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11 Lesson

「ほんと、なに考えてんだか」


 あきれたような石榴の言葉が、全員の気持ちを代弁していたともいえる。

六家はもともとほかの生徒たちとは立場が違う。

あくまで、生徒たちが魔力制御をするときの見本となるために在学しているだけなのだ。

 魔力順なのでクラスは一緒だが、基本を学び終わったあと、五月からは実習の時ほかのクラスに出張することになる。

 幸い六花もだいぶ制御ができるようになってきてるため、六家のメンバーもすこし安心できてたりする。


「ーーところで六花さん、なにかありましたか?」

「え?」

「そういえば、珍しく寝坊してたし」

「髪を直す時間さえなかったのははじめてですよね?」

「ーー」


 無言でちょっと微笑んだ六花。

普段との違いに気づいてくれたのが嬉しかったのだ。


「大丈夫。

 ちょっと変な夢見ただけだから」

「ーーひょっとして、五月の実習で怪我をする夢とか?」

「近いかな……」

「では、魔物に殺される夢ですか?」

「! どうしてわかったの⁉」


 あやめに当てられて驚く六花。


「昨日、実習の事を話しましたし、黒曜への返事は近いだったのでもしかしたらと思ったのです。

 六花さんの表情も暗い感じでしたから。

 だけど、心配はいりませんよ。

 六花さんの班には、必ず私とお兄様が入りますから」

「え?」

「どういうこと?

 なんで竜胆さんが来るの?

 竜胆さんまだ三年だよね?」


 晶の質問は当然のことだろう。

引率が四年の生徒ではなく、三年の生徒会長だというのは、前代未聞にちがいない。


「ーーいろいろとあるのです。

 そう、いろいろと……」

「そうだね……」


 なにかを知ってるらしいあやめと黒曜は、遠い目をするのだった……。



 教室に入ると、一瞬注目を集めるが、さすがに慣れたらしいクラスメイトたちはすぐに視線をはずす。

 そんななか、変わらずに見つめてくる視線があった。

月島華衣だ。


「わたし、月島さん?になんかしたっけ?」


 首をかしげる六花。


「いえ。

 とくに関わったことはないですね。

 黒曜、彼女はどのような方だかご存じですか?」


 華衣が闇属性だったため、黒曜に訊ねる。


「たしか、今期の闇属性の魔族のなかではもっとも強い魔力を持っていたはずだよ。

 あと、知識については優れてると聞いてるかな。

 ただ、魔力制御は今一つ、かな?」


 魔力が強いと制御が難しいのは当然のこと。

それで苦労している六花は、そのせいかなとも思う。


「わたしが六家の人たちに付きっきりで教えてもらってるからかな?」


 とくに風の姫と生徒会長に。

特別扱いされている自覚はあるのだ。


「ーーとりあえず、しばらくは様子を見た方がいいだろう」


 琥珀がそういったとき、時間になって教師が入ってきた。


  ーーーー


「さて、今日はこの世界の地理について勉強したいと思います。

 まず、それぞれの区の位置ですね。

 北に光の区、南に闇の区、北東に風の区、北西に火の区、南東に水の区、南西に地の区があります。

 光の区は年中気温が高い熱帯地方となっています。

 そのため、特殊な果物などがよくとれますね。

 逆に闇の区は気温が低い寒冷地帯で、一年中雪と氷におおわれた地域です。

 その代わり、丈夫で良質な木材などがとれます。

 また、こちらでしか採れない草花などもあります。

 北西の火の区は夏と冬がながく、春と秋が短い。

 また、寒暖の差が大きいことでも知られています。

 こちらは良質な鉱石などが採れるため、魔道具の基礎部分など工業が発達しています。

 北東の風の区では四季は均等で、湿気が多めの地域になります。

 そのため、稲作など和風の食物がいろいろと作られています。

 南西の地の区は同じく四季ははっきりとしていますが、空気は感想気味のため、麦など洋風のものが主流です。

 南東の水の区は、唯一結界内に海がある地域で、様々な海産物がとれることで有名です。

 ちなみに、風の区では和風、地の区は洋風などと呼ばれていますが、最初に誰が言い出したのかは不明となっています。

 何となくで呼び始めたのかもしれませんね。

 今月末には実習があります。

 地の区へいくことになりますので、皆さん地の区についての予習を欠かさないようにしてくださいね。

 実習について詳しくは後日に連絡をします。

 以上で、授業をおわりにします。

 お疲れさまでした」


  ーーーー


「ーーなんか疲れた……」

「授業中もずっと見ていたな」


 華衣の方をみながら、琥珀が言った。


「監視してたの?」

「一応な」


 六家の全員が華衣の方をみる。

さすがに注目をあびて慌てたのか、いそいで片付けて教室を出ていった。


「なんなんだ、あいつは?」

「六花ちゃん、大丈夫ですか?」

「ーーなんとかー」

「一応、一人にはならないように注意しておいてください。

 ーーもっとも普段から部屋以外では一人ではないですね」

「んー」


 実際、女子四人で行動することが多く、普段はそこに六家の誰かが加わるという形が多い。


「あ、あの、そろそろいかないと……お昼……」

「そうだった!

 今日のお昼はわたしの好物だったんだ!」


 がばっと起き上がると六花は全員を急かして食堂に向かう。


「ーーなんで昼の内容を知ってるんだ?」

「食堂のおばさんと仲良くなったから!」


 琥珀の疑問に元気に答える六花。

その様子に琥珀はあきれ、ほかのメンバーはなんとなくほっこりとしていたのだった。

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