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終焉のアルス・ノトリア ~天使の守護者~  作者: 七坂綾人
第三章 一時の邂逅、すれ違う二人
25/57

6-1 対面

side-A


 俺は人混みを掻き分けて前へとひたすら進む。たまに誰かにぶつかり、文句を言われるが、それでも構わずに走り続ける。

 そして俺はショッピングセンターの前まで辿り着いた。


 だが、そこでさらに奇妙な光景を目の当たりにする。


「こ、こいつらは一体……」


 建物の前に不気味な人形のような物体が並んでいた。彼らは俺に気付いたらしく一斉にこちらを向く。驚きのあまり、反射的に後ろに下がる。

 それはどう見ても人型のロボットだった。銀色の金属で出来た身体。大きさは平均的な成人男性と同じくらいだろうか。同じ姿をした人型のロボットが一斉にこちらを見るという状況はかなり不気味だった。


 その異様な光景を前に俺は思考を巡らせる。このままでは殺される。そんな確信があった。


「悠一!」


 その時、彩華がこちらに走ってやってきた。どうやら一人で俺を追いかけて来たらしい。彩華も目の前のロボットたちを見て、目を見開いて驚いていた。


「……これは一体どういう状況なの?」


「さあ? ただ、結構ヤバい状況なのは間違いないな」


 するとロボットの一体に動きがあった。まるで人間のような自然な動きで一歩前に出ると、俺たちに機械の右手を向ける。その手のひらに魔方陣が現れる。そしてそこから光る球が放たれる。攻撃されたのだ。


「っ!」


「悠一っ、私の後ろに下がりなさい!」


 そう言うと彩華は俺の前に立ちふさがる。


「――解放(リリース)!」


 そして、彩華の体が一瞬だけ輝きを放ち、彩華の服装が瞬く間に変化した。いわゆるゴスロリ風の、フリフリした黒いドレス。スカートは地面に付きそうなほど長い。頭にはヘッドドレスを付けている。


 その服装が何なのか俺は知っている。

 『対魔法装甲』。魔法による攻撃を受けた時のダメージの軽減してくれる特殊な鎧のようなものである、と以前に彩華が説明してくれた。あれを着ているのと着ていないのとでは魔法への耐性が全然違うらしい。


「さて、誰の物か知らないけど、壊しても怒らないでよ」


 適応者としての力を解放した彩華は、ロボットたちへと視線を向ける。

 すると一体のロボットが俺たちに向けて機械の右手を向けた。そこからサッカーボールほどの大きさの光の球が飛び出してきた。


「これは、魔法っ?」


 彩華は咄嗟に右手を出して防御結界を展開。障壁がロボットの攻撃を防ぐ。


「こいつら、本当に何なんだっ? 彩華、大丈夫か?」


「ええ、悠一こそ気を付けて」


 彩華が俺を庇うように前に出る。ロボットは三十体くらいいるだろう。これだけの数を相手に、彩華一人で戦うことが出来るのだろうか。しかも相手はロボットの癖に魔法を使う。


 だがそこで、俺の背後から飛んできた光弾が一体のロボットの頭に命中した。ロボットは爆発して大破する。俺は驚いて振り返った。


「悠一君!」


 それから琴音が俺たちのところへ慌ててやってくる。だが、それより俺はもう一人の意外な人物に驚きを隠せなかった。


 俺たちの前で立ち止まった神宮寺は淡々と言った。


「お二人とも、無事で何よりです」


 なぜ神宮寺がここにいるのだ。しかも今の攻撃はひょっとして神宮寺のものなのか。


「じ、神宮寺、お前、どうして?」


「話は後にしてください。それよりも今は彼ら、魔造機人を倒すことが先決です」


「ま、魔造機人?」


 神宮寺はあのロボットの正体を知っているということなのか。


「すぐに片付けますから煉条君は動かないでください」


 神宮寺は俺の方を見ずに、ロボットたちの動きに注意しつつ淡々と言った。


 やはり神宮寺は適応者なんだろう。神宮寺の今の服装は黒いドレス姿だった。あれが彼女の対魔法装甲なんだろう。彩華よりフリフリの少ない落ち着いた黒衣。二人の対魔法装甲を見る限り、女性は基本的に黒いドレスが基本なのかもしれない。


 俺が状況を把握しようと必死に頭を動かしている間に、神宮寺はすでに二体続けてロボットを魔法で破壊していた。


「くっ、次から次へと……」


 そして彩華も神宮寺と一緒に魔法を放ち、ロボットを破壊する。神宮寺よりはペースは遅いが確実にロボットに魔力の光弾を当てていた。二人でロボットを次々と破壊していく光景を俺は呆気に取られて見つめていた。


「悠一君、絶対に私から離れないで」


 琴音は俺の前に庇うように立っていた。この冷静さ、そして神宮寺と一緒に現れたということはそういうことなのだろう。


「琴音、お前らも適応者だったのか? どうして黙ってたんだ?」


「……悠一君も、彩華ちゃんが適応者だって知ってたんだね?」


「あ、ああ、まあな……」


 彩華が適応者だということは知っていた。そもそも適応者の知識は彩華から教えてもらったのだ。そして彩華がいたから今の俺は妹を探すことが出来るのである。

 

 相手の攻撃を神宮寺と彩華で防ぎつつ、着実にロボットを破壊していく。そしてついに全てのロボットを二人だけで倒してしまった。


 地面に転がる残骸を見つめながら彩華が言う。


「案外、あっさりと終わったわね」


「ええ、魔造機人はまだ研究段階で、適応者と対等に戦う域には達していませんから……しかし、どうして彼らはここにいるのでしょう」


 神宮寺はそこで腕を組むと、残骸を見ながら難しい顔をする。


「わざわざ……ということは増援……では他にも……」


 ぶつぶつと何か独り言を言っているようだが、よく聞こえない。それから神宮寺は黙ってしまったので、俺は琴音に尋ねる。


「なあ、もう大丈夫なのか?」


「うん、全部倒したからもう襲ってこないと思う」


「そうか、それじゃあ教えてくれないか? あのロボットのこと、それにお前らのことも」


 俺の知らないことを琴音たちは知っている。手掛かりがそこにある。


 琴音がちらりと神宮寺を見る。神宮寺はその視線に頷いた。


「……そうですね、ここまで知られれば仕方ないでしょう。それでは情報の共有といきましょうか」


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