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最後、三話目。
約束の日、六花は風の区に降り立った。
先に来ていたらしい双葉と由美もいる。
「ひさしぶりだね!
元気だった?」
「六花ちゃんも元気そうで何より」
「ちょっと楽しみだね。
あやめ様ってどんなところにすんでるんだろうね?」
和気あいあいと話をしていると、迎えの竜胆が来た。
「三人ともひさしぶり。
元気そうで何よりだ」
私服姿でにっこりと微笑む様子に、三人とも思わずボーッとしてしまった。
「あ、お久しぶりです!」
「あやめ様はお元気ですか?」
我に返ってあわてて挨拶をする三人に苦笑を浮かべると、車の方を指す。
「あやめは元気だよ。
これから、あやめの住む別宅の方に向かうから。
車でも半日かかるから、疲れたらいってくれ」
「半日?」
驚く三人。
まさか、そこまで時間がかかるとは思っていなかったのだ。
「紫神の実家はそこまで遠くはないんだけどね。
あやめは事情があって、別宅の人があまりすんでいない方にいるから。
ーーその方があやめ自身楽であることも事実だからな……」
「え?」
疑問に思いつつも、まずはあやめのもとに向かうことになった。
途中、何度か休憩を挟みつつ、紫神の別宅に向かう。
その途中の甘味に虜になってる三人だった。
「風の区のお菓子って、独特だけどスッゴク美味しいよね」
「ほんとね。
ここはお菓子に限らず、食べ物がかなり独特だから、すこしたのしみだもの」
「風の区は四季がはっきりとしていて、湿気も多いから、ここでだけ育つ植物が多いんだよ。
だから、食べ物の特色もかなりあるんだ」
「六花ちゃん、ずいぶん詳しいんだね」
「もちろん!」
「ああ、六花はここの出身だったか」
「え、そうなの」
「うん、そうなんだ」
えへへへ、とちょっと嬉しそうに笑う六花。
両親を亡くしてから、風の区に来たのははじめてだった。
それが、独りではなく、友人たちと他の友人に会いにいくという理由であることが、嬉しく感じれていたのだ。
「そっか。
じゃ、ずいぶん懐かしいんじゃないの?」
「うん」
「ーーあとで、実家のあった辺りも案内しよう。
いきたいところもあるんだろう?」
竜胆の言葉に、驚いたような表情をする。
そして、はにかんだ笑みを浮かべた。
「はい。
どうしても、いきたいところがあります」
「ーーそうか。
まあ、それは後日だ。
今日はまっすぐに別宅に向かうからな。
あやめも、君たちが来るのを心待にしているから」
「「「はい!」」」
三人は元気に返事をする。
大事な友人である、あやめに会うことを、とても楽しみにしているのだから。
そしてしばらく移動が続き、三人とも思わず眠ってしまっていたようだった。
「着いたぞ」
竜胆の声で目を覚ますと、あわてて車から降りた。
「ーーいらっしゃいませ、皆さん」
穏やかに微笑むあやめに、嬉しそうな満面の笑みを浮かべた三人は、あやめに向かって走った。
「あやめちゃん! 元気だった⁉」
「あえて嬉しいです!」
「お世話になります!」
三人の様子にあやめも嬉しそうに返す。
「はい。
皆さん、これからしばらくは、一緒に休暇を楽しみましょう」
「もちろん!」
楽しそうな四人の様子を、穏やかな目で竜胆と車の運転手が見つめていた。
三人が来たときは、いつも通り眼鏡をしているあやめです。
本日の投稿はこれで終了。
次回は6月4日予定。




