表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

突如背後に現れたもの。DEAD or ALIVE

カミサマの視線の先に現れたものは恐ろしきドラゴン。

二度目の死の予感がヒシヒシと伝わってくる。


くそっ、気配感知にすら引っかからないなんてどんな性能だよ、真後ろに居ても気がつけないほどの隠密性。

高機能のステルス気ですら、無理な芸当である。


生物であれば呼吸もするし、これだけの巨体が動けば少なからず振動が起こる。


それどころか、鬱葱と生い茂る木々の中を全く気配を感じさせずにここまで接近できるなんてありえない・・・。


『ありえないなんて事が起こると思うのか小僧?』


「!?」


悪戯好きの神のヤツはさっき居なくなったばかりなのに頭に声が響く。


しかもだ、声に出してない俺の思考までもが読まれている。


ふと、意識を眼前に戻すとそこに居たはずのドラゴンの姿が無い。


夢か?幻でも見たのかと周囲を見渡すも先ほどのドラゴンは姿も形も見えない。


音すら立てずに消えるのか?


『何処を見ておる、我は先ほどからずっとここにおるではないか?』


再び頭の中に声が響く。


目の前に居たのは吹けば飛びそうな程に線の細い老人であった。


いや、見た目に騙されてはいけないと自分の中のナニカが警鐘を鳴らす。


俺が感じたのは恐ろしいまでのプレッシャー。


ゲームで言うならば、<b>絶対的強者の威圧</b>


不意打ちで食らえば、初動の遅れは間違いなく死に直結したであろうとてつもない物だった。


『ふむ。どうやら見た目道理の小僧ではないようじゃのぉ・・・。』


「おい、爺。普通に話す事は出来ないのか?


さっきから頭の中がかき回されるように頭痛がとまらねぇんだよ!」


「ふむ・・・。


さして、苦痛を感じているようにも見えぬがのぉ?


それなりに実力はあるようじゃのぉ。


我も好んで争いに来た訳でもないしのぉ・・・。」


聞こえてきたのは見た目どおりの老人の声、その中には感情が感じられず

淡々と発せられた言葉であった。


「で、こんな森の中に居る爺さんがただの通りすがりって訳でもないんだろ?」


「ふむ。


なかなか察しの良い小僧じゃ。


その辺の一山いくらかの冒険者風情とは訳がちがいのかのぉ?」


「なんだ?屋台の安売りか何かだとでも言いたいのか?


爺の戯言に付き合うほど暇でもないんだが?」


「虚勢は嫌いでは無いが、無知と無謀は無意味と知るが良いぞ?」


唐突に、先ほど感じた恐ろしいまでのプレーシャーが

再び襲い掛かってくるも、油断していた訳でもなく不意打ちでもない。


「爺こそ、見た目通りの小僧だとなめてかかると怪我をするんじゃないのか?


俺の国に[年寄りの冷や水]って言葉がある。


まぁ、意味については機会があれば教えてやるけどな。」


「ふむ、先ほどとは違ってコレを耐えるか・・・。」


「何でもいいから、さっさと用件を言いやがれ!」


「まぁ、我も暇と言う訳でも無いからのぉ。


率直に言おう、我が子を返して貰いたい。」


「ん?我が子だと?」


「そうじゃ、そこにおる我が子を連れて帰る為に我は来た。」


そう言う爺の視線の先には満腹になり、居眠りを始めたチビ助が居るのみ。


「ほう、爺の戯言か?どう見ても我が子と言うのには無理があるんじゃないのか?」


解っていても、聞きたくなってしまった。


「ふむ、お主の顔には既に答えが解っていると書いてあるのだがのぉ?


仕方ない、死んでも責任は取らぬぞ?」


言うが早いか爺の体が眩く光、それまで人の形だったソレは大きく姿を変え

幻だったと思いたくなる先ほどのドラゴンが姿を現す。


森の木々はなぎ倒され、口からは濃厚な死の臭いが感じ取られる。


最初に俺が感じたのは、このドラゴンの気配だった。


あまりに巨大な気配に、形どっていた老人の姿ではなく


ドラゴン本来の姿として誤認していた為老人としてのドラゴンに気づけて居なかったのだ。


「くっ、やっぱり本物じゃねぇか。」


ゲームの中で散々戦ってきたドラゴン、下位龍から上位、果ては始祖につならるものまでとも戦った経験はあるもののあくまでもゲームの世界。


肉体的にプレッシャーを感じる事が出来る訳もなくシステム的メッセージに威圧に抵抗したなどと

機械的な表記のみ。


この世界で最初に死に直面した時も後になって考えれば高々オーガによる威圧の効果で

俺自身は死を感じたのだった。


威圧に抵抗出来なければ、恐慌状態に陥り当然正常な判断も出来ずにただ恐怖に駆られるのみ。


『コレでお主の信用を得る事が出来たかな?』


「信用するかどうかは俺が決めることじゃねぇ。


チビ助本人に聞けよ。


俺はただ着いて来ちまったから餌を与えてただけだ。


襲ってくるなら狩りもするが、ただ腹を空かせて寄ってきただけだしな。」


「グァァァァァ!!!!」


物凄い空気の振動と共に周りの木々がビリビリと震える。


「クアァ?」


寝ぼけて居たチビ助に関しては何事かと目をパチパチ。


「クアァッ!クアァァァ!!クアッ!」


「グアァァ。ガアァァアアァ。」


「クアァァアァ。」


「グアッ。グアグア。」


「クゥクゥクァ。」


『困った事が判明したぞ。』


「ったく、今度は何だ?」


『お主の与えた食事が食べられなくなるなるのは嫌だからお主について来たいと言って聞かぬのじゃ。』


「はぁ!?そんな事俺が知るかよ!自分の子供なら自分で何とかするのが普通だろ。」


『我らの食事は本来、魔素を吸収するか、精精獲物をそのまま食らうだけなのじゃ。』


まぁ、どうせそんな事だろうとは思ってはいたが、

このまま街へチビ助を連れて行くことも不可能では無いが厄介事の臭いしかしない。


「ったく、しょうがねぇなぁ。」


そう言いつつ、日持ちしそうな料理を自作したマジックバックに詰め込みドラゴンの鼻先に突きつける。


『気遣いには感謝するが、お主達には貴重な代物ではないのか?』


「ん?あぁマジックバックに気がついたのか。」


『我を過小評価しすぎではないか?人語を理解し、人化の術も極めておる。


時々人の街に行っては情報収集位はしておるわ。』


「なら、話は簡単だ。コイツは俺が作った。

その気になれば量産する事だって不可能じゃない。」


『ふむ。お主は古代人の生き残りか?』


「何故そう思う?」


『それらの技術はとうに失われておるはずじゃ。

現存する物に関してはダンジョンからの発掘品か、王族などに代々伝わってきたものがほとんどのはずじゃ。』


「やっぱり、ダンジョンはあるんだな・・・。」


『そうか、お主は異世界からの迷い人なのだな?』


「クッ!?」


『どうやら、正解のようだのぉ。

古代人で無いにしろ、我らが人語を理解し、喋る姿を見て驚きもせぬとは

他に考えられぬからのぉ。』


「爺の癖に中々の切れ者じゃねぇか。」


『一応、長の立場にあるからのぉ。』


「長直々に迎えに来るとは、チビ助はまさか未来の長候補ってヤツか。」


『いや、そうではない。

少し前に、我らの里に魔族が攻め込み、子供達をさらって行ったのじゃ。


戦えるもので、子供達と卵を取り返しに行った中で

たまたま我がここに来たと言うだけの事じゃ。』


「そうか、そう言うことだったのか・・・。」


『なにやら、思い当たる節があったようじゃのぉ。

しかし、これだけの恩を受けてただで帰るわけにもいかぬな。』


そう言うと、爺はおもむろに口に手を持っていくと牙の一本をへし折った。


「おい、爺なにしてんだ?」


『なに、牙くらいすぐに生えてくるから気にするものでないわ。』


そう行って、牙と数枚の鱗を剥がして俺に差し出す。


『ほれ、我らの子を保護してくれた礼じゃ。』


「ふむ。だが、このままでは受け取れねぇな。」


俺は、身体強化魔法を使い、爺の顔の辺りまで飛び上がり、空間収納から一本の回復薬を取り出し

爺の口と剥がした鱗のあった場所へと振りかける。


すると、回復薬の効果はすぐに現れ、折れた牙の根元は新たな歯が顔を出し、鱗の剥がれた皮膚からは鱗が生え始める。


『お主は、どれだけ貴重な物を持っておるのじゃ?

これだけ高性能な回復薬なぞ滅多にお目にかかれる物でもないじゃろうし・・・。


まさかと思うが、これもお主が作り出したとは言わぬよのぉ?』



「悪いが、そのまさかだ。」


『異世界からの迷い人は真に常識を覆す者ばかりじゃ。』


「ん?その言い方からすると、他の異世界人を知ってるような口をじゃねぇか。」


『我は知らぬとは一言も言ってはおらぬわ。


ただ、すでにその者達はこの世におらぬだけ。


あるものは、魔王を倒し共に命を落としたもの。


あるものは人々の争いの中、争いを収めはしたがその時の傷が元で命を落とした。


そして、我が知る最後の者は亜人と魔族の味方をし、人々との戦いで命を落とした者。


そのどれもが、数百の季節を跨いだ大昔の話じゃ。


その時から、どれだけの月日が流れたかは解らぬが異世界からの迷い人の話しなぞ

今では御伽噺でも珍しい位じゃ。』


「そうか、そうだったのか・・・。」


俺も、亜人や魔族が話しが出来るような相手なら特に戦おうとも思わない。


むしろ、いい取引相手になりそうな気がする。


「まぁ、俺が爺の知るような異世界人と同じとは限らねぇけどな。」


『そうかのぉ?お主たち異世界人は総じて多種族に偏見を持たぬ気がするのは気のせいかのう?


魔王を戦った者は世界の崩壊を止めると言っておったし、後の二人に関しても戦いなんて馬鹿のする事だと言っておったぞ?


それに、お主はお主等から見れば魔物の子供であろう我らの子に食事を与え保護したではないか。』


「俺がそいつを売り物にするとは思わないのか?」


『そのような輩であればとうの昔の我の腹に収まっておるわ。


それに、我もお主を食おうとすればただでは済まないであろうしな。』


「ふむ。逆に食われるとは思わないんだな。」


『お主も冗談が好きじゃのぉ。

お主がその気なら我と会話などしようと思わぬじゃろう。


何かあれば、ここから山を8つ越えた先の山の頂に来るが良い。


一族でもてなそうぞ。』


「はぁ!?山八つって遠すぎだろ!丸一日ががりじゃねぇか。」


『お主は常識を学んだほうが良いのかも知れぬな。


普通の冒険者なら山一つに三日はかかるわい。』


「あぁ、そうかいそうかい。まぁ、その件は近くに行くか気が向いたらな。」


『我もそろそろ戻らねば皆が心配するゆえにこのあたりで失礼させて貰おう。』


そう言うと、チビ助を背中に乗せ大空えと飛び上がっていく。


あれだけの巨体で羽ばたきもせず飛び上がる姿は圧巻というか幻想的な姿だった。


そよ風すら起こさず瞬く間に小さくみえなくなってゆく。


「さて、お荷物も減った事だし屋台が俺を待っている!いざゆかん。」




先日に引き続き無事に投稿することが出来ました。

ブクマからの閲覧&新規ブクマありがとうございます。

日々増えるPVを励みに投稿頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ