩くと天幕が見えてきた。


そこに魔物の姿は見えず、魔族達が飯の準備をしてたり武器の手入れをしてたりしている。


ヴァルネロって奴はあの天幕の中にいるのか。


俺に気付いた魔族達は、こちらを気にしながらも何かを仕掛けてくる気配はない。


ウルゴスの言う通り、俺一人が暴れた所でとでも思っているのだろう。


天幕の前に来ると、流石に守兵らしき魔族二人に何用かと止められる。


「ヴァルネロ様にお会いしたい。この者は偵察に出ていたカロッサに伝令を頼まれた協力者だそうだ。取り次ぎを頼む」


あいつはカロッサって名前なのか。


始めて知ったな。


守兵の魔族の片方は天幕の中に入っていき、すぐに許可が降りたらしく、天幕の中に入れる事になった。


「ヴァルネロ様に失礼のないようにな」


そう言った魔族は天幕の入り口をくぐって中へと入る。


それに続いて中へと入ると、中央に置かれた椅子に俺よりもデカい巨躯を持つ男の魔族が鎮座していた。


額から生えた角はカロッサよりも二回り程大きく、口からは肉食獣を思わせる牙が見えている。


蒼いマントと共に着込んだ重厚な鎧は、力自慢の戦士であっても持ち上げるのがやっとだろう。


更にヴァルネロの傍らに突き刺された、その巨躯をも越える巨大な大剣。


その巨剣に身体を預けるようにもたれ掛かったヴァルネロからは、強烈な威圧が放たれている。


両隣に控えている護衛の魔族達も萎縮してしまっているようだ。


なるほど、これが六魔将か。


確かに周囲の魔族達とは格が違う。


「ふむ、ワシの威圧を受けて平然としておるか。確かにただの人間ではないようだな」


俺を睨みながらも感心したような声を出すヴァルネロ。


「こ、こら貴様! ヴァルネロ様の御前だぞ! 早く跪かんか!」


いつの間にか跪いていた案内役の魔族が慌てたような声を出す。


「断る」


「なっ!?」


「はっ!?」


「・・・ほぉ?」


俺の言葉に案内役と護衛の魔族は驚愕し、ヴァルネロは目を細める。


「俺はアンタの部下ではないし、部下になりに来た訳じゃない。アンタに対して跪づく必要はないね」


「ぶ、無礼な! 貴様、生きて帰れると思うなよ!」


案内役と護衛の魔族が俺に向かって武器を構える。


殺気が放たれるが、ヴァルネロの威圧に比べれば仔猫の威嚇だな。


「がーっはっはっはっ!!」


「「「ヴァ、ヴァルネロ様!?」」」


突然笑い出したヴァルネロに動揺する魔族達。


何が面白いのか、一頻り笑ったヴァルネロは俺を見据えて獰猛な笑みを浮かべる。


「面白い。軍に囲まれ、更にはワシを前にして怯える所か焦りの欠片も見せぬか。その様子だとカロッサの奴からの伝令というのも嘘だな?」


へぇ? 俺の態度からそこまで見抜くか。


『脳筋みてぇな見た目の癖に頭が回るじゃねぇか。・・・いや、勘か? どの道一筋縄ではいかなそうだぜ? どうすんだ? アイン』


どうもしないさ。


今まで通り、殺して喰らうだけだ。


「あぁ、四肢を切り取ってアンタの前に引き摺っていくと言われたんでな。逆にその通りにしてやってこの場所まで案内させたよ」


「何っ!? 貴様、カロッサを━━━」


「殺したぜ? 用済みになった奴を生かしておく程甘かないんでね」


「き、貴様ァァアッ!!」


激高した案内役が俺に襲い掛かってくる。


「待たぬか!」


しかし同時に発せられたヴァルネロの命令に、その動きがピタリと止まる。


「こやつがカロッサを討った事は間違いないだろう。しかし、カロッサと戦った筈のこやつには傷一つ見当たらぬ。お前の気持ちもわかるが、カロッサと同程度の実力しか持たぬお前ではこやつには勝てん」


「し、しかしヴァルネロ様! カロッサは・・・カロッサは私の大事な友でした! ヴァルネロ様は、それを我慢しろと(おっしゃ)るのですか!?」


「そうだ。無駄死には許さん。カロッサは弱いから死んだのだ。魔族である以上、勝負の結果に文句をつけるな」


「そん、な・・・。くっ」


ヴァルネロの言葉に項垂れる案内役。


「だが・・・」


ヴァルネロから発せられる強大な威圧が、膨大な殺気へ変化する。


「カロッサを圧倒する程強い貴様に興味が出てきた。丁度、街を潰すだけの任務に退屈しておったのだ」


椅子から立ち上がったヴァルネロは、巨剣を引き抜き俺に突き付ける。


「少し付き合ってもらおう。ワシをガッカリさせてくれるなよ? 若造」

明日の休日が急遽今日に回ってきたので、急いで執筆しました。

多くの感想や評価、御指摘を頂き、読者様方には感謝の念に堪えません。


感想の方にもあった質問なのですが、本編や嫁・勇者視点のエピソードを含めて十万文字くらいで終われればと思っております。


お時間があれば、評価や感想を書いて頂ければ幸いです。

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