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 そして午後の授業。


「まずは今月の実習における班分けをします。

 今月はそれぞれの班で、連係を意識した訓練をします。

 まずは班ごとに分かれてください」


配られたプリントを見て、六花は首をひねる。

他の班は四年の先輩二人に一年の生徒が四人か三人。

だけど、六花を含めた班は、引率は生徒会長の竜胆。

他は一年で六花、あやめ、由美、石榴、瑠璃の五人だった。


「ーーそういうことですか」

「? どういうこと?」

「つまり、私も引率者扱い、ということです。

 引率者二人が四人のみるよりも、三人をみる方が危険は少なくなります。

 もともと私の授業での立ち位置が教師の方々に近かったために、このようになったのでしょう。

 六花さんと石榴さんは近接、由美さんと瑠璃さんは中衛もしくは遊撃の位置になるでしょうから、バランスはとれていますね」


 プリントをみながら納得したようにうなずくあやめ。

由美は六花とあやめが一緒なので嬉しそうだったが、双葉の寂しそうな様子を見て、はしゃぐのは遠慮したようだ。


「わたしは別の班ですね」

「あ、でも琥珀と一緒だね。

 わたしからしっかりとお願いしておくよ」

「頼まれるまでもない」

「わ」


いきなり琥珀が後ろから割り込んできた。


「俺にとっても水原は友人だからな。

 危険がないようにちゃんと見ておく」

「あ、ありがとうございます。

 よろしくお願いします」


 琥珀はうなずくと、双葉をつれていった。


「ーー意外と面倒見がよかったりするのかな?」

「そうですね。

 琥珀さんは、身内には甘いところがありますから。

 六花さんしかり、双葉さんしかり」

「そこにわたしも入るの」

「はい」


 横で納得したように由美はうなずいていた。



 それぞれの班で分かれて、まずは話し合いが始まった。


「それでは、この班の引率は私がすることになる。

 ーー正確には私とあやめだな。

 よろしく頼む」

「「よろしくお願いします!」」


六花、由美、石榴、瑠璃が頭を下げる。

あやめは静かに見守っている。


「今回の実習先である地の区の魔物だがーー」


 竜胆の説明を聞いている四人から視線をはずして、他の班の様子をみる。

ーーやはり華衣がこちらを見ていた。

 口元に手を当てて、なにかを考えているようだった。


「(彼女とはいずれ話をしなければなりませんね……)」


 思うことがあるあやめは、意識の一部でずっと華衣を観察していた。



 そして数日後。

午後の授業はそれぞれの班での連係を主にしての訓練となっていた。

ただ、六家の者が加わっている班は、後半には他のクラスの手伝いにいってしまっているため、訓練は実質半分しかできてなかったが。


「ーー大丈夫なのかな……」


 ふと、不安そうに呟いた由美にあやめが答える。


「大丈夫ですよ」

「え⁉」


独り言のつもりが返事が返ってきて驚いたようだった。


「瑠璃さんは周りの方を見て、合わせるのが上手なんです。

 ですから、他の人に教えるときも分かりやすいんですよね。

 今の訓練は連係のためですから、瑠璃さんは心配要りませんよ。

 ーーどちらかというと、石榴さんの方が心配ですね」

「? なんで、石榴くんが心配なの?」


 石榴は前衛で積極的に前に出ればいい。

なんとなくそう考えていた六花は不思議に思ったようだった。


「ーー赤神の火の属性。

 その意味をあまりよく分かってないようなので心配なんですよ。

 本人の性格からすると、気づきにくいのは確かですが……」


 その意味を知っている竜胆は苦笑。

意味がわからず、六花と由美は首をかしげた。


  ーーーー


 数日後。

普段の放課後は、あやめとの訓練だったが、緊急の用事ができたとかで、六家の全員は生徒会室にいっていた。

 本来なら双葉と由美が一緒にいるはずだったが、急に教師に呼ばれたとかで、席をはずしていた。


 そして一人。

先に訓練場に向かっている途中、目の前に月島華衣が現れた。


「白石六花さん。

 すこしお話ししてもいいでしょうか?」

「ーーわたしになんの話があるんですか?」


 ここのところ、ずっと彼女の視線が向いていたため、少々疲れていたのだ。

ここで話を聞いて、それがなくなれば楽になると、六花は話を聞くことにした。


「ね、白石さん。

 恋愛、したいと思いませんか?」

「はあ⁉」


 いきなりの突拍子もない言葉に、おもわず声が出た。


「ですから、恋愛、です。

 せっかくの学校生活なんですよ?

 勉強や訓練だけじゃつまらないじゃないですか。

 それより、たくさんの人と知り合って、恋を楽しむ方がいいと思いませんか?

 白石さんがその気なら、あたしがお手伝いしますよ?

 六家の方々なんてかっこいい人たちが側にいるんですから、やっぱり彼らとの恋を楽しむべきですよね」


 うふふふ、と楽しそうに笑いながら口にする華衣にすこし怯えたように後退りした。


「わ、わたしはそんな気はないから!

 あやめちゃんや会長と訓練してる方がいいから!

 それじゃ!」


 あわてて逃げようとする六花を、華衣が捕まえる。


「ダメですよ。

 やっぱりヒロインは恋愛しないと……」


 スパーン!!


かなり派手な音がして、華衣の頭にハリセンが落ちた。


「あ……」


そこにいたのはあやめと黒曜、それに竜胆だった。


「ほんとにはた迷惑な方ですね」

「まったくだ。

 あやめ、そいつに関しては任せていいのか?」

「はい。

 きっちりとお話をさせていただきます」

「大丈夫ですよ。

 僕も付き合いますから」

「ああ、任せる」


 そして、華衣はずるずると黒曜に引きずられていった。


 ふう、とひとつ息をつく六花の頭を竜胆が撫でた。


「大丈夫か?」

「はい。

 だけど、あの人……すっごく怖かったです……」


珍しく弱々しい感じの六花の手を竜胆がつかむ。


「今日の訓練はなしだ。

 その代わり、美川に聴いた美味しいケーキの店に行こう。

 ーー今の状態での訓練は、逆効果にしかならないからな」


六花自身、精神的に疲れているのを自覚していたため、そっとうなずいた。


「はい。

 ーー今日はとにかく、頭を休めることにしておきます……」

「その方がいい。

 さ、いくぞ」


 そういって、竜胆は六花の手を引いたまま、街に向かうのだった。

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