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やはり、今後は味方を大勢増やすことが急務だな


 そこからが大変だった。


 他の生徒達が豹変した俺を怖がり、「誰か、ロープ探してきてくれ」といった頼みにも、なかなか動いてくれる奴がいない。

 生き残った先生達でさえ、俺に近付かなかった。


 しかし、クラスのマドンナ的立場である神野が熱心に俺を擁護してくれたお陰か、ようやくポツポツ手助けしてくれる生徒が出てきて、騎士達を拘束することが出来た。





「我々をどうする気だ……」


 気落ちした騎士の一人が問うたが、それはこっちが聞きたい。

 そろそろ、かつて決めた設定の続きも、枯渇しつつある。まだもう少し先の展開はわかるが、それ以上となると、記憶が曖昧すぎる。


 一度、家捜しのために、自宅へ戻る必要があるだろう……あのノートを見つけないと。

 思案しつつ無言でそいつの鎧を見つめていると、またうっすらとゲージが見えた。神野みたいな赤いゲージではなく、白い色をしたゲージだ。


 そいつのはほとんどゲージがゼロのままだが、見回すと、それぞれゲージの位置はまちまちで、半分くらいの位置に来ている奴もいた。




「……忠誠心的なものか?」


 俺の呟きに、金髪の男は眉をひそめた。


「なんの話だ?」

「いや、殺すか生かすか、指針が出来たって話」


 俺は無情に言い放ち、従者を入れて二百名近い敵共を見た。


「俺は、先に私用を片付けてから城に乗り込んで、制圧できるなら制圧してしまうつもりだけど、俺に仕えようって奴はいるかな? もしいたら、優遇してやるぞ。言っておくが、俺のスキルは無敵だし、集団にも使える……さっき見た通り。防ぐ方法はないし、その気になれば苦しませずに瞬殺も余裕だ。味方になれば、後々いい思いをさせてやるけどな?」


 全員顔を見合わせてざわついたが、俺がじっと観察していると、白いゲージが上昇する者が大勢いた。

 よしよし、ぐらつく奴がいるなら、そのうち味方にすることができる奴も出るはず。

 俺は密かに頷いた。


「まあ、ここで縛られて座っている間に、考えるといい。言っておくけど、時間が経てば経つほど、優遇処置の件は消えていくからな」

「――あのっ」


 いきなり縛られたまま立ち上がった若者がいて、そいつは素早くぴょんと跳んで(足も縛ったからだ)集団から抜け、俺をじっと見つめた。





「自分は元々、好きで従者になったわけじゃないです。これまでの大胆な行動を見て、僕は貴方にこそ、仕えたいと思います!」

「ほう?」


 念のためにゲージを見ると、白い線がほぼ満タンになりかけていた。

 本気らしい。


「ゲラン、貴様っ」


 元の主人らしき騎士が立ち上がろうとしたが、俺は即座にそいつにギフトを使い、苦しませずに倒してやった。

 黒いシャドウが顔から離れた後、やはり額に穴が開いていたが、それを見た他の騎士達が一斉にざわめく。


「俺につくという奴を誹謗ひぼうする者は、容赦しない。これも付け加えておく」


 俺はそう断りを入れ、ゲランとかいう少年……多分、俺とそう違わない年代の彼に、頷いた。


「よく決心した、ゲラン」


 自らロープを切ってやると、慌てたように神野が囁いた。


『大丈夫?』

『平気だよ。心配しないで』


 囁き返すと、神野は安心したように微笑んだ。

 ちなみに、好感度、あるいは愛情ゲージだと勝手に思っているゲージ以外に、よく見れば神野にもちゃんと忠誠心ゲージ? かと思っている白いゲージはあって、この子はこれもマックスである。昔の俺、よくぞそう設定してくれた、ナイス! という他はない。


 本来なら、身勝手さに笑うところだが、実際にこういう立場に置かれると、絶対的な味方というのがいかに有り難いかわかる。

 騎士達は武装解除してあるので、俺はその武器の山を指差し、ゲランに言ってやった。


「俺が私用を片付けてくる間、あそこの好きな武器を選んで、彼らを見張っててくれ。もちろん、俺も用心のためにシャドウを出しておく」


 言下に、黒いシャドウを出現させ、その場に留めた。

 殺したジャガンの知識によれば、シャドウは自動防衛も可能らしいので、役に立つだろう。 俺の意志と直結しているので、特に命令する必要もなく、留守の間は他の生徒とゲランを守っていてくれる。


「じゃあ、しばらくの間、頼む」

「街の方へ向かった部隊がこちらへ来た場合、どうしますか?」


 ゲランはなかなか的確な質問をしてくれた。


「大丈夫、用事の一つはそれだ。敵の位置はわかるから、俺が先にそっちをナントカしてくる」


 俺は安心させるようにゲランの肩を叩いた。



 やはり、今後は味方を大勢増やすことが急務だな……。  


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