契約と悪魔の少年
最初に目に写ったのはどこまでも白い天井と床だった。向こう側の壁が見えない。ここはものすごく広いらしい。なんだか懐かしい気がするのは気のせいだろうか。
「ここは?」
答えが返ってくるはずのない質問に返事があった。
「ここは『君』の中だよ。」
振り向くと銀髪で紅い目の翼が生えた少年が立っていた。
「悪魔!?」
僕が反射的に放った魔法の鎖は少年を拘束せず、すり抜けてしまった。
「え!?」
「まぁまぁ、落ち着いてよ。契約主さん。」
「契約?なんのことだ。」
さっきから驚いてばかりだ。見るからに悪魔なのにこっちを襲ってくる気配もない。これは夢なのか?
「そんなことよりも紅茶いる?」
さっきまで何もなかったところに高そうな椅子とティーポットなどが置いてあった。
なんだか少年を警戒するのが馬鹿らしくなってくる。
「いらないからすぐ説明しろよ。」
少年は優雅に紅茶をすすると音をたてずに受け皿の上にのせた。
ものすごくマイペースな悪魔だ。
「誓約魔法って知ってるかい?」
「まぁ一応。」
誓約することで能力と、それに見あった弱点を得る魔法だったはすだ。
「君のつけた指輪は強制的誓約魔法を誘発する物だ。その能力のひとつで僕との契約が成された結果・・・・」
そこまで言われた辺りで脳がオーバーヒートを起こす。
「ちょっと待て、意味がわからない。」
そう言うと少年は
「簡単に言うと僕と君は契約したってこと。」
と笑った。
「なんで勝手に契約してるんだよ!」
箱を開けたのだって指輪をつけたのだって偶然だ。
「本当に偶然かな?」
「偶然だろ?・・って今僕口に出して言ってたか。」
「まぁ気にするな。」
凄く気になるが今は言わないでおこう。
「説明続けるよ?契約によっての能力としては『身体硬化、能力向上』とかと・・」
「別に僕は契約を結んだわけじゃ・・・」
少年はポケットから銀色ナイフを取り出した。
「?」
少年の手が霞んだかと思うと何故か僕は左手を前に出していた。
金属がぶつかり合う澄んだ音が響くとそこには弾かれたナイフと大きく、黒い金属のようになった僕の左手があった。
「『左手の悪魔』。」
僕はただ唖然とするしかなかった。
「まぁ詳しい説明は後でするから。そろそろ時間だし。」
また意識が薄れていく。
「ちょっ、ちょっと待て。」
呼び止めようとする僕は無視された。