プロローグ
ポーンと言う電子音と共に画面端のアイコンに新規メッセージのマークが付く。
「ん?ゲーム専用のアドレスのはずだけど、変更したばかりでまだ誰にも知らせてないはずなんだけど・・・。」
不思議に思いつつも、メッセージBOXを開くとそこにはこう書いてあった。
【当選おめでとうございます。貴方様は当社のβテストプレイヤーに当選されました。
つきましては、下記のサイトにてプレイヤーアカウントの登録手続きをして頂きたいと思います。
http://※※※※・・・以下略】
等々色々と書いてあったもの余りの胡散臭さに放置する事にした。
それから数ヶ月間は何事もないような平穏な日々を過ごす毎日。
いつものように会社への超満員の電車に鮨詰めにされつつも近くの高校生と思しき少年たちの会話が耳に入る。
「そういやさ、昨日発表のアレ見たか?」
「当然だろ?でも、公開直後はサーバーダウンするんじゃないかって位の混みようでアクセスカウンターもガンガン上がってたぜ!!」
「だって、しょうがないだろ?聞いたこともない会社がいきなりVMMOに参入するって
冗談だろ?って思ったのがホンネなのに、昨日まで続々とUPされていくSSや背景の動画なんてコレまでのヤツとダンチじゃん?」
「だよなー。色々な種族とか選べるってのは定番なんだろうけど自由度が違うらしいな。」
「そうそう、技術レベルはありがちな剣と魔法の世界だけどゆくゆくは個人で飛空挺とかが所有出来るらしいぜ?」
「お前バカだよな〜!俺は絶対竜に乗るんだぜ!!クラン対抗竜騎戦とか面白そうじゃねぇ?」
などと話している内容に興味が唆られる。
確かに今までのVMMOだけに限らず制約自体はそれなりにある物がほとんどだ。
自由度が違うにしろやって見たい気持ちは多いにある。
スマホを取り出し、最新のVMMOで検索をかけると案の定トップに見知らぬ会社の名前が出てくる。
「ふむ、これか・・・。」
サイトにアクセスすると、先ほどの話の動画が出てくる、その横にはその世界についての簡単な説明と共にこう書き加えられていた。
【現在のβテストの風景の一部ですがの此度公開することとなりました。
本格的な公開は来年冬を目処としておりますが、開発状況次第で内容が大幅に変更される可能性がある事をご了承下さい。】
無難なメッセージと共に公開された動画には人、獣人、エルフなど多様な種族が戦う様子や中世的な町並みを歩く様子などがリアルに見て取れた。
そして、サイトの下の方には事前登録と言う項目があり、こう書き加えられていた。
【事前登録をして頂くと、オープンテストサーバーなど公開が決定し次第メッセージを送らせて頂きます。
そして、抽選にはなりますが追加のクーローズβテストの参加者を選定させて頂く場合もあります。】
なるほど、これは良い宣伝になるのだろう。
みると、事前登録者の数が公開翌日にも関わらず一千万人を超えたようだ。
良くある基本料金無料では無く、月額課金型で事前登録者のみ半年間のフリープレイの権利がもらえると言う事らしい。
そのまま事前登録者用のフォームへと進み、次々と書かれている質問を答えていく。
最後の方の質問になると、自分の種族、職業などを選ぶ事が出来るようだ。
それぞれの種族や職業の横には人気度と思しき%表記のバーが設定されている。
一次職の人気はやはり戦闘系と魔法系の職業が圧倒的に多く生産職は皆無と言って良いだろう。
サブ職業も先ほどとほぼ同じで若干サブ職業に生産職を選ぶ人がいる程度である。
どこのゲームも似たり寄ったりだなと、自分の職業を決めていく。
一次職にはアルケミストを選ぶことにした。
俗に言う錬金術師というヤツだ。
このゲームでは薬品以外にも結構幅広く生産が出来るらしく、
細工師の真似事もできると書いてあった。
サブ職業はソコソコの戦闘が出来るように魔法職を選んだ。
魔法職をと言っても攻撃魔法も回復魔法もソコソコの使えるらしいが
ド派手なものは本職には及ばないようであった。
と、あれこれ記入していくと最後の決定ボタンの前に注意書きがあった。
【一度決めた種族に関しては変更する事が出来ません。
職業について特に制約等はありませんが最初の職業に関して成長ボーナスが与えられる事でしょう。
例: 戦闘職→戦神の加護
と言うように、あくまでも職業についたと言って必ずしもその職業でなければならないと言う事はありませんが、加護によってはデメリットもある為希望に添えない場合もあるのでご了承下さい。
上記の加護についてはあくまでも一例で、作成時から付与されるものやある程度成長してから発現するもの、後天的に授かるもの等は多種多様に用意させて頂くことと予定しております。
上記に同意した上で規約に同意される方は下記の決定ボタンによりキャラメイクを終了してください。】
「しっかし、事前登録なのにやたらと質問がおおかったなー。」
などとボヤきながら決定ボタンを押す。
すると、先ほどの会話の少年たちの逹が声をかけてきた。
「ん?なんだ、オジさん今頃事前登録してんのかよー!
そんなんじゃ、テスター枠にはあたらねーぞ?」
「そうそう、僕らなんて昨日の発表されてすぐに登録したのに100万オーバーだったしねー。」
昨日は、普通に平日で発表は正午だったはずで学校はどうしたと言いたいのを我慢してにこやかに返す。
「オジさんって言うけど、まだ40前だぞ?」
「なんだ、十分オッさんじゃねぇか。」
「そうそう、三十も過ぎれば十分オジさんですよ。」
ぐぬぬと、文句を言いたくもなるも反論の余地なしと無視を決め込もうとするものそこで電車が進んでいない事にふと気がつく。
「なんか止まってないか?」
「なんだよ、オッさんさっきのアナウンス聞いてなかったのかよ。
信号待ちで少しの間停車するってよ!」
登録に夢中になり過ぎたようで、聞こえていなかったらしい。
サイトで次の動画を見ようとスマホに目線を落とすと物凄い衝撃が身体を襲いそのまま意識を失った。
本編のストックは製作中ですが、とりあえず、プロローグのみ公開する事にしました。
前作から半年以上間が空いてしまいましたが、末長くお付き合いいただけるようがんばります。