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嫁が勇者に寝取られたので冒険者達を利用します

前回のあらすじ


勇者を探す旅の途中で、ウルゴスから借り受けた能力について考察を行うアイン。

たまたま戦闘中の盗賊団と冒険者達を見つけた彼は、能力を検証するべく戦場へと躍り出る。

盗賊達を残らず殲滅し、その矛先を冒険者達に向けるアインだったが・・・?


お前達は、どうやって殺して欲しい?


俺を味方だと思い、すっかり油断して近寄ってきている冒険者達へと向き直る。


『くっくっくっ。アイン、俺様からちょっとした提案があるんだがいいか? 勿論気に入らないのであれば、無視してくれていい』


ウルゴスか・・・何だ?


『何、大した事でもないんだが、冒険者達(こいつら)を生かしておいて利用した方がいいんじゃないかと思ってな』


利用する、とは?


『お前は自覚がないようだが、自分の見た目を思い出してみろよ。その姿で街にでも行けば警戒される事は間違いないぜ? 冒険者(こいつら)を信用させて街中に侵入してしまえば、後はどうにでもなる。狩り放題、だろ?』


なるほどな。


確かに俺の容姿は普通とは言い難い。


身体がデカいのと白髪なのはどうとでも言い訳出来るだろうが、黒く染まった白目の部分は致命的だ。


人間だと言っても信用されないだろう。


強行突破も出来なくはないだろうが、せっかくの(エサば)なんだ。


出来る限り喰い逃しはしたくない。


ここは大人しくウルゴスの提案に乗るとしよう。


『強行突破するなら、それはそれで面白そうだけどな』


まだ何か言っているウルゴスはとりあえず置いておく。


近寄ってきた冒険者達に声をかける。


「無事だったようで何よりだ。かなり劣勢に見えたから、つい手を出してしまった。こんなナリをしているが、一応人間だ。警戒しないでくれると助かる」


以前の対応を思い出し、不快にならない程度に演技する。


それが上手くいったのか、冒険者達の表情は落ち着いた感じになっている。


「いや、命の恩人を警戒するなんて失礼な真似はしないよ」


ウルゴスの提案がなければ、この場で殺していたがな。


「そうですね。人を見た目で判断する程、愚かな事はないですよ」


俺の内面は見た目通りだ。


「そうですよぉ、と言うよりぃ、おにーさんはカッコイイですよぉ?」


虫酸が走るからやめてくれ。


鳥肌が立ちそうになるのを我慢しながら三人と話を聞いていると、片方の男が少し前に出てきた。


「僕はリューガ。彼がトリス、彼女がメリア。三人で冒険者として活動してるんだ」


リューガと名乗った青年は剣士のようだ。


引き締まった身体付きを見るに、本来の戦闘スタイルはスピード重視か。


今回は仲間を庇いながら戦っていたようだし、力を十全に発揮出来なかったんだろうな。


単身で斬り込んでいれば、あそこまで追い詰められる事はなかっただろうに・・・情は捨てきれない奴のようだ。


もう片方の男がトリスか。


こいつは弓士らしい。


矢が尽きてるようでリューガに庇われていたな。


リューガと同じく、スピードで相手を撹乱するのが本来の戦い方だろう。


女がメリア、か。


間延びした喋り方が俺の神経を逆撫でする。


魔導士の様な格好だが、囲まれていた時に魔法を唱えてなかったな。


魔力切れか?


男二人が盾役に向かない事を考えれば、こいつもある程度は動けるのだろうが・・・見た目からは想像がつかんな。


「アインだ。厄介な呪いをかけられて、この有り様だ。呪いを解く為に術者を探して旅をしている」


三人を分析しながら考えていたが、即興にしては中々良い理由付けじゃないだろうか。


怨みを晴らす為に(呪いを解く為に)勇者(術者)を探して旅をしているってか? ニュアンス的には嘘じゃねぇな。皮肉も効いてて面白いと思うぜ? アイン』


・・・別に狙ってた訳じゃねぇよ。


「やっぱり。呪いでもない限り、人間の外観はそこまでの変化はしないよね」


「どんな呪いかはわからないですけど、何かしらのデメリットを抱えてあれ程強いんですか」


とりあえず、納得はしたようだな。


流石に会ったばかりの人間に立ち入った事を聞く奴なんてそうそう━━━


「えーっと、アインさん、それはどんな呪いなんですかぁ?」


━━━いやがった。


さて、嘘呪いについては一応考えているが、ここは考え込むフリをして沈黙で返そう。


普通の人間であれば当然・・・。


「こ、こらメリア! アインさんに失礼だろ! すみません、アインさん」


「そうですよ。誰にでも話したくない事の一つや二つはあるものです」


こうなるよな。


「気にしないでくれ。ただ、あまり気持ちいい話じゃないんでね。必要以上の事は話したくないんだ」


「デリカシーのない奴で本当にすみません」


「あれぇ? 何で私が悪いみたいになってるんでしょうかぁ?」


・・・もう女の方は無視だ。


「で、だな。この先にある街に行きたいんだが、この通りの見た目なんで見知らぬ街に行く時は中々入れてもらえない事が多いんだ。無理にとは言わないが、良かったらリューガ達に口添えを頼めないか?」


「わかった。それくらいなら任せてよ」


「アインさんに助けてもらったと説明すれば、大丈夫だと思いますよ」


「私達にぃ、任せて下さぁい」


さて、それじゃあ(エサば)まで同伴させてもらう事にしようか。






* * * * * * * * * * * * * * *






街に辿り着いたのは、翌日の夕暮れ刻。


リューガ達の目的は盗賊団の拠点調査だったらしいのだが、せっかく倒したんだからとその証拠品を集め、仮眠をとってから出発したせいで到着までに時間が掛かってしまった。


道中、仲良くなったと勘違いした三人組に色々と聞かれたが、矛盾しない程度に適当な答えを返しておいた。


案の定、街へ入ろうとすると門兵に止められたが、リューガ達のおかげで悶着を起こす事なく通る事が出来た。


俺一人だとこの場で戦闘開始だったかもしれんな。






最初に案内されたのは冒険者ギルド。


助けてもらった礼をしたいが、盗賊の一件(今回の仕事)の報酬を貰わなければ金が足りないらしい。


ギルドに入った途端、俺に視線が集中するが、軽く睨み返してやると慌てて目を逸らしやがった。


さて、リューガ達は受付けに並んでいるようだが、報告が終わるまでは暇だな。


ゆっくりと周囲を見渡し、ギルドの内部を観察する。


存外隠れられそうな所が多い。


受付けの奥に通路が見えるが、恐らく避難経路だろう。


施設の構造自体が攻めにくく守りやすいように造られている。


流石は冒険者ギルドって所か?


そんな事を考えていると、リューガ達に対応していた受付嬢と目が合う。


リューガ達も、しきりにこちらを見ながら何か言っているようだ。


しばらくリューガ達と話していた受付嬢は、一度頭を下げると二階への階段を登って行ってしまった。


・・・面倒事の予感がする。


『その予感は当たってるぜ。俺様が保証してやろう』


そんな保証はいらん。


しばらくウルゴスと話していると、先程の受付嬢が階段から降りてきた。


受付嬢の後ろには初老の男がいる。


その男はリューガ達に声をかけた後、こちらに歩いてきた。


「君が盗賊達を一人で殲滅し、リューガ達を助けたという男かね?」


「あぁ、そうだが?」


男の質問に肯定で返すと軽く頭を下げてきた。


「ありがとう。君のおかげで未来ある若者達の命が救われた。君がいなければ、彼等が生きて帰ってくる事は難しかっただろう。ギルドマスターとして礼を言う」


「感謝されたくて助けた訳じゃない。俺の頼みも聞いてもらったし、お互い様だ。アンタが頭を下げる必要はない」


その救われた命は俺が奪うからな。


それよりも、ギルドマスターが直々に来ておいて感謝する(それ)だけって事はないだろう?


「君がそう言うのならここまでにしておこう。ところで君は旅の途中だと聞いたが、どこかのギルドに登録しておるのかね?」


「いや、何分このナリなんでね。どこに行っても気味悪がられちまってギルドの登録なんてした事がない」


あーあー、目ぇ輝かせちまって。


「それならば我がギルドに登録してみないかね? 君の様な人材は━━━」


「断る」


さっきまでの期待に満ちた表情が、落ち込んだモノへと変わる。


ギルドマスターって、ここまで顔に感情が出やすくても務まるモノなんだろうか。


「リューガ達に聞いてるかもしれないが、俺は呪いをかけた術者を探して旅をしている。情報のない場所に拠点を置くつもりはないんだ」


「そ、そうかね? 残念だが仕方ないね」


ギルドマスターはがっくりと肩を落として場を後にした。






その後、報告を終えたリューガ達には報酬が入ったらしい。


拠点調査だけでなく、討伐までしてきたのでかなり多くの金銭が入ったらしい。


“アインさんが倒したのだから”と、討伐分の報酬金を渡してきたので、その半分+“情報が集まる酒場で一食分奢り”で手を打った。


金は多少は必要だが、ないならないでどうとでもなるしな。


そんな訳で、リューガ達と俺は街で一番人気の酒場で食事をしている。


街一番と言うだけあって店員の態度も良く、店内も清潔に保たれている。


食事もしっかりした物なのだが・・・。


「アインさんどうしたんですか? あまり食事が進んでないようですが」


「あぁ、ちょっと考え事をしていた。呪いの情報がなかったから、次はどこに向かおうかと思ってね」


当然、嘘だ。


呪いの話自体が嘘なのだから。


飯が、“不味い”。


食えない訳ではないが、どうしても嫁と食事をしていた頃を思い出し、食べる物全てが不味く感じてしまう。


リューガ達を助ける前に食っていた木の実や焼いただけの肉や魚は大丈夫だったんだが・・・。


あまり食わないのもおかしいかと思い、口に入れた物をほとんど噛まずに飲み物で流し込んでいく。


リューガ達も腹が膨れたようで、食休みに適当な雑談をしていた際、俺の耳に“最も欲しかった情報”が聞こえてきた。


「おい、聞いたか? 勇者様の噂」


心臓の鼓動が、早くなる。


「あー、聞いた聞いた。王都の方に戻って来てるらしいな」


脳裏に浮かぶのは、勝ち誇った表情で嫁を連れ去って行った勇者(クソ野郎)の姿。


「また魔王の幹部を倒したらしいぜ? たまには自分の国でゆっくり休んでも(バチ)は当たらねぇよなぁ」


瞳孔が開き、呼吸も荒くなり、冷たい汗が頬を伝う。


「今度、凱旋パレードやるって話だったから、しばらくは王都にいるんじゃねぇか?」


頭からは冷静になれと命令を下しているはずなのに、感情の暴走を抑える事が出来ない。


リューガ達や他の客に表情(かお)を見られないように机に突っ伏す。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ミ ツ ケ タ

6/6 ジャンル:ヒューマンドラマ[文芸]にて日間ランキング1位、総合ランキング9位を頂きました。


ちょっとこれ嬉しすぎるんですが夢じゃないですよね・・・?

嬉しすぎて舞い上がると同時にプレッシャーが凄すぎてヤバいです。テンパってます(・∀・;)


感想の方も、読者様が緑黄色野菜(パセリ)の作品を読んでどう感じてるかを。

読者様の意見からは、どういった点が気になるのか、また、どういった展開が可能なのかを勉強させて頂いています。

応援や感想は本当に嬉しいです。

アイン君の復讐が完遂出来るように頑張ります!


お時間があれば、評価や感想を書いて頂ければ幸いです。

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