病弱VS猫
「今日の授業はここまで。睡眠学習に集中してた月ノ井君と大道君は黒板消しとけよ。あとついでに猫たちにあげといて。じゃあお前ら気を付けて下校しろよ。」
そう言い残すと担任の高城先生は足早に教室を去っていった。
しまった寝てた・・・。教室はオレンジ色に染まっていて沈みかけの太陽が眩しい。
「授業も終わったし帰ろうぜ。それとも七限目の筋肉学受けてくかい?」
隣の席の高水に話しかけられる。
「筋肉学なんてあるの初めて知ったよ。そもそもこの学校七限目無いし普通科だから!あと顔に変な模様ついてるよ!?どんな格好して寝ればそんな芸術的な模様できるんだよ・・・。」
どこかの部族に居そうな紋様を付けた高水に言い返す。突っ込みが追い付かないよ・・・。
「お前知らねーの?この模様めっちゃトレンドだかんな。千葉とか埼玉とか行けばみんなこの模様つけてるから。」
何でそんな自信満々に嘘つけるの大道君。内容阿保の極みなのに一瞬信じかけた自分が恥ずかしい。
「せめて場所は東京にしろよ。何で都にしないで回りの県にしたこととか、高水は阿保とかは置いといて、寝てたのは俺たちが悪い。だからもちろん罪滅ぼしに黒板をお掃除するという命がけのお仕事を任されるのも納得できる。だけどさ・・・」
そうここまでならわかる。むしろ美人な高城先生にお願いされてるわけだからやる気も沸いてくる。
でもさ・・・でもさあ!!!
「ついでに猫に餌やるっておかしいだろ!ついでのレベル超えてるよ!!ついでっていうのはさぁ・・・あっそういえば金魚に三日間餌あげてないや☆ついでにあげといて☆くらいの事だろ!!!理不尽だ!!!!パワハラ反対!!!!!。」
「低血圧のお前がここまで血圧を上げるとは・・・。一年にあるかないかだぜこんな事。てか金魚に三日も餌あげないとかお前鬼すぎるだろ。ちゃんと餌やれよ。何で猫に餌やるくらいでビビってんだお前?」
やけに冷静な高水が問う。
「金魚の話は例え話な。俺は愛魚家だから1日三回ちゃんとやってる。あんまり餌あげすぎるのもよくないらしいけどな。」
金魚の雑学でお茶を濁す。これで俺が猫にビビっている話を受け流せたはずだ。勝ち誇ったように高水を真っすぐ見据える。
「で、何で猫にビビってんの?」
高水は机と椅子を巧みに使って腹筋を始めていた。
聞いてない・・・だと・・・。この学校の猫の話はあまりしたくははなかったが仕方がない。
「この学校の周辺に野良猫が多いのは知ってるだろ?昔からの伝統で野良猫のお世話は俺たちの学校、つまり海浜学園高等学校生徒会の仕事なわけだ。だから生徒会は海浜学園猫奉仕委員会とも呼ばれている。」
「なるほどな。だから姉貴いつもに制服に猫の毛付けて帰ってくるのか。謎が解けたぜ。」
そう高水の姉、大道桜は生徒会に所属しており現役の委員長でもある。
「俺は猫奉仕委員会の仕事を手伝ったことがあってな、その日は猫は20匹ほどいた。猫好きな俺にはたまらない仕事だった。気が付くと回りを猫に囲まれていた。みゃ~、にゃ~そしてたまに混じる不細工な鳴き声。みょ~。大好きだ。」
「今のところお前の幸せな話なんだが。」
うんっと咳払いをして話を続ける。
「まあ聞け。ついに餌やりの時間だ。俺は最高の気分だった。そっと猫缶を開ける。ゆっくりと丁寧に。そしてその瞬間は訪れた。カチッとなる猫缶の音。広がる魚の匂い。腹を空かした猫たちは耐えられなかったんだろう。猫缶を地面に置く前に猫たちは飛びかってきた。驚いて俺は倒れてしまった。仰向けの状態になりながらも猫缶は手放してていなかった。落としたら猫にあたってケガしちゃうかもだしね。猫たちが俺の体に餌がないか縦横無尽に探し回った。ここで異変に気が付いた。くしゃみが止まらなっかった。そうして俺は自分の体の弱さを改めて思い知った。」
「その弱さってなんなんだよ?」
「それは・・・」
「それは?」
「おれそういえば、猫アレルギーだったんだ。」




