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終焉のアルス・ノトリア ~天使の守護者~  作者: 七坂綾人
第三章 一時の邂逅、すれ違う二人
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7-1 魔法

「まず、前提の知識として適応者について話しましょうか。お互いにどこまで知っているか確認の意味もありますから、すでに知っていてもご容赦ください」


 そして神宮寺は説明を始める。


「『適応者』とは特殊な力、魔法を使える人間の総称です。他に適応者のような魔法を使える者の総称として『魔装』という言葉もあります。私たち適応者はいつも魔法を使えるわけではなく、『解放』をした時にのみ力を使うことが出来ます。ちなみに解放に制約はありません。ただし、体内の魔力が切れてしまえば再び力は封印されてしまいます」


 それは俺も彩華から聞いている部分であった。力を解放した際は魔法が使えるようになる他に、服装が対魔法装甲に自動的に切り替わり、さらに身体能力も上昇する。

 そして魔力は体力と理屈は同じだ。使えば減るし、疲れる。減ったらしばらく休んで回復しなければ駄目だ。


「魔法を使えば様々なことが出来ます。攻撃や防御、回復、人払いの結界もそうですね。人によって得意、不得意もあります」


 そういえば以前に彩華から聞いた話では、魔法の威力や持続時間、魔力の回復速度には個人差があると言っていた。適応者の中でも才能の差というものがあるようだ。

 神宮寺は続ける。


「この適応者になるには『魔導書(グリモワール)』と呼ばれる道具が必要です。適応者候補が魔導書に自分の血を吸わせることで契約が成立、そして適応者となります。一人につき一冊としか契約は出来ません」


「えっと、確か誰でも契約出来るわけじゃないんだよな?」


「はい、適応者候補でない者、つまり素質のない者は血を吸わせても何も起きません。また、素質のない者が不用意に魔導書に触れると意識を失います。いえ、意識を失うだけならまだ良いですね。魔導書によっては思わぬ事故を引き起こすこともあります。ですから魔導書は危険な書物なのです。もっとも、その存在は貴重なのでそう簡単に誰でも触れられる代物ではないのですが……」


「ちなみに、適応者や適応者候補が魔導書に触れても何も起きないから安心してね。ただし、適応者候補でも自分のキャパシティを超えるほど強力な魔導書に触れると、非適応者と同じようになっちゃうから注意が必要だよ。もっとも、そんな強力な魔導書なんて滅多にないけど……」


 琴音が捕捉して言った。


「ああ、それと、適応者はすでに魔導書と契約した者の総称であり、まだ魔導書と契約していない場合は適応者候補、契約出来ない者が非適応者に分けられています」


 それは初耳の情報だった。


「彩華は知ってたか?」


「いえ、私もそこまでは知らなかったわ」


 彩華も興味深げに神宮寺たちの説明を聞いていた。


「俺が適応者候補か非適応者か分かるにはどうすれば良いんだ?」


「実際に魔導書の一つに触れるか、または多少手間は掛かりますが魔法を使う手もあります。また、大掛かりな魔法を使えば人混みの中から適応者候補を探し出すことも出来ますし、特定の人物がどれだけ素質があるか調べることも可能です。かなり面倒ですし魔力を大量に使うためなかなか出来ることではありませんが」


 神宮寺は僅かに顔をしかめて答えた。


「どれだけ素質があるか、ってのはどういう意味だ?」


「人によって契約出来る魔導書と出来ない魔導書があるんだよ。一口に魔導書って言っても色々あるからね」


 琴音が苦笑して言った。


「そして契約した魔導書ですが、これは契約が成立した瞬間、その適応者の体内に取り込まれてしまいます。そして死ぬまで取り出すことは出来ません。つまり一度契約してしまえば一生適応者であり続けるということです」


「死んだら魔導書はどうなるんだ?」


「その場合は体内から外へと出てしまいます。回収されなければそのまま遺体の側に放置されることになりますね。魔導書は人の力で簡単に破れたり劣化したりすることはないのですが、やはり非適応者が触れる恐れがあるのでなるべく回収するように我々も心がけています」


「その我々っていうのは……」


「その前に、次はあなたたち、特に黒崎さんについてお話を聞かせてください」

 神宮寺は俺の隣にいた彩華を見つめる。僅かに警戒しているような雰囲気が感じられた。


「そうね、だけど別にわざわざ話すようなことは何もないわよ。私も適応者というだけ。それを抜かせばただの善良な一般市民よ」


「煉条君もそのことは知っていたんですよね?」


「あ、ああ、そうだけど?」


 俺が頷くと、神宮寺は「ふむ」と顎に手を持っていく。


「では、あなたと黒崎さんはどうして一緒に行動しているのですか?」


 その問いに俺は口籠ってしまう。その質問に正確に答えることで、あの件についても流れで話す事になりかねない。それで新しい情報を得られれば良いが、逆にもし神宮寺たちが関係者なら不利になる可能性もある。とりあえずは様子見した方が良いだろう。


「理由なんているか? 同じクラスメイトなんだから一緒にいてもおかしくないだろ?」


「それにしてもあなた方二人は何かを隠しているように思えます。それに、煉条君はなぜここに来られたのですか? この周辺には人払いの結界が張られていました。適応者でないあなたが、そこまであそこに向かいたいと思う強い目的があるとすれば、それは一体何なのでしょうか?」


「そ、それは別に……」


「やはり何か私たちに隠していることがあるのでは?」


 そうだ、確かに俺はまだ秘密にしていることがある。


――俺は彩華に、ある暗示を解いてもらっていた。


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