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全員の能力確認が終わると、その日の授業は終了となった。
六花はその場で、あやめに頼み込んだ。
「お願い! あやめちゃん。
わたしに制御法を教えてほしいの!」
「一応、制御については、次の授業からの予定ですが?」
「だけど、わたしのあの魔力、もしなにかあって暴走したら学校ごと吹き飛ばしちゃいそうだもの。
そうなる前に、最低限の制御だけでも早く覚えたいの!」
「わかりました。
それでは、魔具に魔力を通す方法を教えますね」
「それと、君の魔具は長剣、つまり直接敵に切りかかる武器でもある。
その扱い方の基本も教えてあげよう」
「え⁉ 生徒会長が⁉」
「ーーお兄様の趣味は、様々な武器の扱いを覚えることだったんです……」
なにかを思い出したように、思わず遠い目をするあやめだった……。
「ま、まあ、それは置いておいて、早速始めよう」
「はい!」
そうして、六花の訓練は始まったのだった。
「あの……」
「あれ、どうしたの双葉ちゃん、由美ちゃん」
「うん。
できればあたしたちも教えてほしいと思って……」
迷惑かと、遠慮がちに問いかけてきた。
「申し訳ございませんが、今日はご遠慮いただけますか?
ーー今日の授業で、全力で魔力を放ったことで、お二人とも魔力がだいぶ減ってしまっています。
明日からなら、そこまでの魔力は使用しませんから、訓練はそのあとのほうがよろしいでしょう」
「そうだな。
訓練といっても、ひたすら鍛えればいいというわけではない。
適度な訓練と休息は必要となる。
魔力量が多い上に、魔眼の補助があった六花くんはともかく、君たちは今日はゆっくりと休むべきだろう」
適度な訓練と休息が必要。
たしかに、自身の魔力が減っているのは自覚していた。
二人は顔を見合わせると、あやめたちに向かってうなずいた。
「わかりました。
今日はゆっくりと休ませてもらいます」
「そのかわり、明日からはあたしたちも一緒に訓練させてくださいね!」
「もちろんです」
にっこりと笑って了承をくれたあやめにほっとして、二人は寮に帰っていった。
「それじゃ、早速始めよう!」
元気のいい六花の声で、訓練は始まった。
ーーーー
日が落ちる頃、ようやく訓練を終えて、六花はあやめと寮に戻ってきた。
「はあー。
魔力を通すのはともかく、剣の基本ってのがなんていうか……」
「体が馴れていない状態では、仕方がないですね。
ましてや、かなり特殊な剣ですし」
基本の魔力の通し方は、魔力量以外はなんとかなる。
これを難しいという者は、そもそも魔力を得ることはない。
だけど、剣という扱いに訓練が必要なものは、どうしても馴れるまでに時間がかかってしまう。
「しかたない。
こっちは地道にいくとしよう……」
「その方がいいですね。
あせると逆に上達しないものですから」
「そういうもの?」
「そういうものです。
ああ、そうでした。
六花さんも今日は一緒に夕食を食べませんか?」
「え、いいの?」
「はい。
お兄様の部屋でいつも食べてるんですけど、やっぱり食事は大勢で食べたほうが美味しいですから」
「そうだよね!
うん、一緒に食べる!」
「決まりですね」
まずは着替えてから、ということで一旦自室に戻ってから、寮の入り口で待ち合わせて、三年の寮の竜胆の部屋に向かった。
「ここが三年生の寮なんだ……」
「内装などは一年の寮と変わりませんけど」
なれた様子で歩いていくあやめの後ろを、六花は少しキョロキョロしながらついていく。
「ふたりとも来たな」
出迎えに来てくれたらしい竜胆に、あわてて六花は頭を下げる。
「すみません! 今日はお邪魔をします!」
「気にしなくていい。
私もあやめの友人とはゆっくりと話したいと思っていたからな」
「そうですね。
私のはじめての友達ですし」
にっこり、と威圧感たっぷりの笑顔をみせるあやめ。
竜胆は気づかないふりをして、二人を誘う。
六花はまったく気づいていないが。
「ふたりとも、こっちだ」
竜胆の部屋に入ると、すでに夕食の準備はできていた。
「ーーあやめちゃんの部屋にいったときも思ったんですけど、結構部屋が広くありませんか?」
おなじ個室でも、あやめや竜胆の部屋は六花の部屋の倍はあった。
「それは、私たちが六家の者だからですね。
同学年で六家のものがいた場合は、各家のもっとも魔力が大きいものが、大きめの部屋をもらえるんです。
もっとも、その代わりにお兄様なら生徒会長、私の場合は六花さんの補佐といった特殊な役割をこなさなければならないのですが」
「基本的には、生徒会の手伝いが多いな。
あとは、実技の時の先生の補佐とかだな。
生まれつき魔力を持つということは、訓練期間が他の生徒よりかなり長いのも事実。
だからこそ、責任もある立場でもあるが」
力を持つがゆえの責任。
三人で食事をして談笑しながらも、おもわず考えてしまう六花だった。
同時に番外編投稿してます。
よろしければ、見てみてください。




