7-1 焦燥
side-C
私が見つけたそれは『あどらくん』のストラップだった。そしてこれと同じものを悠一君も持っている。予感が確信へと変わる。
「……なにか見つけたの?」
彩華ちゃんが後ろから私が手に持ったストラップを覗き込む。
「これ、悠一君が持っていた……」
「ああ、そういえば鞄に付けてたわね」
どうやら彩華ちゃんも知っていたらしい。そういえば私たちを尾行していたみたいだからこれを買った時も側にいたんだろうか。
「自然に取れたにしては不自然ね。鎖が綺麗に外れてる」
彩華ちゃんのいう通り、ストラップの鎖は綺麗に円の状態で両端が繋がったまま落ちていた。自然に落ちるとすれば鎖のどこかが切れるか先っぽが取れていないといけないはずだ。単に別の人が袋だけ開けて未使用のまま落としたとか捨てたという可能性もないことはないが、そんな偶然が起こる可能性は低いだろう。これは悠一君のストラップだ。そして、もし悠一君が鞄に付けていた物だとしたら、誰かが取り外したようにしか思えなかった。
「悠一君からのメッセージかも」
私はそう何となく言葉にしたが、次第にそれは私の中で確信に変わった。
そうだ、間違いない。きっと悠一君からの手掛かりだ。
「彩華ちゃん、これ、念視出来る?」
「ええ、任せて――解放」
彩華ちゃんも私の意図を察して魔力を外に解放する。
念視。このストラップからここで何が起きたのか読み取ることが出来れば、それ相応の対応が出来るはずだ。悠一君がどこに行ったのかも分かるかもしれない。
彩華ちゃんにストラップを手渡す。彩華ちゃんはそれを手のひらに乗せ、目を閉じるとそれを握りしめた。
それから僅か数十秒後、彩華ちゃんは言った。
「……見えたわ」
目を開けた彩華ちゃんは重苦しい表情をしていた。
「どうやら、悠一は誰かに連れ去られたようね」
「そんなっ!」
嫌な予感が的中してしまった。最悪だ。
私は携帯で玲ちゃんに慌てて連絡を入れる。
「玲ちゃん! 大変、今すぐに調べて!」
私は余程慌てていたみたいだ。電話に出た玲ちゃんから、「具体的な要件を告げてほしい」と冷静に諭されてしまった。確かにいきなり過ぎた。でも、今の私はそれほど冷静ではなかった。
お願い、なんとか間に合って。




