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閑話:胃薬が必要ですか?

領主のぼやきです。

読み飛ばして頂いても問題ないかと思います。





あぁ、もう朝なのかここ数日で様々な事が起こっていた。


いや、起こっていたと言うよりは起こり過ぎている。


貴族達の横領や着服などはいつもの事でたいした事では無かった様にも思うことが出来るのだが

その原因が異常である。


たまたま村へと立ち寄った旅人の荷物がかなりの価値を秘めていた為欲に目がくらんだ

貴族とその護衛が接収と称した盗みを働いた。


ここまでであれば、稀にある話。


しかし、相手が抵抗した為魔物に襲われた風に装って村ごと焼き払う事にしたとの事だった。


異常ではあるが、相応の価値のある物だったの証言で、金銭などで解決してしまう領主も居ないわけでは無い。


そう、例え村一つ焼き払ったとしても新たに人を送り込めば開拓事業は若干遅れるものの問題としては軽視できる度合いだからだ。


だが、相手はただの少年だった。


年を聞いてみれば12歳と言う。


12歳の少年が貴族とその護衛に逆らう事がありえるのか?


否。例えある程度腕に覚えのある冒険者ですら貴族に逆らうなど稀にすらありえない。


たとえ、抵抗したとは言えその金と権力の力によって潰されてしまうのが目に見えている。


装備を奪われた、手柄を横取りされたなど様々な悪行が横行するのも事実。


抵抗され、逆に捕縛されてしまったミート男爵に関しても黒い噂は少なからずあった。

だがある程度の事にかんしては本人が被害者に金銭を渡したりしてもみ消していた。


闇に消された件も出てきていないだけで腐るほどあるのだろう。


だが、たかが一貴族の行った事市政を行う事に関しては甚大と言うほどの被害も無い。


毎年の年貢の徴収もほぼ問題無く行われている。

今回の臨時徴収にかんしてはドラゴンと言う今日に抵抗する為に致し方の無い事。


開拓村に関しても、貧民街もしくは他領からの移民者の内の希望者から募っている為

正直全滅しても被害としてはなんら痛いところは無い。


他の領から聞かれれば、怠慢だとかもっと効率よく出来ないのかと言われるかも知れぬ。


だが、他領より魔物の数の多い森が多く正直防衛だけで年の予算の大半を占める。


開拓村の異常事態だけで済めばまだ良かったと言えた。


しかし、どうだその貴族を捕縛したと言う旅人の少年は当の貴族の屋敷で騒動を起こした。

衛兵の報せにより、急いで駆けつけるとそこには異様な光景が広がっていた。


見た目はまさに子供。まだあどけなさの抜け切らない少年だった。


それが、床に転がされたミート男爵を踏みつけ兵士達を睨みつけていた。

しかもだ、その男爵の目先には剣が突き立てられていた。


ただ刺さるだけならなくも無いが、鋼鉄の剣が折れずに曲がる?

ありえない。切れ味の鋭さで負け半ばから断ち切られたのであれば納得もいく。

刺さった剣が折れずに曲がる。そんな話は聞いた事が無い。


しかしながら、その場で話を聞く訳にもいかず屋敷に連れ帰った。


ワシの話を聞く耳を持っていたのは不幸中の幸い。


しかしだ、何を聞いても裏を突かれ、本心を話そうとはしない。


トドメには現地に行って、状況を確認して来いと言われた。


自分の子供より幼い子供にそう言われたワシの気持ちが解るか?

本来なら兵士の一人にでも行かせて確認させて終わりだったはずだ。

それを、当事者の兵士を連れて現場へ行って来い言われるのだ。


これでも、長年この領を任されてまかりなりにも維持をしてきた。


地位の高さも自覚はしていた。だが反論しても倍になって帰ってくるのが目に見えていた。


夜が明けてから、行動しようと思い客間に案内させようとしたら何故か断られた。

街の宿に宿泊するから結果が解ったら伝を寄越せと。


あれか?この少年は王都からの視察できていたのかと疑うくらいだ。

もしそうであれば、夜通し走ってでもすぐに確認してこなければワシの首が飛ぶ。


少年を見送った後、現地へと大急ぎで走り床に入っていた村長達を叩き起こし事の顛末を聞く。

村長の顔を見た兵士は、驚き腰を抜かす。


理由を聞いても恐怖ゆえか振るえて頭を抱え動けずに居た。


話にならず、当の村長に聞いても知らぬ存ぜぬ。

村長に聞けた話は少年に聞いた話とほぼ相違は無いかった。


しかしだ、前回の物資の緊急徴収の報告とは違った点があったのだ。


痩せ衰え、今年の冬が越せぬと判断されていた家畜達が活力に溢れていた。


その件を聞いても、村長は解らないとしか答えなかった。


きっと何かが起こったのだろうが村長は理解出来ていない様子だった。


村での調査を終え、街に急ぎ戻ると新たに二つの事件が起こっていた。


ワシが何をした?と頭を再び抱える。


内容に関してはこうだ。


冒険者ギルドに現れた少年に世間の厳しさを教えようとした冒険者達が逆に返り討ちにあった言うのだ。


確実に先の少年だろう。護衛の兵士だけではなく冒険者達をも凌駕する実力。

化け物が姿を変えて現れたのか?とも思うがもう一つの事件によって打ち消された。


冒険者ギルドのすぐ近くの宿に凄腕の料理人が現れたと言うのだ。

客や女将の話を聞けば、先の少年だとすぐに判明した。


だが、問題が一つ。


なんども念押しで今夜だけだと言っていたそうだ。


悔しい、ワシは一口も食べられていない。


現場に遭遇したウチの兵士にも話しを聞いた。


見た事も聞いた事も無い料理の数々。


豪華な食材と言う訳でも無いのに味わった事の無い旨さだったと言う。


悔しくて、宿から来た少年に頼んでみたが見事に却下された。


その上に、ドラゴンは街を襲撃に来た訳ではないと言う吉報もあった。


しかし、予算を確実にオーバーし、メイド長より小遣い抜きが伝えられた。


今月はまだ始まったばかり。晩餐会などはどうしよう・・・。


少年が帰った後、頭を抱えながら今後の事を考えながら書類の整理をしていると

再度報せが来た。


貧民街で大騒ぎが起こっているとの事。


報せに来た兵士の顔をみて再度驚く。


何故かだって?つい昨日まで生死の境を彷徨い詰め所で寝かされて居た兵士だったから。


先日のドラゴンの飛来によって数々の魔物が街の付近まで押し寄せていた。


熟練の兵士であれば軽症もしくは無傷で済む程度のゴブリンなどの魔物だった。


だが、数が多く鍛錬のままならない新米兵士までも総動員しての防衛だった。


当然腕の未熟な新米兵士達は何人も命を落とし、生き残った者も重症もしくは瀕死であった。


そんな瀕死の兵士が軽症だったのかと見間違う様相で報告に来れば誰だって驚くと思う。


その報せの内容はこうだった。


街の食材屋にワシの兵士が金貨を5枚も持って大量の酒と食材を買い込んでいた。

そして、買い込んだ食糧を貧民街へと運んで行った言う。


領主様からの恩賞かと思い深く考えずに対応したが、そんな話を聞いた事が無かった為

急ぎ屋敷まで報告に来たとの事だった。


一体何が起きた?起き過ぎでは無いのであろうか?


貧民街に到着した頃には、騒動は治まり静けさを取り戻していた。


なんだ?暴動でも起きるのかと不安に駆られる。


商店の主人の話から兵士はマルコと言う名が判明しておりその者の住む所に着くと

戸口で先の少年が眠っていた。


起きる様子は見受けられなかったが、念の為捕縛させ牢へ入れる様に伝える。


ワシの兵士であるマルコは抵抗する様子も無く、近所に家族の世話を頼み一緒に牢へと連れて行かれた。


さて、当事者が起きねば話も聞けぬが下手に起こして抵抗されても困る。


これで、騒動が治まればいいのだが・・・・。






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