6 lesson
lesson とあるのは授業と称しての世界設定説明になります。
興味の無い方は、そこの部分は飛ばしてください。
明けて翌日。
いつも通りに寝癖を直した六花が食堂に行くと、同じくいつも通り琥珀がいた。
「おはよー、琥珀」
「ーー風の姫と親しくなったのか?」
「だからまずは挨拶でしょ。
まあ、あやめちゃんとは仲良くなったけど」
「おい⁉
姫に対してー」
「本人の希望だから。
友達相手にかしこまってどうすんの?」
そういう問題じゃない、と思わず頭を抱えてしまった琥珀だった。
「おはよう。
? どうしたんだい?」
昨日と同じく、六花たちと同じ席についた黒曜が、琥珀の様子に首をかしげる。
「こいつの姫に対する態度が失礼すぎる……」
なるほど、と黒曜はうなずいた。
だけど。
「それが姫の望みだからね」
「なに?」
「公的な場合はともかく、普段は普通の友人として過ごすことを望んでいるんだよ。
もともと、僕以外は家族なんかの身内しか身近にいなかったから、学校でたくさんの人たちと親しくなるのが楽しみだっていってたから」
「ーー」
「そうなんだ」
すこししんみりしたとき、横から声が割り込んできた。
「それじゃなんでボクが近づくのはダメなのさ⁉」
「とうぜんだよ。
石榴みたいに考えなしが近くにいたら、姫が気疲れするにきまってるからね。
姫の迷惑を考えて近づかないように」
「自分はいいわけ?」
「当選だよ。
僕は幼馴染みだし」
「ずっるーい」
しんみりした空気はどこかへ行った……。
そんな話をしていると、横から二人組が近づいてきた。
「おはようございます、六花ちゃん」
「おっはよー!」
双葉と由美のふたりだ。
「おはよう。
二人も今から朝ごはん?」
「そうなの。
一緒に食べてもいいかしら?」
「もちろんだよ!」
そこで、二人は六花のそばにいる三人に気づく。
「し、失礼しました!」
「六家の方々のお邪魔をしてしまって、申し訳ありません!」」
二人はあわてて移動しようとする。
それを黒曜が止めた。
「気にしなくてもいいよ。
学校にいる間は、家は関係なく、僕たちもひとりの生徒でしかない。
白石さんや姫の友達の邪魔をするつもりもないよ。
僕たちのことは気にしないで、白石さんと朝食をとっていいから」
「あ、はい」
「では、失礼します……」
おそるおそる六花の向かいと横に座る。
「ーーそういえば、あやめ様はどちらで朝食をとられているんでしょう?」
「ああ、生徒会長と自室で食べてるよ。
ーーこれは生徒会長もなんだけど、食堂で食べると視線を集めてしまって落ち着いて食べれないから。
それで、特例として自室で食べる許可をもらってるんだよ。
ーー実際、姫が寮に入った初日はすごかった……」
あやめが食堂に入ると、ほとんどの生徒は近づこうとして、食事どころではなくなってしまっていたのだ。
「あやめちゃん……、大変なんだね……」
「だから、同姓の友人である君たちがフォローしてあげてほしいんだ。
だめかな?」
「もちろん。オッケーです!」
「そうですね」
「あやめ様にもゆっくりと学校生活を楽しんでほしいものね!」
三人の返事を聞いて、黒曜は安心したように笑ったのだった。
「ーーねえ、ボクはだめなのに、女の子はいいの?」
「ーー自分以外の男が近づくのを許せないだけだろ。
ようするに独占欲だ」
などと、石榴と琥珀はひそひそと話していた。
ーー実は聞こえていた黒曜に、その後、訓練という名の仕返しをされていた……。
ーーーー
そして迎えた最初の授業。
授業内容としては午前中は座学、午後から実技となる。
授業はすべて各クラスの担任が行うことになる。
実技の方は、三年以上の担当の教師も補佐を行うが。
三年以上の生徒は、自分の能力を把握できているため、全員自主練習となる。
「ーーまずは基礎学校の復習から始めましょう。
かつて、この世界に魔力を持つものはいませんでした。
魔獣といった存在もありませんでした。
それがいつの頃からか魔獣が現れ、人々を襲うようになったのです。
それに対抗するように人々は武技をみがくようになりました。
それで、弱い魔獣に対しては対処ができるようになります。
魔獣を倒したあとに残る魔石をつかった魔道具も作られるようになりました。
ですが、魔獣は弱いものだけではありません。
協力な魔獣に多くの人々が殺されました。
そんなときです。
六人の勇猛な戦士が現れました。
彼らは強力な魔獣であっても倒せる力を持っていたのです。
そして、強大な魔獣をおって人々が足を踏み入れない奥地に到達しました。
そこでなにがあったのかは伝わっていません。
ですが、彼らは魔力を得、また強大な魔石を入手しました。
その魔石は六芒星を描く位置に置かれ、人々が暮らす土地に結界をはったのです。
それによって、魔獣は内部に入り込めなくなり人々の繁栄が始まりました。
また、結界の中央に魔力が集まり、魔具を作成できる魔石が生まれました。
強大な魔力を得た六人の子孫は、みな大きな魔力をもって生まれるようになりました。
結界の影響による魔力の循環のために、一般の人々や、動物にも魔力が宿ることになりました。
魔力を持った動物は、高い知性を持つことになり魔獣と呼ばれる存在に変わります。
風の姫に付き従う、風狼が有名ですね。
魔力を持つものは結界に影響を与えることができる。
それを避けるために、魔力持ちは他の区に移動するときは、使い捨ての簡易魔具を所持することが義務付けられています。
みなさん、ここに来るために一度は使用していますね。
結界が張られたことで、空には月が現れるようになりました。
週のはじめの光月。
その名の通り、光属性が強くなります。
次の火、風、水、地、闇、それぞれの属性の魔力が強くなります。
週の最後、無月。
この日は魔力の増幅はなく、逆に弱まることが知られています。
十二月と一月の間、無の月は、その間魔力が弱まり、結界も弱くなります。
そのため、無の月に限り、君たち生徒も魔獣に対する警戒をしてもらうことになっています。
戦うためのすべは、十二月までに学んでいきますし、先輩方の補佐もありますから、あまり心配はしないように。
まずは、自分の能力を知ることから始めるように。
ーーそろそろ時間ですね。
では、授業を終了します」
ーーーー
「はー、疲れた」
「まあ、最初のうちは復習が主ですからね。
基礎学校で学んだことを復習するのも大事なことですし」
「うん。
だけど、やっぱり勉強って疲れる……」
「苦手ですか?」
「んー、やっぱりわたしは体を動かすほうが好きかも」
くすくすと笑いながら、六花とあやめはのんびりと話す。
そこに双葉と由美も来た。
「お疲れさまです」
「まだ復習だからいいけど、これから学ぶのって難しいこととかあるのかな……」
やっぱりそこが不安のようで。
「大丈夫ですよ。
ほとんどは基礎学校の延長ですから。
違うのは、魔物の性質についてのことと、魔力制御の実技があることですから」
「実技って、午後からだよね」
「はい。
午前中は教室で知識を学んで、午後からは魔力と魔具の使い方について学んでいくことになります。
特に、六花さんには重要なことですからね」
「どうして六花ちゃんには重要なんですか?」
やっぱりそこが疑問だったのか、六花、双葉、由美の三人は首をかしげる。
「それは、午後の授業を見ていればわかります」
理由を保留にされて、ますます困惑する三人だった。
六花の能力については次回。