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「うおー!」

「逃げるな!

 ちゃんと的になりなさいよ!」

「逃げなきゃ当たるだろー!」

「だ・か・ら、当たりなさいよ!」


 ギャーギャー言い合いながらの追いかけっこを、同じく訓練中のクラスメイトが呆れた様に観ている。


「えっと、あれ、いいの?」

「あまりよくはないですね。

 いまだに晶はなぜ月島さんがああ言っているのかを理解していないようですから」

「えっと、追いかけるのはいいの?」

「的にするのはいいんです。

 問題は、全部避けちゃってることでしょうか?」

「えっと……」


 意味が解らずに、戸惑う六花。


「自分で、理解しないと、意味はない」

「え?」


 珍しく口を開いた翡翠に対しても、やはり意味が解らずに首をかしげる。


「まあ、あちらは月島に任せておけばいいだろう。

 ーーどちらかというと、私はあちらが気になるな……」

「あー、それもありますねー」


 疲れたようにそちらの方に視線を向ける。

ーーそこには生徒を指導する海人の姿があった。


「こんなこともできんのか!

 ここを制御するには、まずは……」


 かなりの大声で、こちらまで聞こえてきている。

しかも、直接ではないにしろ手もでる。

ーー叱って手をだして、地面にそのせいで穴も空いている……。


「ーー本当に、過激、ですね……」

「あやめちゃんがいってたのって、こういうことなんだね……」

「む……」


 三人してその様子を見て、思わずため息をついてしまった。


「ーーこの調子ですと、そこら中穴だらけになるのも、そう遠くはない気がします……」

「ーー翡翠……、穴埋めを頼んでもいいか……?」

「ーーはい。

 ほかの地属性の者の手も借りて、授業が終わり次第直しておきます」

「たのむ」


 はあ、と疲れたため息をつく竜胆。

それと比べれば、たしかに、


「まちなさい!」

「じょーだん!」


 という追いかけっこをしているだけのふたりは、まだましなのだろうとも思えた。


「なんか、先が思いやられる、かな……」

「そうですね……」


四人でそろって、ため息をついてしまっていた……。


  ーーーー


「はあ……」


 訓練を終えて、恒例となっているあやめの部屋でのお茶会。

今回は華衣も来ていた。

 そこで先ずしたのが、全員でのため息だった。


「ーーほんっとに、すごい人ですねー、あの講師の方」

「ほんとに、かなり離れた場所まで、怒声と破壊音が聞こえてきますし」

「ーー教え方自体は、分かりやすいんですけど……」

「穴だらけだったね……」

「まったく、なんであいつは避けちゃうのよ!」

「「ーー」」


 ーーひとりだけ、別な理由のため息だった。


「えっと、月島さん?」

「ああ、名前でいいよ。

 お茶に誘われるくらいには、仲良くなれた訳だし」

「あ、うん。

 それじゃ、華衣ちゃん?」

「なに?」

「なんで晶くん、的にしてるのかな?」

「あ、それ気になる!」

「あやめさまも、そうするように仰っていましたよね?」


 やっぱり、気になるか。

思わずアイコンタクトをしたあやめと華衣。


「うーん、言ってもいいのかな?」

「いえ、本人が自覚するまではそのままで」

「やっぱ、その方が?」

「どこで聞き付けてくるか、分かりませんし」

「だーかーら!

 ふたりでわかりあってて、わたしたちは除け者なの⁉」


 六花の叫びに、うんうんと頷く双葉と由美。

あー、そっちかー、とひとりごちる華衣。

そして。


「ーー他人に教えられるよりも、自分できづいたほうが身になる、ということです。

 確かに教えてしまうのは簡単ですが、自分の魔具の事である以上は、晶自身が気づかなければ意味はないでしょう」

「ーーだから、言えない?」

「はい、今は」


 三人は顔を見合わせる。

そして、


「しかたないか」


と、諦めるのだった。


「だけど、紫神様がご自身で気づかれたなら、教えていただけますよね⁉」


かなり、気になっているようで。


「もちろんですよ」

「まあ、けっこうヒントも出てるんだけどね」


あやめと華衣の言葉に、理由を考えてみる三人だった。



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