老人と指輪
見慣れた部屋の中には老人が一人、机に向かっていた。薄暗いがとても広い部屋の中は本などがところ狭しと置かれていた。
そのなかで作業台付近のみが整頓されている。
「じいさん。入るよ。」
振り向いた老人は嬉しそうに
「アモンか。まぁここに座れ。」
と椅子の上に置かれた山のような書類やら本やらをどかした。
元第三魔導師団団長アーノルド・マーマン
それがこの前に座っている老人の名前である。
気難しく、自分が気に入った人としか喋らないじいさんではあるがかなりの有名人なのだ。
長い称号じゃがそんなのは前の話。今はただのじじいじゃよ。
昔そう言って笑っていたのを思い出した。
だが歳をとった今でもアモンは勝てないだろう、ただ謙遜してるだけにすぎない。
なぜ軍を途中で辞めて弟子を持っていないのかわからない。
「今日は敵の拠点から奪ったマジックアイテムを見せてくれるんだよな?」
「そうじゃよ。今調べとったとこじゃ。」
マーマンは今、主に多種多様なマジックアイテムを鑑定したり研究したりする仕事についている。
「例えば・・・あったほら、これじゃ。」
袋から黒に金の装飾がついた箱を取り出した。
「この箱、魔法がこもっているんじゃがどうやって開けるのかが解らん。鍵穴なし、魔法でもあかないし箱も壊れないんじゃ。困ったもんじゃのう。」
「へぇー」
こういう魔法の道具は見るだけでわくわくする。
「他のやつも取ってくるからちょっと待っておれ。」
そういってじいさんは別の部屋に向かった。
「絶対に開かない箱か~」
中にいいもの入ってそうだな~なんて思いながら普通に開けようとしてみると、その瞬間箱に紫の文字が現れ、すんなり開いてしまった。
「え!?」
中には病んだような光を放つ黒い宝石がはまった指輪が入っていた。おかしい。と思ったが体は言うことを聞かない。
僕は意思とは関係無く、好奇心に誘われるように左手に指輪をはめて・・・・・・・意識が途切れた。