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嫁が勇者に寝取られたので俺ガ俺デナクナリマス

前回のあらすじ


勇者が拠点を置く王都に辿り着いたアイン。

守備兵達を殺し、勇者の情報を聞き出したアインは教会へと向かう。

潜入した教会内で発見したのは、勇者と嫁の姿だった。


※《胸糞展開注意報発令中》につき、そういった展開が苦手な方は御注意願います。

その姿を捉えた瞬間、俺の頭には嫁との思い出が次々と、走馬灯のように描かれる。


そして、最後に“嫁が勇者(クソ野郎)に奪われ、俺の元を去ったあの日の光景”が鮮明に浮かび上がった。


全身の血液が沸騰する様な、それでいて感情が凍り付く様な感覚に襲われた俺は、()()()()()()飛び降りた。


「〈崩壊の破槌(コラープスペダン)〉」


降下中、勇者(クソ野郎)に向けて〈崩壊の破槌(コラープスペダン)〉を放つ。


至極色の魔力が巨大な塊となり、勇者(クソ野郎)を中心に、その周囲諸とも押し潰す。


「何ッ!? くっ!!」


「じゅべっ!」


「あぎっ!?」


「ぐぶぶっ!」


筈だったのだが、潰れたのは勇者(クソ野郎)の周囲にいた教会の関係者達だけ。


残念ながら、本命には避けられてしまった。


嫁の立ち位置には余波すら届かないように計算して撃ち込んだのだが、それにしても微動だにしないのは一体どういう訳だろうか?


・・・。嫁の事も気になるが、今は勇者(クソ野郎)の始末が先だ。


体勢を低くして、転がるように〈崩壊の破槌(コラープスペダン)〉を回避した勇者(クソ野郎)は、潰れた教会の関係者達と俺の姿を交互に見やる。


ただの肉塊になった教会の関係者達を助ける術はないと悟ったらしく、大袈裟に頭を振った後、勇者(クソ野郎)は忌々しげに俺を睨み付けてきた。


「皆さん・・・何て事を・・・。どこの誰だか知らないが、お前は絶対に許さないぞ!」


「はっ! 白々しい演技はやめろ。どうせ、そいつらの事も自分を持ち上げてくれる、都合のいい手駒くらいにしか思ってないんだろ? それに、絶対に許さないだと? それはこっちの台詞だ。 お前は俺の顔を忘れているようだが、俺は忘れていない。お前が俺の最愛の()を奪ってから、一日足りとも、一刻足りとも、一瞬足りともお前の存在をを忘れた事などない。 お前の善人ぶった演技に虫酸が走る。そうやって、自分以外の全てを騙していたんだろ?」


「・・・?」


訝しげな表情をしていた勇者(クソ野郎)だったが、俺の顔を見ている内に段々と怒りの感情は消え、面倒臭そうな表情になっていった。


「あぁ、誰かと思えばアインさんじゃないですか。その節はどうも。随分と姿が変わってたからわかりませんでしたよ。わざわざあの辺鄙(へんぴ)な村から王都(ここ)までやって来たんですか? ご苦労な事で・・・村人ってよっぽど暇なんですねぇ?」


明らかに見下した目で挑発してくるが、奴が腰に当てた手に魔力を集中しているのはわかっている。


「貴方の奥さん、とても具合が良くてかなり楽しませて貰いましたよ。おかげで魔物退治で溜まったストレスも発散出来たましたし、感謝してます。まぁ、最近はあんな感じで壊れちゃったみたいだから、飽きてきたんですけど」


「・・・殺す」


その言葉は俺自身に対する挑発や侮辱なんかよりも、怒りを抑えきれない物だ。


何かを仕掛けてくる事を承知で、奴に向かって全力で殴り掛かる。


「単純だなぁ・・・。〈聖竜王の光星(ヴェルセウス・ノヴァ)〉」


聖竜王の時と同じく、勇者(クソ野郎)の周囲に無数の魔法陣が現れ、そして霧散した。


「・・・は?」


すでにこの世にいない聖竜王(もの)の力を借りようとしても無駄だ。


勇者(クソ野郎)は状況を飲み込ず、間抜け面を晒して呆けている。


俺は渾身の力を込め、奴の間抜け面を目掛けて拳を振り抜いた。


〝ゴヅッ〟


「ぐぶっ!?」


拳に伝わってきた感触は、あのヴァルネロの堅さを上回る物だった。


だが、これは予想の範囲内。


ヴァルネロ達の様な魔王軍の幹部達とやり合って連戦連勝を重ねているんだ。


この程度の攻撃でどうにかなる訳がない。


余程油断していたのか、踏ん張る事が出来ずに立ち並ぶ長椅子へと突っ込んだ勇者(クソ野郎)は、それらを次々と薙ぎ倒していく。


壁に激突する寸前で、四肢を床について勢いを殺した奴は、ようやく体勢を立て直した。


こちらを警戒しながら、ゆっくりと立ち上がった勇者(クソ野郎)の顔は、少し驚いたといった表情(モノ)に変わっていた


「驚きましたね。どうやってそれ程の力を手に入れたかはわかりませんが、まさか僕に一撃入れるだけではなく、傷を負わされるなんて思ってなかったですよ。しかし魔法が不発とは・・・。一体どういう訳でしょうか? 」


「〈聖竜王の光弾(ヴェルセウス・ノヴァ)〉。空間に魔法陣を形成して無数の光弾を撃ち込む魔法、だったか?」


「・・・アインさんにこの魔法を見せた事はなかったはずですが?」


勇者(クソ野郎)の目付きが、幾分か厳しいモノになる。


「つい最近殺した聖竜王が得意気に使ってたよ。すでに死んでる奴の力は借りようがないだろ?」


「アインさんがヴェルセウスを殺した・・・? そんな事が出来る訳が・・・。いやしかし現に〈聖竜王の光弾(ヴェルセウス・ノヴァ)〉は発動しなかった。まさか、本当に・・・?」


何やら俯き気味でぶつぶつと呟いているようだが俺には関係ない。


聖竜王(ヴェルセウス)に返したのと同じ魔法をくれてやる。


「〈崩壊の連弾(コラープスボルツ)〉」


「えっ━━━クッ!!?」


至極色の矢弾が、降り注ぐ雨の如く勇者(クソ野郎)へと襲い掛かるが、奴は辛うじて回避を続けていく。


俺はそのまま〈崩壊の連弾(コラープスボルツ)〉に奴を放ち続ける。


そろそろ次の一手をと、勇者(クソ野郎)の逃げる先を目で追う━━━ッ!?


「ちっ!」


勇者(クソ野郎)の逃げる先には、嫁がいた。


流していた魔力を止め、〈崩壊の連弾(コラープスボルツ)〉を霧散させる。


しくじった。


勇者(クソ野郎)を殺す事に気を取られ過ぎて嫁の位置確認を怠った。


そうこうしている内に勇者(クソ野郎)は嫁の背後へ回り、盾にする形で自分の前に突き出す。


奴は追撃を止めた俺に、ニヤニヤと胸糞悪くなる笑みを向けてきた。


「あれあれ? どうしたんですか? アインさん。せっかく僕を倒せるかもしれないチャンスに攻撃をやめちゃったりして。もしかして彼女を気遣ってるんですか? いやぁ、アインさんてば優しいなぁ」


明らかに俺の反応を見て楽しんでやがる。


一応、今すぐにでも嫁を助け出す方法はあるが、それは最終手段だ。


出来る事なら、使いたくない。


「はっ、女を盾にしないとまともに話も出来ないのか? “勇者様”が聞いて呆れるな?」


「あははは~。挑発には乗りませんよ? 僕を傷付ける戦闘能力に先程の魔法。どうやら聖竜王(ヴェルセウス)を倒したのも本当みたいですから、油断は出来ませんね。今の所、人目もありませんから、正々堂々戦う必要ないですし」


嫁を人質にとって余裕が出来たのか、勇者(クソ野郎)は先にも増して饒舌になっている。


嫁は勇者(クソ野郎)に盾代わりに扱われているにも関わらず、ピクリとも抵抗せずにされるがままだ。


「おや、彼女の事が気になりますか? そうですよねぇ、らっぶらぶの夫婦でしたもんねぇ? ほらほら、壊れちゃったとは言え、最愛の人との再会ですよ? そんな怖い顔してないで、もっと嬉しそうにして下さいよ~」


今すぐにでも飛び掛かりたくなるが、奥歯に亀裂が入る程に歯を喰い縛り、その衝動を抑える。


勇者(クソ野郎)相手に問答などしたくはないが、嫁を助け出す方法を考える為に時間がいる。


俺は胸の奥底から沸き上がり続ける、黒い感情を無理矢理に抑えつけながら、勇者(クソ野郎)へと問い掛けた。


「一つだけ、聞かせろ。あの時、何故俺の嫁を選んだ?」


どんな理由であろうと、勇者(クソ野郎)を殺す事に変わりはない。


聞く必要もないし、聞いた所で勇者(クソ野郎)の口から出た話など信用する事も出来ない。


「なぁんだ、そんな事ですか。そうですね~、一言で言えば“そそられた”から、ですよ」


俺が反応を返した事が嬉しかったのか、勇者(クソ野郎)は不快な薄ら笑いを浮かべながら話し始める。


「あの日は村の女性達を味見したらさっさと立ち去ろうと思ってたんですけどね? 他の女達が“勇者様の御命令なら”とか、“勇者様に抱かれるなら”って股を開いていく中で、彼女だけは頑なに拒絶したんですよ。村長でさえ村に魔物をけしかけてやろうか?って言ったら黙ったって言うのに。僕を睨み付けながら“やればいいじゃないですか”って返されたんですよ?」


村長の話は正しかった訳か。


あの日、嫁の様子がおかしかったのは、やはり勇者(クソ野郎)に無理矢理犯されたから━━━











「だから、ね? 言ってやったんです。“じゃあ、お前の夫を殺してやろうか?”ってね」











〝ドクン━━━ッ〟


心臓の鼓動が、一際大きく跳ねる。











「そしたら彼女、みるみる顔を青ざめさせちゃって! 消え入る様な声で“何でも言う事を聞きますから、それだけは”だってさ! 犯してる最中も君の事ばかり!“あなた、ごめんなさい、ごめんなさい”って続けるんだよ! ホント、最高だよね!」











身体中のあちラこちらで、血液の流レが速くなっていくのを感じル。











「何回も犯してる内に段々と抵抗が弱くなって、自分から奉仕もするようにもなってたんだけど、村から離れた途端にまた拒絶し始めちゃってさぁ! まぁ、力も弱いし無理矢理犯してたんだけど、それはそれで楽しめたし、ね?」











自分の武勇ヲ誇るように語ル奴を見テイるだケデ、俺を支配してイタドス黒い感情すらヲモ越えル何かが、俺を呑ミ込む為ニ這い出て来ヨウトしテイる。











「だけど、見ての通り壊れちゃったみたいで? 最近は犯しても何の反応もしなくなっちゃったんですよねぇ。つまんなくなってきたからそろそろ捨てちゃおうかなぁって思ってたんですけど━━━」











俺ガ、俺デナくナル感覚。











「━━━今、アインさん(愛する夫)の目の前で犯してやったら、どんな反応をしてくれるんでしょうね?」











今ハ、コノ感覚ニ全テヲ委ネヨウ。

約二週間ぶりの投稿になりました。

お待たせしてしまい申し訳ありません。


ようやく勇者との戦闘に入りましたが、ほぼ会話で終わってしまいました(汗)

アイン君はまだ嫁ちゃんを愛していた&嫁ちゃんはアイン君を裏切ってはいなかったルートだった訳ですが、読者様方の予想は当たっていましたでしょうか?

連載開始前の段階から決めていたシナリオなので、伏線の回収忘れや矛盾点はない・・・はず・・・と思う・・・ないといいなぁ(願望)


八月も終わりだというのに暑い日が続いています。

皆様も熱中症には十分にお気をつけ下さい。


お時間がありましたら、感想や評価を書いて頂けると幸いです。

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