左手と秘密
目を覚ますと僕は何故かベッドの上にいた。
窓からは日の光が漏れていてもう朝だということがわかった。
「夢・・・・だったのか?」
ベッドから起き上がろうとするとゆっくりと扉が開いた。
「アモン!起きたのか。よかったわい。」
じいさんは治癒用の短杖を持っていた。
「部屋に戻ったらお前さんが倒れとったから
心配したんじゃぞ?」
「ごめん、じいさん。けどなにがあったかは覚えてない。」
とっさに嘘をついてしまった。もし話したとしてもじいさんは信じられないだろう。
神官のところにつれていかれるのが関の山だ。「じゃがその左手は・・・」
左手?まさか!
僕の左手は真っ黒に染まっていた。金属のような鈍い輝きを放つそれはとても自分の手には見えなかった。
「手に治癒魔法をかけたが一向に直らないんじゃ。病気だとしたら厄介なんじゃが。心当たりはないのか?」
「マジックアイテムのせいとか?」
「あの箱か?普通に閉まったまま机の上にあったぞ。あれのせいならわしもなってるだろう。そもそもあれは開かないしな。」
あれは夢じゃなかったのか。けどそれなら何故箱は閉まったままなんだろう。
「学校には事故で左手を負傷しているから使えないといっておいたぞ。」
と包帯を差し出してきた。ゆっくりと巻いていくがこの手には感覚というものがない。
「授業、行ってくる。」
「本当に大丈夫なのか?今日は休んだ方がいいと思うぞ。」
正直、いきなり自分左手がこんな物になったことに動揺していた。
「平気、体なんともないし・・ありがとう。ベッドまで運んでくれて。」
「そういえば宿題してないんじゃないか?先生にはこの紙を出しとけばいいじゃろ。」
何を言われるか身構えていたのに宿題のことを言われて少し脱力した。
「わかった。」
「今日は模擬戦闘なんかもあったはずじゃ。ほどほどにしとくんじゃぞ。」
頷きながら身支度をして部屋をでる。
あの夢が本当なら僕に宿ってしまった力は恐らく悪魔の物だ。絶対に知られてはいけない。