前に書いたお話のリメイクです。
よろしければ、楽しんでください。
文章は硬め、シリアス成分の方が多いかもしれません。
彼の胸を何かが貫いた。
そして、口から血を吐いて倒れた。
わたしはその瞬間に全てを思い出す。
この光景を数えきれないくらいの回数見た。
なんども、なんども。
彼が命を失い、私もまた命を落とす。
どのような道を選んでも、それは変わらない。
ーーわたしは、彼を救いたいだけなのにーー。
誰かがわたしの名を呼んだ。
振り返った瞬間、彼と同じように胸を何かが貫く。
誰かの声も、わたしの意識も、遠くなっていくーー。
そして、わたしの命が尽き、また、過去へと遡っていく。
また、彼は命を落とした。
また、彼を救えなかった。
また、わたしも命を失った。
また、ーー。
いつまで続くの?
いつまで繰り返せばいいの?
わたしでは彼を救えないの?
「ーーたすけて……」
はじめて、声をあげた。
「たすけて……」
もう、わたしにはどうしたらいいのかわからない。
「たすけて!」
だから、声をあげる。
お願い、誰か助けて。
わたしでは、わたしの力では、彼を救えない。
「誰か! 彼を助けて!」
「ーー助けるわ。『彼』も『あなた』も」
「ーー助けよう。それを我らも望むから」
ーー声が返ってくる。
諦めていた心があたたかくなる。
深く傷ついていた魂が、少しずつ癒されていく。
「今は、お眠りなさい。全てを忘れて」
「君が目覚めたとき、我らは君の傍で力になるから」
声に導かれるように、わたしは眠りにつく。
ーー魂が直接触れているからだろう。
この声の持ち主は、わたしを助けてくれようとしているのがわかる。
彼のことも助けてくれると信じられる。
だから。
「お願い。彼を助けて……。
わたしに、彼を、助けさせて……」
「助けましょう、『彼』を」
「助けよう、『君』を」
うわごとのように願いを告げる。
声は『助ける』といってくれた。
だから、安心して眠りについた。
ふたたび『わたし』として目覚めるための眠りに。
今度こそ、『彼』とともに生きることのできる未来を手に入れるために。