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第五話:夢虚ろ、目覚めた場所は?

夜も開けきらない内に目が覚めた。


「うぅ・・・。腹が減ったな・・・。」


よくよく考えれば、案内されて村に着いたものの食料も持ち合わせていないのもあったが

夕食を食べさせて貰った訳でも無くそのまま客間で寝てしまった自分も悪いのかとも思うが

客人に食事の一つも声がかかっても悪くは無いのでは無いだろうかと思う。


「ん?何かがおかしいぞ?」


客間に通され、確かにベットで眠りについたはず。

お世辞にもふかふかとまでは言わないものの、床で寝た記憶は無い。


しかし、薄暗い中差し込む月明かりの中自分の現状を把握する。

床と言うより石畳に近い場所で寝ていた事がわかる。


そして、手探りで探すも近くに置いたはずの鞄も見当たらない。


徐々にではあるが、隙間から差し込む月明かりに段々と目が慣れてくる。


明り取りの窓だと思ったものは実は格子窓、しかも地面スレスレについていた。

地面スレスレ時がついたのは格子戸に手をかけ外を除こうと体を持ち上げたときだ。


あくまでも目測ではあるが、床から格子戸までは2m(メートル)ほどあるだろうか?

格子戸の反対側はと言えば、言わなくても気づいた方が殆どであろう。


頑健な鋼鉄の牢屋の扉だった。


そう、部屋で寝ていたはずの俺は何故か地下牢に寝かされていたのっだった。


「長老様!例のヤツはやっぱり魔族の手下だったんですね!」


「そう慌てるでない!昨日飲み物に眠り薬を入れて眠り込んだ所を地下牢に閉じ込めてある。」


「何をそんな悠長な事を仰るのですか!」


「そうだそうだ!」


「里の場所が露見し、あまつさえ結界さえもあの始末!」


「もう、我々だけでは維持すら間々ならない状況です。このまま皆が疲弊すれば結界の崩壊すら時間の問題に・・・。」


「じゃから、答えを急ぐ出ない!落ち着くのじゃ皆の衆!」


「長老様!牢番の話じゃ子供の癖に大金を持っていたと言うじゃありませんか!」


「なっ!本当の事ですか!」


「ま、待つのじゃ!昨日の小僧が本当にそうだとは限らぬ!真実を確認する前に決め付けるではない!」


不味いぞ!完全に俺が魔族側だと誤解されてやがる・・・。


しかし、荷物も無いこの現状でどうやって逃げ出すかだ・・・。


まぁ、荷物と言っても鞄の中身は金貨と折れた棒切れに仕事のノートとか位だから最悪取り返さなくてもいいかもしれないが・・・。


「ちょ、長老様!小僧の荷物の中に王都ですら見た事の無い上質な紙の束に得体の知れない言葉で文字らしきものが書かれています!」


ちょっ!マジか!日本語が読めないってマジでやばい事になってきたぞ・・・。

しかも、本人に無断で荷物の中身を勝手に見るとはなんて失礼な奴等だ・・・。


賠償を要求する弁護士だ!弁護士をよ・・・。


あー。駄目だ、落ち着け俺、今は現状を打破する事が先決だ・・・。


等と半ばパニックになりながらも自分を落ち着け、思考を巡らせようと床に座り込んだその時だった。


突如響く轟音。それに伴い木々の焼ける匂い。人々の泣き叫ぶ声。


「敵襲!敵襲!女子供は安全な場所へ避難させろー!戦える男衆は、防衛線へ急げー!!」


え!?マジ!?何が起こってるんだ???


バチバチと木々が爆ぜる音が聞こえる。


少し離れた所で打ち合う金属音。


「なんだ?戦争でも始まったと言うんだろうか・・・?」


血生臭い状況にも牢屋の中では何か出来るわけも無く、自分の状況すら客観的に見てしまっている。


「さて、巻き添えを食う前に逃げたいのは山々なんだがどうしようかな・・・?」


考えを巡らせていると、カツカツと階段を下りる音がする。


「なんじゃ、起きておったのか・・・?」


「あ?爺さんか。起きてちゃ不味かったか?」


「ふむ。今の状況でもそれだけの落ち着きとは中々肝の据わった小僧じゃのぉ・・・。

ただの大馬鹿か、もしくはこうなる事を知っていたのか・・・。」


「ふん、そのどちらでもねぇよ!!


目が覚めてみたら牢屋の中で、荷物は全部取り上げられているこの状況でどうやって足掻くんだよ?


何も出来ないままでも、そこから聞こえる音だけでなんかやばい状況になってるのだけは解るさ。


最悪村が全滅、襲撃者に地下牢は発見されず俺は牢から出れずに飢え死にってオチが関の山だろ?」


「なんじゃ?外の連中に助けを求めれば良いじゃろうに・・・。」


「村を襲撃するような連中に知り合いなんかいねぇよ!そんな連中に声をかけりゃなぶり殺しか良くて奴隷落ちだろうに・・・。


そんな道を選ぶ位なら騒ぎが収まるのをまってここから逃げ出す手段を考えるさ。」


「そこで、お主に頼みがあるのじゃ。どうか、老い先短い爺の最後の願いと思って聞いてくれぬか?」


「襲撃者の仲間だと思って地下牢に閉じ込めたんじゃねぇのか?

そんな怪しい奴に頼みごとをするなんて頭までおかしくなったのか?」


「そう思うのも仕方ない。

しかしじゃ、ワシはそこまでお主を疑ってた訳ではないのじゃ。」


「じゃぁ、なんで地下牢になんて閉じ込めたんだ?」


「それは・・・。

こうでもせねば、お主は村人達に拷問もしくは嬲り殺しにされかねなかったんじゃ・・・。


お主の命を守る為と言えば聞こえは良いかも知れぬ。

しかし、確証も無いまま年端もいかぬ子供をそんな目に合わせるには忍び無かったんじゃよ。」


「ずいぶんと虫のいい話しだなぁ。

まぁ、そんな無駄話をしてても話が進まないし頼みとやらを聞こうじやないか。


まぁ、了承するかは話を聞いて判断するさ。」


「そうか、聞いてくれるか。


今、この村に残っている子供達を連れてここから半日ほど先にある町まで逃げてほしいのじゃ。


町にある修道院の院長はワシの知り合いでな。


訳を話せば子供を預かってくれるはずじゃ。」


「ふむ。俺を逃がす代わりにガキ共を連れてけと言うわけか。


俺が、途中でガキ共を見捨てて逃げるとは考えないのか?」


「それは、年寄りの勘って奴じゃよ。


お主はまかり間違っても、弱い者を見捨てるようには見えぬ。」


「あー、めんどくせぇな。自分の命がやばけりゃ見捨てるぞ?」


「それでかまわぬ。どうせ、ここに残っても時間の問題じゃ。

少しでも生き残る可能性がある方にかけるしかないのじゃ。」


「へいへい・・・。ならとっとと逃げ出させて貰うとするわ。」


「容量は少ないが一応マジックポーチじゃ。中に、町までの水と食料を入れておいた。


二日分ほど入れてあるから、道に迷う事は無いじゃろうが遠回りするとしても十分足りる事じゃろう。


町についた後は、報酬代わりに好きにするが良い。」


「ちっ・・・。こんな高価なモン貰ったら裏切れねぇじゃねぇか・・・。」


「そんなもの無くても、お主は約束を守ってくれるじゃろう。


子供達は、この先にある抜け道から先に村の外れに向っておる。


出口は大人しか開ける方法を知らぬから出前で待ってるはずじゃ。」


「ふむ・・・。まぁ、ずいぶんと信用されたもんだ。」


爺さんの後を着いて歩くこと数分。行き止まりには数人の子供(年の頃は10歳位か?)

が待っていた。


「ちょ、長老様ー!」


「そ、ソイツはあいつ等の仲間なんじゃ・・・。」


子供たちが思い思い叫び始める。


「大丈夫じゃよ、ワシと取引をして御主達を修道院まで逃がしてくれる事になったんじゃ。」


「し、信用しても大丈夫なの?」


「長老様も一緒に逃げようよー!」


「一緒に着いていってやりたいんじゃが、鍵は中からしか掛けられぬ。


御主達が出た後、少しでも時間を稼ぐ為に再び鍵を閉める必要があるのじゃ。」


(おい、爺さん死ぬ気か?)


小声で爺さんに問いかけるも、ただただ笑うだけの爺さんの笑顔がそこにあった。

少しずつ動き始めた物語。

自分の生きてきた世界に比べ余りにも命の軽い世界。


老人の笑顔の先なあるものは?


次回更新をお待ちいただければ幸いです。

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