第四話:ガキガキうるせぇんだ!
変り映えのしない景色の中、ただ永遠と歩く。
今までと違うのは前には老人、後ろには姿は見えないものの
肌をピリピリと刺激するほどの殺気を放つ気配が複数あること。
オレが手にしているものは、鞄とその中身の金貨位なもの。
ついて来いと言われたものの、後どの位かも説明が無く、老人の癖に
歩く早さは全く遅くならずついていくこちらが息が切れそうなほどだ。
気を抜け距離が開き見失いそうになる。
「おい、爺さんまだかよ!
こっちは、飲まず食わずで半日以上あるき通しなんだぞ!」
「まったく、せっかちな小僧じゃのぉ・・・。いや、待つが良い・・・?」
爺さんの足が止まり薄っすらと開くその一筋の目が光る。
いや、光った気がした。
「すまんのぉ。お主にかけていた幻術がそのままになっておったわ。
しかし、お主は本当にヒューマンか・・・?」
「はっ?ついにこの※※爺ボケやがったか?え!?は!?じじぃぃぃいぃいいい?」
さっきまで目の前に居た筈の老人の姿は無かった。
代わりに、そこに立っていたのは確かに年は経ているものの壮年の男性。
しかし、先ほどまでの姿とは決定的に違う点があった。
「エ、エルフだと・・・?」
さっきはでは違和感の無かった耳が上向きに尖り、そして幾分か若返った様に感じる。
「なんじゃ、お主知っていてここに来ていたのでなかったのか?」
「何の事だよ!オレはただの道に迷った旅人だって言ったじゃねぇか!!」
「まぁ良いわ・・・。あと少しじゃ、ついて来くるのじゃ・・・。」
再び歩き始める爺さん?の後をついていく俺。
すると、5分もしない内に先ほどまでの変り映えのしない景色が嘘の様に開けた場所に出る。
街というには程遠く、村と言うにも何か足りない。
言うなれば、集落と言う言葉がしっくりくる感じがした。
だが、家の数に対して人の数が少ない気もする。
麦の様な物を脱穀する者、庭先で猪の様な動物を解体する者。
確かに人は居る様なのだが、何故か子供の姿が見えない。
「おい、爺さん?何で子供がいねぇんだ?」
「全くせっかちな小僧じゃ。ほれ、着いたぞ。」
言われて、たどり着いたのは集落の中の一番大きな建物。
と言っても平屋の二件分ほどの大きさだろうか。
応接間らしき場所に通されると、若い女性がお茶らしき者を持って入ってきた。
「いつまでもそんな所に突っ立ってないで座らんか・・・。」
「あ、あぁ、すまない。」
さすがに失礼かとは思ったが概観通りの内装。
ガラス戸などは無く開け放たれた窓には木戸があるのみ。
豪華な装飾品などは無く、花瓶には綺麗だが見た事の無い花が生けてある程度。
床には大きな獣(頭が無く部屋の床を埋め尽くすような大きさで正体不明)毛皮が敷かれていた。
「いや、どこで靴を脱げばいいんだ・・・?」
部屋の入り口で、立ち尽くす俺を爺さんは呆れ顔で
「お主は一体どこから来たんじゃ?靴なぞ履いたままで構わぬ。
座って貰わねばウチのがお茶の置き場も無く困っておるじゃろう・・・。」
「ウチの・・・!?爺さんの嫁か!?」
「むぅ・・・。驚く所はそこなんじゃ・・・・?そんなに可笑しいか・・・?」
驚きつつも爺さんの正面に座ると、後ろでクスクス笑っていた女性がお茶を置く。
「良い匂いだなじいさん。」
「褒めても茶以外なんもでんわい・・。」
不貞腐れても嫌そうではないじいさん。
「して、話は本題じゃ。お主は何処から来た?」
「さぁ?オレが聞きたいね。」
「お主はふざけておるのか?」
「いや?至って真面目。至極普通に答えたまでだが?」
「お主の様な子供がこんな所に迷い込むい事は万に一つも無いはずじゃが?」
「あのなぁ・・・。さっきから子供だとか餓鬼だとか小僧とか・・・。
ドンだけ子供だと思ってんだよ!?いくら童顔でも子供扱いなんて始めてだ!」
「ふむ・・・。お主は自分の顔を鏡で見た事があるのか?」
おかしな事を言う爺さん。冗談を言っている様ではなく表情は真面目そのもの。
「おい、お前の鏡を貸してやってはくれぬか?」
その声と共に後ろでパタパタとかけていく音が聞こえる。
程なくして先ほどの女性が手鏡を持って戻ってきた。
そして、手鏡を渡されると小声で呟く。
「壊さないでね?」
「お借りします。」
爺さんの嫁には全く持ってもったいない。
手渡された鏡は鏡と言ってもお粗末。だが、顔を見る位は何とか出来そうな代物だった。
「まっく、人を何だと思ってんだ・・・?」
文句を言いつつも鏡を見る俺。
「!?」
そして、驚愕の事実が発覚。
そこには確かに自分が写っていた。
写っていたのだが、俺の記憶の中。
神と思われたアイツの所で見た自分とは全く違う俺だった。
神の所で見た自分は、キャラメイクで作り出された若干イケメン風のゲーム内で良く作る感じの
キャラクターだった。
しかし、どうだろう。
鏡に映る俺はこの世界に飛ばされる前、電車に乗っていた頃の俺だった。
しかも、若返りすぎていた。
会社員時代の俺は三十も半ばを過ぎ。高校生にはおっさんと呼ばれる様なもの。
しかし、鏡の中の俺は親戚の祭事の際に行くような格好をした高校生位の頃の俺だった。
「どうじゃ?納得したか?」
俺の表情に納得したかの爺さんからの言葉。
無言で手鏡を返す俺。
「爺さん、俺だって17歳だ!子供扱いされても納得いかねぇよ!」
よくある異世界物では15歳で成人になるはずだ。ひとまずブラフで乗り切り事とする。
「ほうっ!まさか成人しておったとは驚きじゃ。それはすまぬ事を言った。」
まさか、それ以上下と見られていたのか・・・。
「贔屓目に見ても12歳かそこらで学園に通う様な歳かとおもったんじゃが・・・。」
おいおい、12歳かよ。東洋人は成人してても子供に見えると聞くがそこまでとは・・・。
「細かい話は明日するとしよう。今日はもう遅い、客間の準備をさせてあるからそこで休むといい。」
窓からさす日の光も赤みがかかり夕暮れだろうか。
やはり文化レベルは中世頃か、日の出と共に起き、日の入りと共に休む。
原始的な生活だな。
「良くわからないが厄介になるよ。」
思いのほか疲れていたのか、案内された客間で靴を脱ぐと飾り気の無いベッドで意識を手放した。
前回より数日空いてしまって申し訳ありません。
なるべく更新できるように頑張りますが、リアルブラックの為ご容赦願えればと・・。
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