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一方その頃。
華衣をずりずりと引きずっていった先は、今は人気がない校舎の裏だった。
「ーー結界は張りました。
ここで何をしても周りからは見聞きすることはできません。
ーーこれで、ゆっくりとお話ができますね」
「まったくだね。
こっちの思惑を無視するような行動をしてくれるし、そのせいで白石さんも参ってきているし」
「なによ!
あんたたち、いったいなんなのよ!」
「あら?
わかりませんか?」
「察しはにぶいんだね。
ーー僕たちも君の同類だというのに」
「は⁉」
まじまじとあやめと黒曜をみつめる華衣。
同類、その言葉の意味するところは。
「ーーあんたたちも転生者なの?」
おそるおそる訊ねる華衣に、二人はにっこりと笑いかけるのだった。
ーーーー
時々後ろを振り返る六花に、竜胆は苦笑する。
「あの二人なら大丈夫だ。
おそらく、二人に害をなすことができるとしたら、身内かもしくは世界を滅ぼせるだけのちからを持つ魔物だけだ」
「へ?」
おもわず変な声を出してしまう六花。
当然だろう。
世界を滅ぼせる魔獣なんて、いるはずもない。
「ーーそんなに強いんですか?」
「ああ、物凄く強い」
はっきりと肯定する竜胆に、呆然と視線を向けることしかできなかった。
「あー!
竜胆さん、なにしてんですかー!」
急に上がった叫び声の方を見ると、そこのは他の六家のメンバーと双葉、由美がいた。
「なにって……あ!」
ずっと手をつないだままだったことに気づいて、慌てて離れた。
「例の彼女が六花に詰め寄っていたから、連れてきただけだ。
いま、彼女の相手はあやめと黒曜がしている」
双葉と由美はそれを聞いて、あやめのことを心配していたが、他のメンバーは逆にご愁傷さま、という気分になっていた。
「あの、心配じゃないんですか?」
そのことを不思議に思って訊ねると、
「ーーあの二人に勝てる存在はないだろ」
という答えが返ってきた。
「たしか、各家の当主でも、あの二人に舌戦で負けたってきいたことが……」
「ああ、俺は黒曜が父をやり込めたところを見たことがある。
政治で多くのタヌキたちを相手に勝てる父でさえ、勝てなかったからな……」
どこか遠い目をして、琥珀は呟いた。
「つまりだ。
あの二人は、戦闘技術でも、政治などの論争でも、他者を寄せ付けないほどの能力を持っているということだ。
あれをみれは、張り合うのも馬鹿馬鹿しくなるくらいだからな……」
全員が深く同意してうなずくのに、おもわずあっけにとられる女子三人だった……。
「それで、六花の気分転換をかねて、例のケーキ屋に行こうとしていたところだ」
「あ、あそこ! すっごく美味しいですよ!」
目を輝かせる双葉と由美。
「それじゃ、みんなで行こうよ」
石榴が音頭をとって、みんなでぞろぞろと歩き出す。
他愛もない話をしながら、みんなでいくのを、六花は嬉しく感じていた。
店について、ケーキを食べながら雑談をしていると、あやめと黒曜も合流した。
「話はすんだのか?」
「はい。
しっかりと釘を刺しておいたので、もう大丈夫です」
「必要ならこちらから打診すれば、手を借りれますよ」
「そうか」
あやめ、黒曜、竜胆の話の内容をすこし疑問に思いながらも、今、この時をみんなで楽しむのだった。
ーーーー
ーーまさか、まさかこんな事実が隠れてたとは……。
そうね。たしかにあたしはそれを知らなかった。
だからといって強要とかしたら、大変なことになってたわけね……。
はあ、仕方ない。
いまは遠目に傍観するだけにしておこう。
あの二人がいった通り、必要なときまで、自分を磨いて。
ーー本当のハッピーエンドをみないとね!
別名、転生者は誰だ! でしょうか。




