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 授業を終え、迎えた午後の実技。

最初に今月の実習先の発表と、班分けがあった。


「あれ?」


 実習先が水の区、というのはいいとして、班分けのなかにあやめの名前がなかったのだ。


「なんで、あやめちゃんが入ってないの?」

「それはおそらく……」


「あやめを水の区にやれるか」


 不機嫌そうな竜胆が割って入った。


「えっと」

「先日も申し上げましたが、水の区のご当主が私にご執心なのです。

 ですが、私自身はあの方が苦手ですので、お兄様が手を回してくださったのでしょう」

「私だけではなく、校長も同じ考えだったからな」


 ふう、とあやめはため息をついた。

それほど青神の当主を苦手としているのだ。


「それじゃ、わたしの班はわたしと双葉ちゃん、琥珀と……晶くん?」

「引率はお兄様のようですね。

 琥珀さんと晶がいますので、引率はお兄様だけでよろしいと先生方もお考えなのでしょう」

「ふーん」


 六花たちが班分けについて話していると、双葉、琥珀、晶が近づいてきた。


「六花ちゃん、今回は一緒の班だね」

「うん。

 よろしくね」

「よろしくー、六花ちゃ……」


 スパーン!


 六花に抱きつこうとした晶を、あやめがハリセンで殴り飛ばした。


「姫ー、なにすんだよー」

「ーー自分の胸に聞いてください?」


 冷笑を湛えながらの返答に、竜胆を抜かす四人は、おもわず震え上がったのだった。


「ーー晶、お前はいい加減自分の行動を省みろ」

「えー? 別にオレ変なことしてないでしょー」

「六花さんに手を出そうとすることは、十分に私を怒らせることだと、認識してください」


 相変わらずの冷笑を湛えたままのあやめに、他の三人が焦った。


「あ、あやめちゃん!

 わたしは大丈夫だから!」

「晶がおかしな真似をしないようにきちんと見張っておく!」

「わたしはいつも六花ちゃんと一緒にいるようにしておくから!」


 三人に軽く視線を送ると、あやめは晶に一言告げた。


「ーー私がいないからと、おかしな真似をしたら……」

「ーー私に張り倒されると、覚悟をしておくことだ」


 あやめのセリフを竜胆が引き継ぐ。

表情もなく見つめられて、さすがの晶も脅えたようすをみせた。


「わ、わかりました!

 実習中は、女の子を口説きません!」

「よろしい」


 おうように頷くあやめと竜胆。

 とりあえず、二人が落ち着いた様子を見せたことで他の三人も胸を撫で下ろすのだった。


  ーーーー


 そしてむかえた、水の区での実習。

初日、双葉以外のメンバーは、水の区に来たことがあったため、竜胆を抜かした三人で双葉に説明をしていた。

 その竜胆は、青神の当主のもとにいっていたが。


「ーーそんなことがあったんですね」

「うん。

 離れた場所からの狙撃ができるなら、琥珀に任せちゃうと簡単に終わるね」

「だが、細かい魔物が相手だと、かえって俺の魔具は使いづらい。

 それなら魔具なしで魔力を放つか、魔道具を使った方がいいだろうな」

「そういう魔道具もあるんですか?」

「うん、あるよー。

 もっとも、最弱の魔物相手に一般の人が使うようのものだから、威力はあんまりないんだけどねー」


 この説明に感心したように頷く六花と双葉。

このあたりの知識については、六家の人間には敵わない。

 食堂で、新鮮な魚料理をつつきながら話していると、竜胆が戻ってきた。

 その傍らには、見たことがない男性も一緒だったが。


「紹介する。

 こちらは青神のご当主の側近をされている、青神海人あおがみかいとさんだ。

 今度、学校での実技の講師として入るため、今回の実習で私たちと共に行動をすることとなった。

 その働きにより、彼の今後を判断することとなる」


 その判断役は、竜胆なのだが。


「よろしく。

 ーーところで、風の姫はどうしているのかな?」

「姫なら、学校で留守番だ」

「うん。

 ここには来たくないっていってた」

「まー、こっちには苦手な人がいるからねー」

「ーーあのようなあやめ様は、初めて見ました」

「ーー」


 全員からの返答に、おもわずため息をつく海人だった。

実際のところ、海人自身は姫についてあまり関わる気はなかった。

だが、力のある魔族が水の区に来てくれると助かるとは思っているので、学校で優秀な人物を見極めるつもりでいるのだ。


「ーー私自身は姫にあまり関わるつもりはありません。

 ですので、どうかよろしくお願いします」


 四人は顔を見合わせると、代表して琥珀が答えた。


「あまりよろしくするつもりはないが、とりあえずは見極めさせてもらう」


 ほかの三人も頷く。

六花たちにとって、あやめは大切な友人だからだ。


「ーーわかりました」


 海人も今は仕方がないと、引き下がることにしたのだった。

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