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すみません。今回は二話だけになります……。

まずは一話目。どうぞ。

 それから一週間。

六花たちは訓練をそこそこに風の区の観光にいそしんでいた。


「えっと、訓練少な目だけどいいの?」

「いいんです。

 みなさん、ここに来るまでは十分に訓練をしていたようですし、休暇とは休むためのものです。

 さすがに最低限の訓練は行う必要はございますが、その他の時間はこうして楽しむことも重要なんですよ。

 ーー私たちがなんのために訓練をしているのかを、再確認できますから。

 それに、来週他の方々が来られれば、特訓を重視することになりますから、それまではこうしてリフレッシュに勤めましょう。

 メリハリも重要ですよ」

「なるほど……」

「それに、私自身風の区をこうして歩くのははじめてなので、とても楽しいです」


『監禁されていた』


 六花はその事を思い出した。

だが、その事を今訊くことはどうしてもできず、複雑な表情でただあやめを見つめていた。


「六花ちゃん、どうしたの?」


 双葉の声に我にかえると、「なんでもない」とかえして、今はこの観光を楽しむことにした。



「さて、ここが六花の故郷の町になる」


 竜胆が案内してきたのは、かつで六花が住んでいた町。

多少町並みが変わっていてもやはりなつかしく、六花はじっと見つめた。


「なつかしいな」


 ポツリとそれだけを呟く六花を、静かに見守るのだった。


 すこしして、落ち着いたのか六花が声をあげる。


「さて、ここに来た以上は、あそこにいかないとね!」

「あそこ? どこのこと?」

「ふっふっふ。

 わたしの幼なじみの家がやっている、甘味処だよ!」

「それは……!」

「絶対にいかないとだめだよ!」

「えっと……」

「ーー」


 甘味は好きだが、そこまでの勢いが必要かわからないあやめと、特に好きというわけではない竜胆は、三人の勢いにのまれて、言葉が出ない状態になってしまった。


「さ、いくよ!」

「「おー!!」」


 雄叫びをあげて、突撃していく三人をあわてて追いかける。

到着したのは、こぢんまりとした一軒屋。


「こんにちは!」


 六花が元気に挨拶しつつなかにはいると、おどろいた様な顔をする女性と少年がいた。


「六花? いつ帰ってきたの?」

「おかえりなさい、六花ちゃん」

「うん! ただいま!」


 三人は回りを忘れたように、近況報告を始める。


「あの、六花さん?」


 話の隙をついて、あやめが六花に訊ねる。


「そちらの方々は?」

「あ、ごめん。

 ここの女将さんと、わたしの幼なじみ。

 子供の頃はよくお世話になったの!」


 にこにこと嬉しそうな六花の勢いにまけつつ、あやめたちも挨拶をする。


「ーーえ? まさか……」

「ご当主のご子息であられる、竜胆様と風の姫様、ですか……?」

「うん、そうだよ。

 あやめちゃんとかいちょ……竜胆さまにはずいぶんお世話になってるんだ」

「「ーー」」


 呆然とするふたりに苦笑を浮かべると、あやめが口を開いた。


「ーーよろしければ、こちらの甘味を味わってもよろしいでしょうか?」

「あ、は、はい!」


 あわてて準備に向かうふたりを六花もおう。


「手伝います!

 あ、みんな何が食べたい?」

「六花のおすすめでいい」

「そうですね。

 ここの味をよく知っているのは六花さんで小から」

「あたしたちもそれでいいよ」

「そうですね」


 全員の了承をえて、六花は奥に向かった。


「ーー六花、ずいぶんあの方々となかがいいね?」

「もちろん!

 大事な人たちだもの!」

「ーー」


 身分を気にせずに大事だと言い切る六花を、幼なじみは寂しそうに見つめた。


「今、楽しい?」

「うん、もちろん!」

「そっか、よかった」


 そして甘味を準備すると、六花と幼なじみがテーブルに運ぶ。


「おまたせ!」


 みんなで味わって食べる。

上質な味わいに、舌鼓をうちつつ、これからのことを話し合う。


「どうする?

 六花が望むなら、今日はここでこのまま過ごしても構わないが?」

「あ、いえ。

 できればお墓参りにいきたいので。

 よろしいでしょうか?」

「もちろん、かまいませんよ。

 私も六花さんのご両親にご挨拶したいですから」

「そうしましょう?」

「うん!」

「みんな、ありがと」


 そして食べ終わるとすぐに店を出て、六花の両親の眠る場所へ向かう。

 途中で買った花束を供えて、静かに手を合わせて黙祷をする。


「ーーそれじゃ、帰ろっか?」

「もう、よろしいのですか?」

「うん。

 また、次の長期休暇で来ればいいし、こうしてみんなを紹介できたこともよかったし」


 にっこりと微笑む六花に、みんなも笑いかえす。


「それでは今日は帰ろう。

 明日は別の名所に案内する」

「ほんとですか! 楽しみです!」


 真っ先に賛同する由美にあきれたような顔をする双葉。

 それを見守るあやめに、苦笑する竜胆。

 一緒にいる友人たちに、感謝の思いを込めて、六花は満面の笑みを浮かべた。



幼なじみはスポットです。今後はでてきません。

次は12時です。

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