8-4 救済
side-B
激しい爆発音が聞こえる。魔法の攻撃を受けていた建物の一部が衝撃に耐えきれずに炎上、そして崩壊したのだ。
俺は希とともに、魔装団の主力の研究所の一つに踏み込んでいた。
「これで組織の適応者は全員倒したんでしょうか?」
「おそらくな。あとは残った研究者たちを救出するだけだ」
魔装団に関係する施設は各地に点在している。都心に近いこの地域にもいくつかの魔装団関連の建物があるという。
次こそは目当ての建物であってほしい。目的は魔装団の団員の確保と強制的に働かされている研究者たちの救出。しかし俺には他にもう一つ目的があった。
こうして一斉に研究所を強襲することが出来たのは、以前に逮捕した幹部からようやく情報を聞き出せたからだ。時間は掛かったが、後はしらみつぶしに探していくだけだ。
「そういえば先輩、この情報を得るために随分とえげつない方法を使ったらしいですね?」
希が苦笑を浮かべる。
「さあ、何の事だ?」
多少荒っぽい方法を使ったのは認めるが、そうしなければ奴は口を割らなかっただろうから仕方ない。魔装団を潰すためにはこちらも手段を選んではいられない。
その情報を元に、神宮寺たちの協力もあって研究所の存在は次々と露わになった。そして俺たちがこうして潰しまわっているというわけだ。
だが、まだ俺の目的は達成されていない。分の悪い賭けかもしれないが可能性がないわけではない。ここでもなければ次の研究所へ向かうだけだ。
「急ぐぞ、希」
すでに良くない情報も耳に入ってきている。もしもの場合はこちらの作戦を中止して俺たちも向かわなければならない。
鳴り響く警報。廊下にシャッターが下りるが構わず破壊して先へと進む。すると目の前に黒いコートを着た男が二人いた。
「ちっ、まだ残っていたか」
ここの警備をしていた適応者たちだ。俺と希で一人ずつ倒してさらに奥へと進んでいく。途中の部屋を一つ一つ開けて中を調べる。
「魔装部隊だ。抵抗せずに手を上げろ」
そして一番奥の、大きな実験室のような部屋に入る。白い壁と天井。小さな機械の音。そして薬品の匂いがした。
残っていた研究者たちの視線が俺たちに集まる。数十人もの人間がそこにいた。彼らは最初こそ驚いていたが、すぐに所々から声が聞こえた。
「た、助けてください!」
「や、やった、助かった!」
殆どは歓喜の声だった。やはり組織に言われて無理やり研究をさせられていたのだろう。そもそも魔法の研究となると研究者の数が少ない。他の研究所で救出した者の中には、魔法の研究とは知らずに働いていた者もいたくらいだ。
だが、表向きには存在を知られていないのだからそれも仕方ないだろう。知っている者たちも、魔法という概念がきっと存在すると信じて独自に研究していた者たちばかりで、それまで存在をはっきり認知していたわけではないのだ。だから組織も各地から手当たり次第に研究者を連れ去るしか方法がなかったのだろう。研究資金を組織が援助してくれるので今の待遇を歓迎していた者もいるが、大抵の者は殆ど監禁状態の生活に不満を持っていた。
「皆さん、慌てずに外へ避難してください。そこで待っている我々の仲間が保護します」
希が研究者たちを外へ避難させていく。次々と研究者が外へ向かっていく途中、そこで俺は研究者の顔を一人一人、入念にチェックしていた。
そして、俺はついに見つけた。避難する人々の中からとある男女を呼び止めた。
「ちょっと待ってください」




