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「はあ、やっと終わった……」


 魔物との交戦の余波で、いまだに揺れ続ける船の上、六花は大きく息をついていた。


「ーーこれで、もう大怪我する人とかはいなくなるよね……」

「ーー再び、あのような魔物が現れない限りは、大丈夫です」


 魔物との戦いは、終わることはない。

それでも、通常の魔物相手ならば、そこまでのひどい怪我をすることは油断さえしなければあまりないのも確かだった。


「ーーうー……」


 唸り声に二人が振り向くと、黒曜が船縁から顔を出して吐いていた……。


「ああ、そういえば黒曜は船が苦手でしたね」

「そうだな。

 水の区での魔物退治の度に、必ず船酔いをしているからな」

「あれ、でもさっきまでは……?」

「あれか。

 戦いの緊張があるうちは、船酔いをしないという」

「そういうことだ。

 黒曜が酔うのは、常に戦闘のあとだけだからな。

 たぶん、緊張が解けると、一気にくるのだろう」


 すこしあきれた様子で黒曜を見つめる六花、竜胆、琥珀。

あやめはそんな竜胆の背中を優しく撫でていた。


「とりあえず、陸に戻って休み……」

「いや! 陸に戻ったら、さっさと学校にもどろう!」


 急に元気になった黒曜に、あやめが目をぱちくりとする。


「ああ、そういえばあれがあったか」

「そうだな。

 すぐに学校に戻ろう」


 頷き合う三人に首をかしげる六花。

理由について見当がつくあやめは、すこしげんなりとした様子だった。


  ーーーー


「ふうん?

 それじゃ、魔物退治してすぐに帰っちゃったの?」

「はい」

「そうなんだー。

 せっかくお礼の準備をしていたのにねぇ。

 まあ、それじゃ次の機会にしておこうかねぇ」

「ーー」


 ふふふ、と笑みを浮かべる青神の当主に、側近の青年は頭をたれた。

お読みいただき、ありがとうございます。

これにて、水の魔物退治終了。

怪しい青神の当主が今後出てくるかは不明です。

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